誠一の老後メモ

知らないと損をすることを、ひとつずつ。

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相続した土地を国に引き取ってもらう——相続土地国庫帰属制度。手数料は1筆14,000円、負担金は原則20万円。建物がある土地は申請できず、審査は標準8か月。申請5,997件のうち国のものになったのは3,119件

親から相続した田舎の土地。住む予定はない、売ろうにも買い手がつかない、それでも固定資産税と草刈りは毎年やってくる——そんな土地を、審査を経て国に引き取ってもらう制度があります。2023年(令和5年)4月27日に始まった相続土地国庫帰属制度です。

ただし、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではなく、費用もかかります。この記事は、使える土地・使えない土地、費用、手続きの流れ、そして実際にどれくらい国のものになっているかのまとめです。実家が空き家になったときの全体像は実家が空き家になったらに書きました。

申請できる人——相続で取得した人。昔の相続でも、登記がまだでも

  • 相続、または相続人に対する遺贈で土地を取得した人が申請できます。売買で買った土地や、法人の土地は基本的に対象外です
  • 制度が始まる前の相続でも対象です。法務省は「数十年前に相続した土地」も対象になると案内しています
  • 相続登記をしていなくても申請できます(ただし相続登記そのものは2024年4月から義務です。相続登記は3年以内)
  • 共有の土地は、共有者の全員が一緒に申請すれば使えます。売買で持分を得た共有者がいても、相続で持分を得た共有者と一緒なら申請できます

引き取ってもらえない土地——申請できない土地と、審査で通らない土地

法律は、2段階で線を引いています。

段階当てはまる土地
そもそも申請できない(却下)①建物がある土地 ②抵当権などの担保や、人に貸す権利が付いている土地 ③通路・墓地・境内地・水道用地・ため池など、他人が使う予定のある土地 ④土壌汚染のある土地 ⑤境界が明らかでない土地、所有権について争いがある土地
審査で承認されない(不承認)①崖(勾配30度以上かつ高さ5メートル以上)があり、管理に過分な費用・労力がかかる土地 ②管理や処分の邪魔になる工作物・車両・樹木などが地上にある土地 ③取り除かないと管理できないものが地下に埋まっている土地 ④隣の土地の所有者などと裁判をしないと管理できない土地 ⑤その他、管理に過分な費用・労力がかかる土地

建物は、原則として申請前に取り壊す

まず確認したいのが①です。法務省のQ&Aは、建物がある場合は全て却下になるかという問いに「そのとおりです」、建物は取り壊してから申請しなければならないかという問いに「原則はそのとおりです」と答えています(申請後すぐに取り壊す予定がある場合は、本局に問い合わせるよう案内しています)。登記されていない建物でも、実際に建っていれば申請できません。一方、物置小屋のようなものは建物に当たらない場合もあるので、迷ったら事前相談で確かめてください。

「実家ごと国に」はできず、更地にしてからが前提です。ただし、建物を壊しても、境界や樹木などほかの要件で承認されないことがあります。解体を決める前に、ほかの要件も含めて法務局の事前相談で確かめてください。解体費は自己負担で、市区町村によっては老朽化した空き家の除却に補助があります(実家が空き家になったら)。解体業者の探し方には、自治体の案内や知人の紹介のほか、全国対応の解体工事の紹介サービス(解体工事110番)(PR)のような窓口もあります。どこで探しても、見積もりは複数社から書面で取り、補助を使うなら着工前に申請する順番を守ってください。

費用——手数料1筆14,000円と、負担金は原則20万円

費用額払うとき
審査手数料土地1筆あたり14,000円(収入印紙)申請のとき。取下げ・却下・不承認でも戻りません
負担金原則20万円(国が管理する10年分の標準的な費用をもとに算定)承認されたあと。通知が届いた日の翌日から30日以内に納める

負担金が面積で変わる土地もあります。法務省の資料の例では次のとおりです。

  • 宅地——原則は面積にかかわらず20万円。ただし市街化区域などの一部の市街地の宅地は面積に応じて計算(例:100㎡で約55万円、200㎡で約80万円)
  • 田・畑——原則20万円。一部の市街地や農用地区域などの田畑は面積に応じて計算(例:500㎡で約72万円)
  • 森林——面積に応じて計算(例:1,500㎡で約27万円、3,000㎡で約30万円)
  • その他(雑種地・原野など)——20万円

隣り合う同じ種類の土地が2筆以上あるときは、1つの土地として負担金を計算するよう申し出ることができます。負担金を期限までに納めないと承認は効力を失い、国のものになるのは負担金を納めた時点です。

手続きの流れ——相談から帰属まで

  1. 事前相談——土地のある都道府県の法務局・地方法務局の本局で。予約制で、対面・電話・ウェブがあり、1人1日1回30分。遠方なら近くの本局でも相談できます
  2. 申請——申請先も本局の不動産登記部門です(支局・出張所では受け付けません)。窓口に持っていくか、郵送します
  3. 審査——書類の審査と、法務局による現地の調査。標準処理期間は8か月で、事案によってはそれを超えます
  4. 承認・負担金の納付——承認の通知と負担金の通知が届いたら、30日以内に納めます
  5. 国庫に帰属——納付した時点で国のものになります

申請書類の作成を仕事として代行できるのは、弁護士・司法書士・行政書士に限られます。ただし申請そのものは、本人か法定代理人(成年後見人など)が行います。境界がはっきりしないときは、土地家屋調査士も相談先として案内されています。

実際にどれくらい国のものになっているか

法務省の統計(2026年8月31日現在)です。

区分件数主な中身
申請5,997件田・畑 2,335/宅地 2,091/山林 902/その他 669
帰属(国のものになった)3,119件宅地 1,164/農用地 989/森林 203/その他 763
却下85件添付書類の不提出 37、境界が明らかでない 23、通路として使われている 22、申請の権限がない人の申請 10、建物 4 など
不承認100件地上の工作物・車両・樹木など 46、国による追加の整備が必要な森林 37、災害の危険 11、崖 7 など
取下げ1,139件有効活用の見込みが生じた 586、却下・不承認と分かった 405、その他 148

(数字は速報値です。却下・不承認は、1件に複数の理由が付くことがあります。申請件数には審査中のものも含まれるので、帰属件数÷申請件数は承認率ではありません)

目を引くのは取下げの半分ほどが「有効活用の見込みが生じた」ことです。法務省は例として、自治体や国の機関による活用が決まった、隣の土地の所有者から引き受けの申し出があった、農業委員会の調整で農地として使われる見込みになったことを挙げています。申請したあと、本人が同意すれば、法務局が自治体などに寄附を受けられるかを確認する仕組みもあります(相談の段階ではしてもらえません)。国に引き取ってもらう手続きが、別の引き受け手が見つかるきっかけになることもある、ということです。

相続放棄との違い

「いらない土地があるなら、相続放棄すればいいのでは」と考える方もいます。ただ、相続放棄はその土地だけでなく、預貯金なども含めた相続全体を手放す手続きで、原則として亡くなったことと、自分が相続人になったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所へ申し立てます(家族が亡くなった後の手続き一覧)。国庫帰属制度は、相続したあとで、特定の土地だけを手放すための制度です。どちらが合うかは財産全体で変わるので、迷ったら弁護士や司法書士に相談してください。

今日できること

  1. 手放したい土地の登記事項証明書と固定資産税の納税通知書で、地目・面積・筆数を確かめる
  2. 建物が残っていないか、境界の目印(境界標)があるか、隣の人と揉めていないかを確かめる
  3. まず隣の土地の所有者や市区町村に、引き受けや空き家・空き地バンクの可能性を聞いてみる
  4. 土地のある都道府県の法務局の本局に、事前相談を予約する

実家と土地の出口を、順番に

空き家の固定資産税・相続登記・売却の特例は実家が空き家になったら、中の片づけは実家じまいの順番、庭木や草の手入れは庭と雑草の手入れへ。相続税がかかるかは相続税の基礎控除 計算で確かめられます。

「うちの土地はこうだった」という話は、質問・リクエスト箱から教えてください。

このテーマをまとめて読む:老後資金のまとめ

出典

この記事は、法務省の公表資料と法律の条文にもとづく一般的な情報です。申請できるか、承認されるか、負担金がいくらになるかは、土地ごとの状況と法務局の審査によって決まります。申請の前に、土地のある都道府県の法務局(本局)の事前相談で確認してください。相続放棄など相続全体の判断は、弁護士・司法書士にご相談ください。