実家が空き家になったら——放っておくと固定資産税の軽減が外れ、相続登記は3年以内(怠ると10万円以下の過料)。売るなら3年目の年末までに3,000万円控除、手放せない土地は国に引き取ってもらう制度も。期限の順に整理しました
親が施設に入った、亡くなった——そのあと残るのが実家です。誰も住まない家は、放っておくと傷むだけでなく、税金が上がり、登記の義務に引っかかり、売れる期限を過ぎるという3つの形で、じわじわ負担になります。
この記事は、実家が空き家になったときに動く「期限」を順に並べたものです。何を捨てるか・片づけの順番は実家じまい・生前整理に書いたので、ここは制度とお金の話に絞ります。
数字で見る——空き家900万戸、うち「行き先のない」空き家が386万戸
総務省の住宅・土地統計調査(2023年)では、全国の空き家は900万2千戸で過去最多、空き家率は13.8%です。このうち、賃貸や売却のために空けているのでも、別荘でもない「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」——いわゆるその他の空き家が385万6千戸。国土交通省の資料では、空き家の発生は相続を機にするものが過半で、この「その他の空き家」は2030年には約470万戸まで増える見込みとされています。
つまり、実家の空き家は珍しい話ではなく、国は「早く動いた人が損をしない」ように制度を組み替えてきました。以下がその制度です。
期限①:相続登記は3年以内——2024年4月から義務、怠ると10万円以下の過料
不動産を相続したら、相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記(名義変更)をすることが、2024年(令和6年)4月1日から義務になりました。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。それ以前の相続も対象で、2024年4月1日より前に相続した不動産は2027年(令和9年)3月31日までに登記が必要です。「親の名義のまま何十年」という実家は、まさにこれに当たります。
遺産分割の話し合いが3年で終わらないときのために、相続人申告登記という簡単な手続きが作られました。「自分は登記名義人の相続人です」と法務局に申し出るだけで、義務は果たしたことになります。相続人の一人が自分の分を単独で申し出られ、他の相続人の分も、委任を受けた代理申出や連名でまとめて手続きできます(義務を果たしたことになるのは、申出書に記載された相続人〈代理申出の委任者を含む〉だけです)。ただしこれは仮の届出で、家を売るときには正式な相続登記が別に必要です。
期限②:管理を怠ると固定資産税の軽減が外れる——2023年12月から「管理不全空家」も対象
住宅が建っている土地は、固定資産税の課税標準が200㎡以下の部分で6分の1、それを超える部分で3分の1に軽減されています(住宅用地特例)。家を壊すとこの軽減が消えて土地の税金が上がる——これが「空き家を壊すと税金が6倍」と言われる理由です。
ところが2023年(令和5年)12月13日施行の空家法改正で、壊さなくても軽減が外れる道ができました。倒壊のおそれがある「特定空家」だけでなく、その手前の「管理不全空家」(放置すれば特定空家になるおそれのある状態)も、市区町村から指導を受けて改善せず勧告を受けると、住宅用地特例の対象から外されます。屋根や外壁の破損、雑草・樹木の放置、窓ガラスの割れ——国のガイドラインはそうした状態を例に挙げています。
裏を返せば、年に数回の換気・草刈り・修繕は、管理不全空家に当たるリスクを下げる助けになります。該当するかどうかは状態を見た自治体の判断なので、心配なら市区町村の空き家担当に確認してください。遠方なら、自治体のシルバー人材センターや管理代行サービスに月数千円で見回りを頼む方法もあります(庭の雑草と木の手入れ)。
期限③:売るなら「相続から3年目の年末」までに——譲渡所得から最大3,000万円控除
親が一人で住んでいた家を相続して売る場合、条件を満たすと売却益から最大3,000万円を差し引ける特例があります(被相続人の居住用財産の特例)。主な条件は次のとおりです。
- 家が1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられたもので、マンションなどの区分所有建物でないこと
- 相続の直前に親(被相続人)が一人で住んでいたこと。老人ホームなどに入所していた場合も、要介護認定など一定の事情があれば対象になります
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 売却代金が1億円以下であること
- 家を耐震改修して売るか、取り壊して土地だけ売ること。2024年1月以後の売却からは、買主が翌年2月15日までに耐震改修か取壊しをする形でも対象になりました(売主が先に壊さなくてよくなった)
- 特例が使えるのは2027年(令和9年)12月31日までの売却
相続人が3人以上いる場合は、2024年1月以後の売却から控除額が2,000万円になります。譲渡所得(売却代金から取得費と譲渡費用を引いた額)が控除額以下なら課税される所得はゼロになりますが、取得費が分からない場合の扱いや譲渡費用、相続人の人数で結果が変わるので、税額は個別に確かめてください。逆に、3年目の年末を過ぎると、同じ家を売っても控除はありません。
期限のない選択肢:売れない土地は「国に引き取ってもらう」
買い手がつかない田舎の土地を、審査を経て国に引き渡す相続土地国庫帰属制度が2023年(令和5年)4月27日に始まりました。相続または遺贈で土地を取得した人が申請でき、費用は審査手数料が土地1筆あたり14,000円と、承認後の負担金(国が10年分の管理費用として算定する額で、多くの土地は20万円。市街化区域内の宅地・農用地区域内の田畑・森林は面積に応じて増えます)です。
ただし、引き取ってもらえない土地があります。建物が建っている土地(先に壊す必要がある)、担保が付いている土地、境界がはっきりしない土地、崖のある土地、土壌汚染のある土地などです。「実家ごと」は無理で、「更地にして、境界を確かめてから」が前提です。
ほかの出口——空き家バンク、解体補助、訳あり物件の買取
- 空き家バンク——市区町村が運営する、空き家を買いたい・借りたい人とのマッチング。国土交通省の「全国版空き家・空き地バンク」で横断検索できます。地方の家は、売値より「もらってくれる人がいるか」の問題であることが多く、ここが出口になります
- 解体の補助——老朽化した空き家の除却に補助を出す市区町村が多く、国も「空き家の除却」に対して市区町村向けの支援制度を持っています。額と条件は自治体ごとなので、壊す前に必ず窓口へ
- 訳あり物件の買取業者——再建築できない、共有者が多い、境界が不明、といった「普通の不動産屋が扱わない」家を専門に買う業者があります。価格は市場より低くなるのがふつうですが、「手放せないまま固定資産税と管理費を払い続ける」より合う場合があります。複数に見積もりを頼み、契約書の内容を確かめてから
- 売らずに貸す——リフォーム費用と家賃の釣り合いを見て。空き家バンクに「賃貸」で登録する方法もあります
順番に並べると
| いつまでに | やること | やらないと |
|---|---|---|
| すぐ | 登記簿で名義を確かめる。火災保険を空き家向けに切り替える。水道・ガス・電気の扱いを決める | 名義が祖父母のままだと、相続人が増えて手続きが難しくなる |
| 相続を知って3年以内(過去の相続は2027年3月31日まで) | 相続登記、または相続人申告登記 | 10万円以下の過料の対象 |
| 相続から3年目の12月31日まで(2027年12月31日まで) | 売るなら、3,000万円控除の条件を確かめて売却 | 控除なし。売却益に所得税・住民税 |
| 年に数回 | 風通し・草刈り・破損の修繕。遠方なら管理を頼む | 管理不全空家の勧告で固定資産税の軽減が外れる |
| 売れないと分かったら | 空き家バンク・解体補助・国庫帰属・買取を比べる | 固定資産税と管理費が毎年出ていく |
今日できること
- 法務局で実家の登記事項証明書を取り、名義が誰か・いつの相続かを確かめる(オンライン請求もできます)
- 実家のある市区町村のサイトで「空き家 補助」「空き家バンク」を検索し、解体補助と相談窓口を控える
- 売る可能性があるなら、親が住んでいた最後の日と建築年を書き出し、3,000万円控除の期限(相続から3年目の年末)をカレンダーに入れる
空き家の制度は「放置した人に厳しく、動いた人に優しく」できています。期限を知って、最初の1つ(登記の確認)を今週中に。それだけで、あとの選択肢が全部つながります。
実家のことを、順番に
片づけと査定の順番は実家じまい・生前整理、準備の度合いは実家じまい準備度チェックで。相続の手続き全体は家族が亡くなったあとの手続き、相続税がかかるかどうかは相続税の基礎控除 計算をどうぞ。家がまだ旧耐震で住み続けるなら耐震診断と改修の補助へ。
「うちの実家はこうだった」という話は、質問・リクエスト箱から教えてください。
このテーマをまとめて読む:老人ホームのまとめ
出典
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要」(空き家900万2千戸・空き家率13.8%、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家385万6千戸) (2026年9月20日確認)
- 法務省「相続登記の申請義務化について」(令和6年4月1日施行、取得を知った日から3年以内、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料、施行前の相続は令和9年3月31日まで、相続人申告登記) (2026年9月20日確認)
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)概要」(令和5年6月14日公布・12月13日施行。管理不全空家等の新設、勧告を受けた管理不全空家の敷地は住宅用地特例〈200㎡以下1/6・超える部分1/3〉の対象外、空き家の譲渡所得3,000万円特別控除の延長と買主側の耐震改修・除却への拡充、その他空き家は令和12年に約470万戸の見込み・相続を機に発生するものが過半) (2026年9月20日確認)
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法」(令和5年改正の概要、管理不全空家等・特定空家等のガイドライン、空家等活用促進区域、支援法人) (2026年9月20日確認)
- 国税庁 タックスアンサー「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(平成28年4月1日〜令和9年12月31日の売却、昭和56年5月31日以前建築・区分所有でない、相続開始直前に被相続人が一人で居住、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、売却代金1億円以下、令和6年1月1日以後は買主が翌年2月15日までに耐震改修・取壊しでも可、相続人3人以上は2,000万円) (2026年9月20日確認)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」(令和5年4月27日開始、相続・遺贈で取得した人が申請、建物のある土地・担保権付き・境界不明・崖・土壌汚染などは対象外、審査手数料1筆14,000円) (2026年9月20日確認)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」(10年分の標準的な管理費用を考慮した負担金。市街化区域・用途地域内の宅地、農用地区域内の田畑、森林は面積に応じて算定) (2026年9月20日確認)
- 国土交通省「空き家・空き地バンク総合情報ページ」(全国版空き家・空き地バンク) (2026年9月20日確認)