家族
相続、終活、家族と話しておきたいこと。
家族のお金と手続きは、「元気なうちに決めておく」ことで、あとの負担が大きく変わります。ここでは、親が認知症になったときの口座の扱い、遺言書の書き方と預け先、家族が亡くなったあとの手続きの期限を、順番にまとめています。
読む順番に並べたまとめ:老後資金のまとめ
このテーマで最初に読む記事
- 親が認知症になったら、口座はどうなるか——「凍結」の正体、元気なうちにできる代理人の届出と任意後見、そして成年後見制度は2026年の改正でどう変わるか 親が認知症と分かったとき、子がまず困るのが「親のお金が動かせない」ことです。銀行は本人の判断能力の低下を知ると、本人を守るために取引を制限します。これが俗にいう口座の凍結で、解く正攻法は成年後見制度です。ただし全国銀行協会の考え方では、医療費や介護費など本人のためであることが確かめられる支払いには、手続きの間も対応する余地があります。元気なうちなら、銀行への代理人の届出と任意後見契約で備えられます。判断能力が落ちてからの法定後見(申立て・期間・後見人は親族とは限らない・報酬)、2026年6月に成立した改正法(後見・保佐を廃止して補助に一元化、必要な範囲と期間での利用)、亡くなったあとの払戻し制度まで、法務省・裁判所・全国銀行協会の資料で整理しました。
- 遺言書は、書いて終わりではありません——自筆で書く4つの決まり、法務局に3,900円で預ける制度、公正証書という選択肢 自筆の遺言書は、全文・日付・氏名を自分で書いて押印すれば有効です。ただし自宅に置いたままだと、見つからない・家庭裁判所の検認が要る・改ざんを疑われる、という問題が残ります。2020年から法務局が1件3,900円で預かる制度が始まり、検認も不要になりました。自筆証書遺言の決まり、法務局の保管制度の使い方(様式・予約・本人出頭)、公正証書遺言との違いと費用、遺留分の注意点を、民法の条文と法務省・公証人連合会の案内に沿って整理しました。
- 家族が亡くなったあとの手続き——期限の順に並べると、迷わない(7日・14日・3か月・4か月・10か月・3年・5年) 悲しみの中でも、手続きの期限は待ってくれません。死亡届の7日、役所関係の14日、相続放棄の3か月、準確定申告の4か月、相続税の10か月、相続登記と生命保険の3年、遺族年金の5年。公的な資料で確かめた期限を短い順に1枚の表にして、「どの順番で動けばいいか」と「元気なうちに用意しておくと楽になるもの」をまとめました。
計算ツール
- 相続税の基礎控除 計算相続税がかかるかどうかの最初の目安。法定相続人の数から、基礎控除額(3,000万円+600万円×人数)と生命保険の非課税枠が分かります。
かんたん診断
- 実家じまい・生前整理 準備度チェック(9つの質問)名義・書類・遺言・査定・業者・クーリングオフ・相続放棄・空き家・出口。実家の片づけや生前整理に着手する前に確かめたい点をチェックします。
ほかの記事(新しい順)
- 相続放棄の手続き——借金が多いときは、相続を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ。費用は収入印紙800円と郵便切手。財産に手をつけると放棄できなくなることも。次の順位の親族にも知らせる 亡くなった人に借金が多いときは、相続放棄で財産も借金も受け継がないことができます。自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所に申述し、費用は1人につき収入印紙800円と郵便切手。3か月で調べきれないときは、期間を延ばす申立てもできます。相続財産を処分すると、相続を承認したとみなされて放棄できなくなることがあります。子が全員放棄すると、父母などの直系尊属、次にきょうだいが相続人になります。相続放棄の申述は2025年に約32万件。限定承認との違いもまとめました(裁判所・民法・国税庁)。
- 葬儀のお金と、あとから受け取れるお金——国保・後期高齢者医療の「葬祭費」(5万〜7万円の例)、会社の健康保険の「埋葬料」(5万円)。申請は2年以内。葬儀費用は相続税の計算で差し引ける 亡くなった人が入っていた健康保険から、葬儀のあとにお金を受け取れます。国民健康保険や後期高齢者医療なら「葬祭費」で、金額は自治体などが決めます(東京23区の国保は7万円、横浜市・大阪市は5万円など)。会社の健康保険なら「埋葬料」5万円。どちらも申請しないと受け取れず、2年で時効です。葬儀費用は、相続税の計算で遺産から差し引けます(香典返し・墓石・法事の費用は不可)。葬儀の料金トラブルの相談は2025年度に917件。見積書の明細を確かめる、複数で打ち合わせる、といった国民生活センターの助言もまとめました。
- デジタル遺品——スマホが開かない、ネット銀行が分からない、サブスクの請求が止まらない。家族の探し方と、元気なうちにできる5つの備え 亡くなった家族のスマホのパスワードが分からないと、ロックの解除はとても難しく、Appleも端末を消去しない限り解除は手伝えないとしています。サブスクは解約しない限り請求が続き、事業者は契約者が亡くなったことを知る手段がありません。家族ができるのは、明細から契約先を探すこと、マイナンバーを使った「相続時預貯金口座照会」(1件5,060円・死後10年まで)や、ほふりの開示請求(相続人は1件7,700円)で口座を探すこと。元気なうちには「スマホのスペアキー」、契約の一覧、Apple・Googleの指名の機能が使えます(国民生活センター・預金保険機構・デジタル庁ほか)。
- 墓じまい(改葬)の手続き——遺骨を移すには、いまお墓がある市区町村の「改葬許可」が要る。書類と申請の単位は市区町村で違う。改葬は令和6年度に全国で17万6千件 墓じまいで遺骨を別のお墓や納骨堂に移すことを、法律では「改葬」といい、いま遺骨がある市区町村の許可が必要です。主な書類は、改葬許可申請書・いまの墓地の管理者による埋蔵の証明・移す先の受入証明(墓地の使用者以外が申請するなら承諾書も)。遺骨1体ごとに申請書を出す市区町村もあれば、内訳書でまとめる市区町村もあり、書類と申請の単位は市区町村で違います。手数料は無料の市もあれば1通300円の市もあります。散骨や自宅での保管は改葬にあたらないと案内する市もあります。改葬は令和6年度に全国で17万6,140件と、平成30年度の約1.5倍。寺院墓地では「離檀料」をめぐる相談も寄せられています。
- 売れない実家の出口——仲介・空き家バンク・訳あり物件の買取・国庫帰属・寄附を比べる。800万円以下の空き家は仲介手数料の特例あり、買取業者への売却はクーリング・オフできない 買い手がつかない、共有者が多い、建て直しができない——「売れない実家」の出口を並べました。まずは不動産会社の仲介。800万円以下の宅地・建物は、2024年7月から仲介手数料を依頼者の一方から税込33万円まで受け取れる特例があり、安い空き家も扱ってもらいやすくなりました(事前の説明と合意が必要)。地方の家は空き家バンク(全国版には1,151自治体が参加、744自治体が掲載中)。権利関係が複雑な家は訳あり物件の買取業者という出口もありますが、価格は相場より低くなりやすく、自宅を不動産業者に売った場合はクーリング・オフできません。更地で境界がはっきりした土地なら相続土地国庫帰属制度。自治体への寄附は、活用や売却の見込みなど自治体の受入条件しだいです。共有の不動産は、2023年4月の民法改正で、必要な調査をしても氏名や所在が分からない共有者の持分を、裁判所の手続きで取得・譲渡できるようになりました。
- 相続した土地を国に引き取ってもらう——相続土地国庫帰属制度。手数料は1筆14,000円、負担金は原則20万円。建物がある土地は申請できず、審査は標準8か月。申請5,997件のうち国のものになったのは3,119件 相続土地国庫帰属制度は、相続や遺贈で取得した土地を、審査を経て国に引き取ってもらう制度です(2023年4月27日開始)。数十年前に相続した土地や、相続登記をしていない土地でも申請できます。費用は審査手数料が土地1筆あたり14,000円(却下・不承認・取下げでも戻らない)と、承認後の負担金(原則20万円。市街地の宅地や一部の田畑・森林は面積に応じて計算)。建物がある土地、担保が付いた土地、境界が明らかでない土地、通路として使われている土地などは申請できず、崖や地上の工作物・樹木、地下の埋設物がある土地は審査で不承認になることがあります。申請先は土地のある都道府県の法務局の本局で、事前相談は予約制。標準処理期間は8か月です。2026年8月31日現在、申請5,997件のうち帰属3,119件、却下85件、不承認100件、取下げ1,139件。取下げのうち586件は、自治体や隣の土地の所有者が引き受けるなど、有効活用の見込みが生じたためでした。
- 亡くなった親の確定申告(準確定申告)——相続を知った翌日から4か月以内。年金だけの親なら要らないことが多いが、医療費が多かった年は申告すると戻ることも。住民税・未支給年金の税金まで 年の途中で亡くなった人の所得税は、相続人が1月1日から亡くなった日までの分を計算して申告します(準確定申告)。期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内。相続人が2人以上なら連署で1通、または他の相続人の氏名を付記して別々に提出できます。医療費控除や社会保険料控除の対象は、亡くなった日までに本人が支払った分だけ。亡くなった後に家族が払った入院費は、生計を一にしていた家族の医療費控除に入れられる場合があります。年金だけで暮らしていた親は申告が要らないことも多い一方、源泉徴収された所得税が戻ることもあります。戻った税金は相続財産、納めた税金は相続税の計算で差し引ける債務です。住民税は1月1日に住んでいた人にかかるので、亡くなった年の1月1日に生きていれば、その年度の分がかかり相続人が引き継ぎます(たとえば2026年2月に亡くなれば2026年度分はかかり、2027年度分からかかりません)。未支給年金は、受け取った家族の一時所得になります。
- 親の介護をした人は、相続で報われるのか——相続人なら「寄与分」、嫁や娘婿なら「特別寄与料」。ただし特別寄与料は、相続と相続人を知ってから6か月・相続開始から1年を過ぎると家庭裁判所に申し立てられません 介護を担った人が相続で多くもらえるとは限りません。相続人が介護した場合は「寄与分」(民法904条の2)で、法定相続分に上乗せを主張できますが、認められるのは「特別の寄与」——通常の扶養や親族の助け合いを超え、財産の維持や増加に結びついた場合です。相続人ではない子の配偶者(嫁・娘婿)などは2019年にできた「特別寄与料」(民法1050条)で相続人に金銭を請求できますが、期限が厳しく、相続の開始と相続人を知った時から6か月、相続開始から1年を過ぎると家庭裁判所に申し立てできません。特別寄与料は遺贈で取得したものとみなされ、相続税がかかる場合はその税額に2割加算。額が確定して新たに申告が必要になったときは、確定を知った日の翌日から10か月以内に申告します。家庭裁判所の調停は収入印紙1,200円から。そして最も確実なのは、元気なうちの遺言です。2025年の調査では、主な介護者全体のうち同居する「子の配偶者」は4.2%でした。
- 事実婚と相続——パートナーに相続権はありません。遺言で残せますが、相続税は2割加算・配偶者の税額軽減なし・生命保険の非課税枠なし。家に住み続ける権利、口座、お墓まで、「届出なし」で何が変わるかと、元気なうちにできる5つの備え 年金では「配偶者」として扱われる事実婚のパートナーも、相続では他人です。民法890条の「配偶者」は届出婚だけなので、遺言がなければ財産は相続人(子・親・きょうだい)へ行き、パートナーの取り分はゼロ。遺言で遺贈すれば残せますが、子や親には遺留分があり、受け取った財産の相続税は2割加算、配偶者の税額軽減(1億6千万円)も、小規模宅地の特例も、生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人)も使えません。相続人が誰もいない場合だけ「特別縁故者」として家庭裁判所に分与を求める道があります。住まいは、持ち家なら配偶者居住権が使えない一方、借家なら借地借家法36条で同居者が賃借権を引き継げます。遺言(公正証書または法務局保管)、生命保険の受取人指定、死後事務委任、任意後見、名義の整理——元気なうちにしかできない5つの備えを、根拠つきで整理しました。
- 実家が空き家になったら——放っておくと固定資産税の軽減が外れ、相続登記は3年以内(怠ると10万円以下の過料)。売るなら相続から3年を経過する年の年末までに3,000万円控除、手放せない土地は国に引き取ってもらう制度も。期限の順に整理しました 全国の空き家は900万戸(2023年・空き家率13.8%)、うち賃貸・売却用でも別荘でもない「その他の空き家」が386万戸。実家が空き家になったときに動く期限を順に並べました。①相続登記は2024年4月から義務で、相続を知って3年以内(それ以前の相続も2027年3月31日まで)、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料。遺産分割が終わらないなら「相続人申告登記」で義務は果たせます。②2023年12月からは、管理が悪い「管理不全空家」も勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例(200㎡以下は6分の1)が外れます。③被相続人が一人で住んでいた1981年5月以前の家を、相続の開始から3年を経過する日の属する年の年末までに売れば譲渡所得から最大3,000万円控除(2027年12月31日まで・相続人3人以上は2,000万円)。④売れない土地は、建物を壊し、審査手数料1万4千円と負担金(原則20万円)で国に引き取ってもらう相続土地国庫帰属制度。空き家バンク・解体補助・訳あり物件の買取まで。