誠一の老後メモ

知らないと損をすることを、ひとつずつ。

1981年5月以前の家は「旧耐震」——能登半島地震では旧耐震の木造の19.4%が倒壊、2000年以降は0.7%。耐震診断は国と自治体で費用の3分の2、改修は定額115万円の補助と所得税・固定資産税の軽減。まず「建てた年」を確かめてください

「うちは古いけど、まあ大丈夫だろう」。地震の備えでいちばん多い先送りが、家そのものの耐震です。家具を固定しても、家が倒れれば意味がありません。この記事は、自分の家が「旧耐震」かどうかを確かめ、無料や補助のある耐震診断を受け、改修の補助を使うまでの順番をまとめたものです。

先に結論を3つ。①分かれ目は1981年5月31日。②能登半島地震で、旧耐震の木造は約5棟に1棟が倒壊・崩壊したのに対し、補助を受けて耐震改修した旧耐震の木造に倒壊はなかった。③診断は費用の3分の2、改修は定額115万円が国と自治体の支援の基本線で、そのうえに税の軽減があります。

「旧耐震」とは——1981年5月31日以前に建築確認を受けた建物

建物の耐震基準は1981年(昭和56年)6月1日に大きく変わりました。それ以前の基準で建てられたものを旧耐震基準、以後を新耐震基準と呼びます。国土交通省は「昭和56年5月31日以前に建築された建物は旧耐震基準で建てられており、耐震性が不十分なものが多く存在する」として、まず耐震診断を、不十分なら改修や建替えを、と案内しています。

木造住宅はもう一段あります。2000年(平成12年)6月に、柱と土台をつなぐ金物や壁の配置の基準が明確になりました。1981年6月から2000年5月までに建った木造は「新耐震だが2000年基準の前」で、次に見る能登の数字では、この年代も倒壊が出ています。

建てた年の確かめ方

  • 建築確認済証・検査済証——家を建てたときの書類。「確認済証の交付日」が基準です(完成日や登記の日ではありません)
  • 登記事項証明書(登記簿)——「新築年月日」が載っています。確認日より後なので、1981年6〜12月の新築は旧耐震の可能性があります
  • 固定資産税の納税通知書——「建築年」が載っている自治体が多い
  • 書類がなければ、市区町村の建築担当課で建築確認の記録(台帳記載事項証明)を調べられることがあります

数字で見る——国の推計と、能登半島地震の悉皆調査

国土交通省の推計(2023年時点)では、全国の住宅約5,570万戸のうち耐震性が不十分な住宅が約570万戸、耐震化率は約90%です。戸建てに限ると耐震化率は約85%で、耐震性が不十分な戸建てが約450万戸あります。国は2035年(令和17年)までにおおむね解消することを目標にしています。

その「不十分」が何を意味するかを示したのが、2024年1月の能登半島地震です。日本建築学会の悉皆調査を分析した国の委員会の最終とりまとめ(2025年12月)では、木造建築物の倒壊・崩壊の割合が年代でこう分かれました。

木造建築物の年代倒壊・崩壊の割合
旧耐震(1981年5月以前)19.4%
新耐震・2000年基準の前(1981年6月〜2000年5月)5.4%
2000年基準以降0.7%(608棟のうち4棟)

そして同じ調査で、自治体の補助を受けて耐震改修していた旧耐震の木造38棟を見ると、無被害13棟、軽微〜中破22棟、大破3棟で、倒壊・崩壊はゼロでした。委員会は「耐震改修により被害が軽減されたと考えられる」と結論づけています。旧耐震でも、改修すれば結果が変わる、ということです。

まず耐震診断——国と自治体で費用の3分の2

耐震診断は、建築士などが図面と現地調査で「今の基準でどのくらい持つか」を数字(評点)で出すものです。木造の戸建てなら、多くの自治体が無料または少額の自己負担で診断を受けられる制度を持っています。国の令和8年度の支援では、住宅の耐震診断と補強設計に国と自治体で費用の3分の2が出る仕組みで、残りをさらに自治体が上乗せして無料にしているところが多いためです。

申し込み先は市区町村の建築・住宅担当課です。「旧耐震の木造住宅の耐震診断を受けたい」と言えば、対象条件(建築年・構造・所有者が住んでいること、など)と手順を教えてくれます。自治体によっては、まず「簡易診断」をしてから本格診断に進む二段階のところもあります。

その前の目安として、日本建築防災協会の「誰でもできるわが家の耐震診断」(10の質問に答える形式)があります。これは正式な診断ではありませんが、「診断を申し込むべきか」を考える材料になります。

改修の補助——定額115万円が基本、税の軽減が上乗せ

診断で「不十分」と出たら、補強設計と耐震改修工事に進みます。国の支援の骨格は次のとおりです(令和8年度。実際の補助額・条件は自治体ごとに決まります)。

支援内容(国の制度の基本線)期限・注意
耐震改修の補助補強設計等+耐震改修(または建替え)のパッケージ支援として、国と自治体で定額115万円。多雪区域は140万円、密集市街地等(防火改修を含む)は175万円自治体の補助制度を通じて受ける。上乗せや条件は自治体ごと
所得税の特別控除耐震改修工事の標準的な費用の10%を所得税から控除(費用の上限250万円=控除は最大25万円)昭和56年5月31日以前に建築した自宅が対象。令和10年12月31日までの工事。確定申告に「住宅耐震改修証明書」などを添付
固定資産税の減額改修した住宅の固定資産税(120㎡相当分まで)を翌年度1年間、2分の1令和13年3月31日まで。工事後に市区町村へ申告
融資住宅金融支援機構のリフォーム融資(限度額1,500万円)。高齢者向けの「リ・バース60」は70歳以上で申し込むと無利子になる利子補給があり、返済は本人が亡くなったときに家の売却などで行うリ・バース60は自治体の補助制度との併用が条件。取扱金融機関により内容が異なる

「全部やると数百万円かかるのでは」という声には、国が2025年3月に改訂した「木造住宅の安全確保方策マニュアル」の考え方があります。本格的な改修が難しい場合でも、寝室や居間など1室だけを補強する、家全体でなく壁の一部を増やすといった段階的な方法で、倒壊による死亡リスクを下げる選択肢が示されています。診断の結果を持って、自治体の窓口と建築士に「予算内でできる範囲」を相談するのが現実的です。

気をつけたいこと3つ

  1. 訪問して「耐震診断は無料です」と言う業者——自治体の無料診断は、自治体に申し込んで登録された建築士が来ます。突然の訪問で床下に潜って「危険です」と言い、その場で工事契約を迫るのは別物です。契約は自治体の制度を通し、見積もりは複数から
  2. 補助は「工事の前」に申請——ほとんどの自治体で、着工後の申請は対象外です。順番は「診断→補強設計→補助申請→交付決定→着工」
  3. 建替え・住み替えも選択肢——改修費が家の価値や余命と釣り合わないときは、建替え(同じ補助が使える場合あり)や、耐震性のある住まいへの住み替えも比べます。家を手放す判断は実家じまい・生前整理の記事もどうぞ

今日できること

  1. 登記事項証明書か固定資産税の納税通知書で、自宅の建築年を確かめる。1981年5月以前なら旧耐震、2000年5月以前の木造も要注意
  2. 市区町村の建築・住宅担当課に電話して、「木造住宅の耐震診断の補助はありますか。自己負担はいくらですか」と聞く
  3. 診断の結果が出るまでの間に、寝室の家具の固定備蓄を先に済ませる

耐震の話は「不安をあおる」ものではなく、数字がはっきりしている分野です。旧耐震の木造は5棟に1棟が倒れ、改修した家は倒れなかった。その差を、補助と税の軽減で埋められるうちに埋めておく——それだけの話です。

家の備えを順番に

家が持ちこたえたあとの備えは家具の固定と感震ブレーカー高齢者の防災——備蓄・避難・名簿火災警報器の10年交換へ。改修か住み替えかで迷うときは実家じまい・生前整理もどうぞ。

「うちの市の補助はいくらだった」という情報は、質問・リクエスト箱から教えてください。

出典

この記事は国土交通省・国税庁・国立研究開発法人建築研究所などの公開資料をもとにした一般的な情報です。補助の有無・額・条件は市区町村ごとに異なり、年度で変わります。税の軽減は要件と手続きがあるため、工事の前に自治体の窓口や税務署で確かめてください。能登半島地震の割合は調査対象地域の集計で、すべての地震・地域に当てはまるものではありません。特定の業者や商品を勧めるものではありません。