要介護認定の申請から結果まで——どこに出す、誰が来る、30日。結果を待たずにサービスを使い始める道もあります
介護にいくらかかるかの記事で、介護保険を使えば自己負担は1〜3割で、しかも上限があると書きました。ただ、その入口には「要介護認定」という手続きがあります。介護保険の給付として正式にサービスを使うには、要介護・要支援の認定が必要です(申請さえしていれば、結果が出る前でも暫定のケアプランで使い始められる場合があります。後半で説明します)。
この記事は、その認定の申請から結果までを、順番に追います。「親が急に弱ってきた」「退院後に家で見られるか不安」という場面で、最初にやることが分かる状態を目指します。
まず全体像——5つのステップと「30日」
| ステップ | やること・起きること | 誰が |
|---|---|---|
| ①申請 | 市区町村の介護保険の窓口に申請書を出す(代行あり) | 本人・家族・代行者 |
| ②認定調査 | 調査員が自宅などを訪問し、心身の状態を面接で確認 | 市区町村の調査員 |
| ②主治医意見書 | 市区町村が主治医に依頼(本人の費用負担なし) | 市区町村・主治医 |
| ③審査判定 | コンピュータの一次判定→介護認定審査会の二次判定 | 市区町村 |
| ④通知 | 要支援1・2、要介護1〜5、非該当のどれかが通知される | 市区町村 |
| ⑤ケアプラン | 要支援は地域包括支援センター(または市町村の指定を受けた居宅介護支援事業者)、要介護はケアマネジャーと作る | 本人・家族 |
法律上、市区町村は申請日から30日以内に認定の処分をしなければならないと決まっています(介護保険法27条11項)。調査に時間がかかるなど特別な理由がある場合は、30日以内に「あとどのくらいかかるか」とその理由を通知して延期できます。実際には30日を超えることも珍しくないので、「急ぎなら申請日を早める」のが基本です。
①申請——どこに、誰が、何を持って
出す先は、お住まいの市区町村の介護保険担当の窓口です。あとで書くように、地域包括支援センターなどに代行してもらう形でも出せます。
持っていくものは、65歳以上の方は「介護保険被保険者証」(65歳になると市区町村から送られてくるもの)。40〜64歳の方は医療保険に入っていることが確認できるもの(マイナ保険証・資格確認書など。必要な書類は自治体に確認してください)です。40〜64歳の方が申請できるのは、16の特定疾病(末期がん、関節リウマチ、脳血管疾患、初老期の認知症、パーキンソン病関連疾患など)が原因で介護が必要になった場合に限られます。
本人が窓口に行けなくても大丈夫です。家族が代わりに出せますし、法律上、地域包括支援センター・居宅介護支援事業者(ケアマネジャーのいる事業所)・介護保険施設に申請手続きを代行してもらうことができます(介護保険法27条1項)。入院中なら、病院の相談員(医療ソーシャルワーカー)が段取りを手伝ってくれることがあります。
迷ったら、最初の相談先は地域包括支援センターです。「どこに何を出すか」から一緒に考えてくれます。
②認定調査と主治医意見書——「普段の様子」を伝える
申請すると、市区町村の認定調査員が自宅や入院先・入所先を訪問し、本人と面接して心身の状態や置かれている環境を確認します(法律上、市区町村は職員に面接・調査をさせることになっています。委託されることもあります)。
同時に、市区町村は主治医(かかりつけ医)に「主治医意見書」を依頼します。本人が頼みに行く必要はなく、作成料の自己負担もありません。主治医がいない場合は、市区町村の指定する医師の診察を受けます。申請書に主治医の名前と医療機関を書く欄があるので、普段どこにかかっているかをあらかじめ整理しておくと、ここで止まりません。
認定調査は短い時間の面接です。だからこそ、次のような準備をおすすめします。
- 家族が同席する。本人は「できます」と答えがちで、普段の困りごとが伝わらないことがあります。
- 普段の様子をメモしておく。特に「できない日があること」「夜間の様子」「物忘れや混乱」「転倒の回数」「服薬の管理」など、面接のその瞬間には見えないことを。
- 主治医にも、家での困りごとを伝えておく。診察室で見える姿と家での姿は違います。意見書に反映してもらうためです。
これは「重く見せる」ためではありません。厚生労働省の説明にもあるとおり、要介護度は病気の重さではなく「介護の手間がどれだけかかるか」で決まります。たとえば認知症で身体は元気な方は、徘徊などへの対応に手間がかかるため、寝たきりの方より介護の総量が多いと判定されることがあります。手間の実態が伝わらないと、実態より軽い判定になりかねない、という話です。
③審査判定——コンピュータと審査会の二段階
調査結果と主治医意見書の一部は、全国一律の方法でコンピュータの一次判定にかけられます。ここで使われるのが「要介護認定等基準時間」という物差しで、1日にどれだけの介護の手間がかかるかを分単位で推計したものです。
| 区分 | 要介護認定等基準時間 |
|---|---|
| 要支援1 | 25分以上32分未満 |
| 要支援2・要介護1 | 32分以上50分未満(状態の安定性などで分かれる) |
| 要介護2 | 50分以上70分未満 |
| 要介護3 | 70分以上90分未満 |
| 要介護4 | 90分以上110分未満 |
| 要介護5 | 110分以上 |
この「分」は、施設で実際に行われた介護を調べた統計から推計した目安で、家庭で実際にかかる介護時間とは別物です。そのあと、保健・医療・福祉の専門家でつくる介護認定審査会が、一次判定を原案に、調査の特記事項と主治医意見書を加味して最終的に決めます(二次判定)。
④結果の通知——7段階と「非該当」
結果は、要支援1・2、要介護1〜5の7段階、または非該当として通知され、被保険者証に記載されて返ってきます。要支援は「介護予防のサービスが効果的な状態」、要介護は「常時介護を必要とする状態」という位置づけです。
非該当でも、何も使えないわけではありません。市区町村が行う地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)で、生活機能を保つためのサービスや生活支援を使える場合があります。地域包括支援センターに相談してください。
判定そのものに納得がいかないときは、市区町村に説明を求めたうえで、都道府県の介護保険審査会への審査請求ができます。これとは別に、認定のあとで心身の状態や介護の必要度が変わったときは、区分変更の申請という手続きがあります(不服申し立てではなく、状態の変化に合わせて区分を見直してもらう手続きです)。
結果を待たずに使い始める——「申請日にさかのぼる」という仕組み
30日は、困っている家族にとっては長い時間です。ここで知っておきたいのが、要介護認定は申請のあった日にさかのぼって効力を生じるという法律の決まりです(介護保険法27条8項)。
これを使って、認定結果が出る前に、見込みの介護度で暫定のケアプランを作り、サービスを使い始めることができます。退院直後に訪問介護やベッドの貸与が必要、といった場面で使われます。窓口は地域包括支援センターやケアマネジャーです。
ただし注意が1つ。結果が非該当だったり、見込みより軽い介護度だった場合、実際に認定された区分の支給限度額を超えた部分や、給付の対象外になったサービスの分は全額自己負担になる可能性があります。「とりあえずたくさん使う」のではなく、本当に必要なものを、ケアマネジャーと相談して絞るのが前提です。
⑤認定のあと——ケアプランと有効期間
認定が出たら、次はケアプラン(介護サービス計画)です。在宅でサービスを使う場合、要支援1・2の方は地域包括支援センター(2024年4月からは、市町村の指定を受けた居宅介護支援事業者にも頼めます)に、要介護1以上の方は居宅介護支援事業者のケアマネジャーに依頼して、どのサービスをどう組み合わせるかを決めます。ケアプランの作成に自己負担はありません。施設に入所する場合は、施設のケアマネジャーが施設のケアプランを作ります。施設に入る場合の考え方は老人ホーム8種類の見取り図、在宅で続ける道具は施設に入る前に、まだできることにまとめています。
認定には有効期間があります。
- 新規の認定:原則6か月(状態により3〜12か月)
- 更新の認定:原則12か月(更新の前後で要介護・要支援の区分が変わる場合は3〜36か月、同じ場合は3〜48か月の範囲で市区町村が決めます)
有効期間が切れると介護保険の給付としてサービスを使えなくなるので、満了前に更新の申請が必要です(満了前に市区町村から案内が届くことが多いですが、届くのを待たずに有効期間を確かめておくと安心です)。また、有効期間の途中でも、状態が変わったときは区分変更の申請ができます。良くなったときも、悪くなったときもです。
最初の一歩は「地域包括支援センターに電話」
ここまで読んで「手続きが多い」と感じたかもしれません。でも、家族がやることは実はそれほど多くありません。①申請を出す(または代行を頼む)、②調査に同席して普段の様子を伝える、③主治医を決めておく。この3つです。あとは市区町村が動きます。
そして、どの段階でも迷ったら、お住まいの地域の地域包括支援センターに電話してください。申請の代行から、認定前の暫定利用、認定後のケアプランまで、ひとつの窓口で相談に乗ってくれます。
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出典
- 厚生労働省「要介護認定に係る制度の概要」(要介護状態・要支援状態、認定調査と主治医意見書、一次判定・二次判定) (2026年9月11日確認)
- 厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」(介護の手間で判定・病気の重さと要介護度は一致しない・要介護認定等基準時間の区分) (2026年9月11日確認)
- 厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」(40〜64歳の16の特定疾病) (2026年9月11日確認)
- 厚生労働省「要介護認定に係る法令」(認定調査・主治医意見書・介護認定審査会・有効期間:新規6か月〈3〜12〉、更新12か月〈3〜36/3〜48〉) (2026年9月11日確認)
- 介護保険法 第27条(申請の代行、面接調査、主治医意見書、第8項「申請のあった日にさかのぼって効力」、第11項「30日以内」と処理見込期間の通知)、第115条の22(介護予防支援事業者の指定は地域包括支援センターの設置者または指定居宅介護支援事業者の申請により行う)、第29条(要介護状態区分の変更の認定:介護の必要の程度が変わったときの申請)、第183条(介護保険審査会への審査請求) (2026年9月11日確認)
- 厚生労働省 老健局 事務連絡(平成23年)「要介護認定等の申請後に暫定ケアプランに基づく介護サービスの利用を行った場合、要介護認定等の効力は申請のあった日に遡及する」(暫定ケアプランの仕組みに触れた国の通知) (2026年9月11日確認)
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービス利用までの流れ」(申請に必要なもの・意見書の自己負担なし・原則30日以内・7段階と非該当・有効期間・ケアプランの依頼先・非該当でも地域支援事業) (2026年9月11日確認)
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「どんなサービスがあるの? - 居宅介護支援」(ケアプラン作成の利用者負担なし) (2026年9月11日確認)
- 春日市「要介護認定の結果が出る前にサービスは利用できますか?」(自治体の案内の例:暫定ケアプランでの利用と、非該当・見込み違いのときの差額自己負担) (2026年9月11日確認)