誠一の老後メモ

知らないと損をすることを、ひとつずつ。

PR・広告を含みます

地震のけがの3〜5割は「家具」——寝室から始める家具の固定、突っ張り棒だけでは足りない理由、自治体の無料取付け、そして感震ブレーカー

地震の備えというと、水や食料の備蓄を思い浮かべる方が多いと思います。けれども、けがの大きな原因になっているのが、揺れている最中の家具類の転倒・落下・移動です。東京都防災ホームページは、近年の地震による負傷者の30〜50%は、家具類の転倒・落下・移動が原因と説明しています。阪神・淡路大震災では、亡くなった方の8割以上が家屋の倒壊や家具などの転倒による圧迫死でした(埼玉県の資料)。

一方で、家具の固定をしている家は多くありません。内閣府の調査(平成29年)では、「家具等の固定」をしている人は40.6%でした(令和7年版防災白書)。よく聞かれる理由は、「壁に穴を開けたくない」「重くて動かせない」「何を買えばいいか分からない」の3つです。この記事は、その3つに順番に答えます。

まず「置き方」——固定の前に、寝る場所から家具をどかす

東京消防庁は、固定より先に配置を見直すことを勧めています。ポイントは3つです。

  • 寝る場所・座る場所に、なるべく家具を置かない。倒れても届かない位置に動かす。動かせないなら、倒れる向きにベッドや布団を置かない。
  • 部屋の出入口や廊下、避難経路に家具を置かない。倒れて扉が開かなくなると、逃げられなくなります。
  • 重いものは下、軽いものは上に収納する。家具の重心を下げるだけで、倒れにくくなります。

高齢の方ほど、揺れの最中に動くのが難しく、夜間は特に寝室が問題になります。最初にやるのは寝室、次に長く座る居間、この2部屋だけでも十分意味があります。

固定の方法——効果には順番がある

器具にはいくつか種類があり、東京消防庁や東京都は効果の高さをはっきり示しています。

方法効果向き・注意
L型金具(ネジ固定)最も高い家具の上部と壁を木ネジ・ボルトで固定する。壁の下地(柱・間柱)に留めるのが条件で、石こうボードだけの部分は効かない。取り付け向きは「下向き」が最も強い(東京都)
ポール式(突っ張り棒)+ストッパー式または粘着マット式適切に取り付ければL型金具と同等の高い効果が期待できる家具の底面をストッパーやマットで「踏ん張らせ」、天井との隙間をポールで「突っ張る」。2つ同時にやることで効果が出る(東京消防庁の実験。天井・床・家具の状態や製品によって変わる)
ポール式だけ単独では弱い家具の両端の、できるだけ奥側に設置する。天井の強度が足りないと効かない。単独で使うより組み合わせを(埼玉県・東京消防庁)
ストッパー式・粘着マット式だけ補助的底面に敷いて前にすべり出すのを防ぐ。背の高い家具は単独では足りない。テレビや小物家電には有効

つまり、壁に穴を開けられるならL型金具開けたくない・賃貸なら「突っ張り棒+マットかストッパー」の2点セットが答えです。「突っ張り棒だけ入れたから安心」は、よくある思い違いです。

器具はホームセンターや通販で買えます。壁に穴を開けない器具の例として、楽天市場で買えるものだと次のような製品があります(PR)。1つ目は壁と家具の上部に貼り付けて揺れを吸収するタイプ、2つ目は家具の底面に敷く粘着マットです。ほかにも同様の製品は多数あるので、家具の高さ・天井との隙間・家具の重さに合うもの(対応する寸法と耐荷重を確かめる)を選んでください。貼り付けるタイプは、壁紙の材質によっては使えないので、説明書の対応壁面を確認してください。

取り付けのコツは、東京消防庁の「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」(令和6年1月版)に図入りで載っています。巻末に家庭用のチェックリストもあるので、買う前に一度見ておくと、必要な数と種類が分かります。

家電と食器棚——テレビ・冷蔵庫・扉・ガラス

  • テレビ:薄型テレビは前に倒れやすい。粘着マットを脚の下に敷き、背面をベルトや金具で台や壁に固定する。
  • 冷蔵庫:重くて動かしにくいが、揺れで前に歩き出す。上部をベルト式の金具で壁に固定する。
  • 食器棚の扉:中の食器が飛び出してけがの原因になる。扉が開かないよう扉開放防止器具(ストッパー)を付ける。
  • ガラス:食器棚のガラス扉や窓に飛散防止フィルムを貼る。割れても破片が飛び散らない。

テレビについては、固定に加えて、倒れにくい壁寄せ型のテレビスタンドに載せ替える方法もあります。台とテレビを一体にして重心を低くし、壁際に寄せる形です。たとえば楽天市場では次のような製品があります(PR)。ほかにも同様の製品は複数あるので、お手持ちのテレビの画面サイズと重さが対応範囲に入っているか、置く場所の奥行きが足りるかを確かめて選んでください。

ただし、テレビスタンドへの載せ替えだけでは固定の代わりになりません。テレビとスタンドを説明書どおりに連結し、必要に応じてスタンドも壁や床に固定してください。キャスター付きのものは、ふだんのロックのしかたと地震対策を製品の説明書で確認します。

自分で取り付けられないとき——自治体の「無料取付け」

ネジ固定は、下地を探してドリルで穴を開ける作業で、脚立に乗ることもあります。高齢の方が自分でやるのは、けがの元です(脚立からの転落については庭の雑草と木の手入れに書きました)。そこで、市区町村の取付け事業を先に調べてください。例を挙げます。

  • 東京都江東区:65歳以上のひとり暮らし・高齢者のみの世帯を対象に、ポール・防止板・L字金具・チェーン金具・連結金具・食器棚の扉固定器具の6種類から、1世帯3か所まで無料で取り付け(介護保険課)。
  • 東京都新宿区:区内在住の方を対象に、専門業者が自宅で設置場所を調査し取り付ける。調査費・取付け費は無料で、器具の購入は利用者負担(災害時要援護者名簿に登録している方などは器具5点まで無料)。対象はタンス・戸棚・冷蔵庫・テレビ、器具はベルト式・L字金具・つっぱり棒・転倒防止板(危機管理課)。

名前も条件も自治体ごとに違うので、「家具転倒防止 取付け ○○市」で検索するか、地域包括支援センターか市区町村の防災・高齢者福祉の担当課に「家具の固定を手伝ってもらえる制度はありますか」と聞いてください。制度がない地域でも、シルバー人材センターが取り付けを請け負っていることがあります。

感震ブレーカー——揺れのあと、電気が戻ったときの火事を防ぐ

家具の次に備えたいのが火事です。大きな地震のあとの火災は、揺れの最中だけでなく、停電が復旧して電気が戻ったときに、倒れた電気ストーブや傷ついたコードから出火することがあります。いわゆる通電火災です。内閣府の検討会の資料では、東日本大震災の本震による火災のうち原因が特定されたものの過半数が電気関係で、阪神・淡路大震災でも火災の約6割が電気に起因したとされています(西東京市の案内)。

感震ブレーカーは、一定以上の揺れを感知すると自動で電気を止める装置です。消防庁は、自分でブレーカーを落とすのが難しい場合や不在時の地震に備えて設置を呼びかけています。種類は4つあります。

タイプしくみ工事
分電盤タイプ(内蔵型)分電盤のセンサーが揺れを感知して全体を遮断。ブザーが鳴り、すぐには切らない機種もある電気工事が必要(分電盤の交換)
分電盤タイプ(後付型)既存の分電盤に感震機能を外付けし、漏電ブレーカーを切る電気工事が必要
コンセントタイプコンセントに内蔵したセンサーで、そのコンセントの電気だけ止める(電気ストーブなど特定の家電向け)差し込むだけの製品と、工事が要る製品がある
簡易タイプおもりの落下やバネでブレーカーのつまみを物理的に落とす工事不要。自分で取り付けられる

注意点が2つあります。第一に、夜間に電気が切れると真っ暗になるので、足元灯や懐中電灯を寝室に常備すること。第二に、在宅で生命維持に関わる医療機器を使っている家は、機器のメーカーや主治医などに相談し、停電に対応できる電源・バッテリーを確保したうえで、電気を遮断する範囲を検討すること(消防庁・西東京市の案内)。冷蔵庫の中身が傷むことも織り込んでおきます。自治体によっては購入・設置の補助があるので、家具の固定と同じ窓口で聞いてください。

今日やる順番

  1. 寝室を見る。倒れたら布団に届く家具があるか。あるなら動かすか、寝る位置を変える。
  2. 出入口をふさぐ家具がないか見る。あれば移す。
  3. 固定する家具を3つ決める。寝室のタンス、居間の食器棚、テレビ。まずこの3つ。
  4. 自治体の取付け事業を調べる。あるなら申し込む。ないなら、壁に穴を開けられるかで「L型金具」か「突っ張り棒+マット」を選ぶ。
  5. 寝室に懐中電灯を置き、感震ブレーカーを検討する。工事不要の簡易タイプもあるが、分電盤やブレーカーの形状に適合するか確認し、説明書どおりに取り付けて動作確認をする。

全部を一度にやる必要はありません。寝室のタンス1本を固定するだけで、夜の地震による危険を一つ減らせます。

あわせて読む

ひとり暮らしの備えはひとり暮らしの見守り、在宅で使える住宅改修や道具は施設に入る前に、まだできること、脚立に乗らない線引きは庭の雑草と木の手入れをどうぞ。

「うちの自治体に取付け事業があるか」「この家具はどう固定すればいい」という声は、質問・リクエスト箱から教えてください。

出典

この記事は東京消防庁・東京都・内閣府・消防庁と自治体の公開資料をもとにした一般的な情報です。器具の効果は取り付け方(壁の下地・天井の強度)で大きく変わるので、製品の説明書と自治体の案内に従ってください。取付け事業や補助の有無・条件は市区町村ごとに異なります。記事内の製品はあくまで一例で、特定の製品を推奨するものではありません。電気工事が必要な感震ブレーカーは、電気工事士に依頼してください。