誠一の老後メモ

知らないと損をすることを、ひとつずつ。

ひとり暮らしの見守り——自治体の緊急通報から民間サービスまで、5つの型と「うちはどれか」の決め方

「離れて暮らす親が、倒れても誰にも気づかれないのでは」。子の側からも、本人からも、質問箱に近い相談が届きます。見守りというと「亡くなったあとに早く見つけてもらう」ことを想像しがちですが、本当の目的は逆で、倒れたときに生きているうちに気づいてもらうことです。脳卒中や転倒による骨折は、発見が早いほど回復の見込みが変わります。

数字を一つだけ。警察庁によると、2025年(令和7年)に警察が取り扱った死体のうち、自宅で亡くなった一人暮らしの人は7万6,941人で、そのうち65歳以上が5万8,919人(76.6%)でした(病院で亡くなった方や、警察を経ずに医師が看取った方は含みません)。このうち、死亡から8日以上たって発見された人は2万2,222人(65歳以上では1万5,911人)。内閣府はこの「8日以上」を、生前に社会的に孤立していたことが強く推認される目安として、孤立死者数の概数の推計に使っています。裏を返せば、この集計では計算上およそ71%が死後7日以内に発見されている、ということでもあります。見守りの仕組みは、この「発見までの時間」を数日から数時間に縮め、できれば生きているうちに気づいてもらうためのものです。

見守りの5つの型

誰が・どう気づくか費用の目安向いている人
①自治体の緊急通報システムペンダントのボタンを押すと受信センターにつながり、必要なら救急車や協力員が来る。火災センサーや人感センサーを足せる自治体も無料〜月数百円(所得で区分)65歳以上のひとり暮らし・高齢者のみ世帯。まず最初に確認する型
②地域の人による見守り民生委員の訪問、地域包括支援センター、自治体の見守りネットワーク(消費者安全確保地域協議会)、新聞・電気・ガスなど事業者の「異変に気づいたら通報」無料誰にでも。本人が「見守られたい」と申し出ることで動きやすくなる
③事業者の訪問・電話型郵便局員や警備会社の担当者が月1回訪問して家族に報告/毎日決まった時間に自動音声の電話で体調を聞き、家族にメール/異変の知らせを受けた家族などの要請で警備会社が駆けつける事業者・内容により異なる。駆けつけは別料金のことが多い家族が遠方で、「元気にしている」を定期的に知りたい
④機器・センサー型電気ポットやテレビの使用、電気の使用量、人感センサー、ドアの開閉、スマートフォンの位置情報などから「いつもと違う」を家族に知らせる機器代+月数百円〜。家族のスマホ側の設定が必要本人が何も操作したくない人。家族がスマホの通知を見られる人
⑤契約で備える(見守り契約・任意後見)司法書士・弁護士などと「定期的に連絡を取り、判断能力が落ちてきたら任意後見に移る」契約を結ぶ。任意後見契約は公正証書が必要月数千円〜(契約内容と相手による)。公正証書の作成費用は別頼れる家族がいない人。財産管理や施設入所の手続きまで見据えたい人

①のペンダント、③の毎日の電話、④のセンサーは「倒れたときに気づく」仕組み、②の地域の見守りや③の月1回の訪問は「暮らしの変化にゆるやかに気づく」仕組み、⑤は「判断力が落ちたときに困らない」仕組みで、目的が違います。ひとつで全部をまかなおうとせず、①か②を土台にして、足りない分を③④で補い、頼れる家族がいなければ⑤を足す、と考えると整理しやすいと思います。

①自治体の緊急通報システム——まずここから

多くの市区町村が、65歳以上のひとり暮らしや高齢者のみの世帯を対象に、緊急通報の機器を貸し出しています。一例として東京都中央区の場合、本体機器と緊急ペンダント(家の中の離れた場所からも通報できる)を貸与し、固定電話回線型か無線型を選べます。費用は月額で、課税世帯が固定600円/無線900円、非課税世帯が固定無料/無線450円、生活保護の方は無料。希望すれば火災センサーや見守りセンサーも追加でき、課税世帯は各月50円、非課税世帯・生活保護の方は無料です。申込みには、24時間連絡がつく緊急連絡先と、自宅の合鍵が必要です(これが後述の「鍵を開けられる人」の問題です)。

対象者・機器・費用は自治体ごとに違います。「緊急通報システム」「救急通報」などの名前で、市区町村の高齢者福祉の担当課か地域包括支援センターに「ひとり暮らしの見守りの制度はありますか」と聞けば案内してもらえます。介護保険の認定を受けていなくても相談できます。

②地域の人による見守り——「見守られたい」と言うと動く

  • 民生委員:民生委員法にもとづいて厚生労働大臣から委嘱され、住民の立場で相談に応じ、必要な援助を行う人たちです。給与は支給されず(法10条)、任期は3年、職務上知った秘密を守る義務があります(同15条)。担当の民生委員は、市区町村の福祉担当課に聞けば分かります。「ひとり暮らしなので、たまに気にかけてほしい」と本人から伝えておくと、訪問や声かけの対象になりやすくなります。
  • 地域包括支援センター:高齢者の総合相談窓口として市町村が設置している機関で、見守りの制度案内から介護の相談まで受けます。①の申込み窓口を兼ねている自治体もあります。
  • 見守りネットワーク(消費者安全確保地域協議会):消費者安全法にもとづき、自治体・福祉関係者・民生委員・事業者などが連携して、高齢者や判断力が不十分になった方の消費者被害を防ぐ仕組みです。2026年8月末時点で595の自治体が設置しています。もともとは詐欺や悪質商法の被害防止が目的ですが、「訪問販売の人がよく来ている」といった異変を地域で共有する枠組みなので、ひとり暮らしの安全とも重なります。
  • 事業者の見守り協定:新聞配達・郵便・電気・ガス・宅配などの事業者が、配達時に「新聞がたまっている」「電気のメーターが動いていない」などの異変に気づいたら自治体に連絡する協定を結んでいる地域が多くあります。住民の申込みを必要としない場合が多いですが、自治体や協定によって仕組みが違うので、自治体のページで協定の有無を確認できます。

③事業者の訪問・電話型——「元気の報告」を家族に届ける

郵便局、警備会社、電力・ガス会社などが有料の見守りサービスを提供しています。形は大きく3つです。

  • 訪問型:月1回、担当者が自宅を訪ねて30分ほど話し、生活の様子を家族に報告する。例として日本郵便の「みまもり訪問サービス」は月額2,500円(2026年9月時点・公式サイト)。
  • 電話型:毎日決まった時間に自動音声の電話がかかり、体調をボタンで答えると家族にメールが届く。同じく日本郵便の例で月額1,070〜1,280円。
  • 駆けつけ型:本人が非常ボタンを押す方式と、異変の知らせを受けた家族などの要請で警備会社が訪問する方式があります。日本郵便のオプションは後者で、月額880円から、出動時は1回5,500円(対応時間は1時間以内。別途、警備会社との契約が必要)。

ほかにも同種のサービスは複数あるので、内容と料金は見比べてください。選ぶときのポイントは、「気づいたあと、誰が家に入るのか」が決まっているかどうかです。訪問型・電話型は「異変を家族に知らせる」までで、駆けつけは別契約であることが多い。家族が遠方なら、駆けつけの相手を自治体の①か警備会社に置いておかないと、知らせを受けても動けません。

④機器・センサー型——本人が何もしなくていい

電気ポットやテレビの使用状況、電気の使用量、人感センサー、玄関ドアの開閉、スマートフォンの位置情報などを使い、「いつもの生活リズムと違う」ときに家族のスマホへ通知する仕組みです。本人がボタンを押したり電話に出たりする必要がないので、「毎日の応答が負担で続かない」人に向いています。一方で、通知を受け取る家族の側が、日常的にスマホを見て反応できることが前提になります。

選ぶときは、「電池切れや通信が止まったときに、それ自体が通知されるか」「誤報(旅行や入院で反応がないとき)をどう扱うか」を確認してください。機器代と月額のほかに、家のWi-Fiや電源の位置が問題になることもあります。

⑤契約で備える——頼れる家族がいないとき

ここまでの4つは、日々の安否や暮らしの変化に気づくための備えですが、ひとり暮らしにはもうひとつ、判断力が落ちてきたときに、手続きを代わりにする人がいないという問題があります。これに備えるのが任意後見契約で、判断能力が十分なうちに、将来の後見人と契約しておく制度です。契約は公正証書で作る必要があります。

任意後見は「判断能力が不十分になってから」動く契約なので、そこに至るまでの間、受任者が本人と定期的に連絡を取って様子を見る見守り契約を組み合わせるのが一般的です。また、判断能力はあるが体が不自由になったときに備える財産管理等委任契約を同時に結び、判断能力が低下したら任意後見に移る「移行型」もあります。相手は司法書士・弁護士・行政書士や、社会福祉協議会などが担っています。費用は契約の相手と内容で大きく違うので、複数に聞いて比べてください。

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「うちはどれか」を決める3つの質問

  1. 倒れたとき、何時間以内に気づいてほしいか。 「その日のうち」なら①のペンダントか③の電話型・④のセンサー型が要ります。「数日以内」に気づいてほしい場合も、毎日の電話やセンサーなど頻度の高い仕組みが要ります。②の訪問や事業者協定、③の月1回の訪問は、暮らしの変化をゆるやかに把握するには向きますが、倒れたときの早期発見を保証するものではありません。持病(心臓・脳血管・糖尿病など)がある方は前者で考えてください。
  2. 気づいたあと、家に入って鍵を開けられる人は誰か。 ここが決まっていない見守りは、知らせが届いても止まります。近所に合鍵を預けられる人がいるか、①の協力員や警備会社の駆けつけを使うか、鍵を預けるサービスを使うか。合鍵を預ける相手は、本人が信頼できる人を本人が決めるのが原則です。
  3. 本人が続けられるか。 毎日ボタンを押す・電話に出る型は、本人にとっては「監視されている」感覚になることがあり、続かないと意味がありません。本人が嫌がるなら④の操作不要型か、②の「たまに声をかけてもらう」から始めるほうが現実的です。

始め方の手順

  1. 地域包括支援センターに相談する。自治体の緊急通報システムの対象かどうか、見守り協定や民生委員の訪問の仕組みがあるかを聞く。
  2. 自治体の制度に申し込む(対象なら)。このとき「緊急連絡先」と「合鍵の預け先」を決める必要があるので、家族や近所の人と先に話しておく。
  3. 足りない分を民間で補う。家族が「毎日の元気」を知りたいなら③か④。駆けつけの相手がいなければ、駆けつけつきの契約を選ぶ。
  4. 緊急時の情報を家の中に置く。かかりつけ医、服用中の薬、緊急連絡先、保険の情報を1枚にまとめ、冷蔵庫など決まった場所に貼っておく。自治体によっては「救急医療情報キット」として容器と用紙を配り、冷蔵庫など確認する場所を指定している場合があります。
  5. 年1回、見直す。体の状態や家族の事情は変わります。要介護認定を受けたら、ケアマネジャーと見守りの形を組み直す(要介護認定の申請から結果まで)。

家族の側でできること

遠方の家族が「電話に出ない」と気づいたとき、いきなり交通機関で駆けつける前に頼める先を、平時に決めておいてください。担当の民生委員、地域包括支援センター、近所の人、①の受信センター。それでも安否が分からず緊急性があるときは、最寄りの警察署に安否確認を相談できます。連絡先を紙に書いて、家族のスマホと本人の家の両方に置いておくのが実務です。

そして、見守りは本人の同意があって初めて機能します。「心配だから」で家族が一方的に機器を置くと、外されたり電源を抜かれたりします。「何かあったとき、あなたが困らないようにしたい」という本人の側の利益として話し、本人が選んだ形にする。それが、いちばん長く続く見守りだと思います。

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「うちの自治体の制度を知りたい」「親が見守りを嫌がる」といった声は、質問・リクエスト箱から教えてください。記事の形でお答えしていきます。

出典

この記事は警察庁・内閣府・厚生労働省・消費者庁と自治体の公開資料をもとにした一般的な情報です。緊急通報システムの対象・機器・費用は市区町村ごとに異なり、記事中の金額は東京都中央区の例です。民間サービスの料金は2026年9月時点の公式サイトの表示で、変更されることがあります。特定の事業者を推奨するものではなく、複数を見比べてお選びください。契約型の備え(任意後見など)は司法書士・弁護士・社会福祉協議会などにご相談ください。