誠一の老後メモ

知らないと損をすることを、ひとつずつ。

デジタル遺品——スマホが開かない、ネット銀行が分からない、サブスクの請求が止まらない。家族の探し方と、元気なうちにできる5つの備え

亡くなった親のスマホが開かない。通帳はないのに、ネット銀行を使っていたらしい。クレジットカードの明細に、見覚えのない毎月の請求がある——。スマホとインターネットが当たり前になって、こうした「デジタル遺品」の相談が、消費生活センターに寄せられるようになりました。

この記事は、家族が亡くなったあとに残された側ができることと、自分が元気なうちにできる備えを、国民生活センターや国の制度の案内にそってまとめたものです。

デジタル遺品とは

決まった定義はありませんが、国民生活センターは、スマホやパソコンを通して確かめられるデータや、インターネットで契約したサービスをこう呼んでいます(スマホやパソコンという機械そのものは含みません)。たとえば、次のようなものです。

  • ネット銀行・ネット証券の口座、コード決済(スマホ決済)の残高、暗号資産
  • 動画・音楽配信、スマホのセキュリティなどのサブスク(毎月・毎年の定額契約)
  • 写真、メール、メッセージなどのデータ

国民生活センターが紹介している総務省の調査(令和5年)では、スマホでインターネットを使う人は60代で78.3%、70代で49.4%でした。シニア世代にとっても、身近な話です。

家族が困る3つのこと

国民生活センターは、2024年11月の発表で、寄せられた相談から次の3つの特徴を挙げています。

1. スマホのロックが解除できない

ネット上の資産を管理するアプリや、契約の確認メールは、スマホやパソコンに集まっています。ところがパスワードが分からないと、家族などの第三者がロックを解除するのはとても難しいとされています。相談の中には、携帯電話の販売店で「初期化はできるが、画面ロックの解除はできない」と言われた例もあります。

Appleも、パスコードでロックされた端末は、端末を消去しない限りパスコードの解除は手伝えないと案内しています。初期化(消去)すると、中に残っていたデータは見られなくなります。

2. ネット上の資産は、家族が全体をつかみにくい

ネット銀行やコード決済は、紙の通帳や郵便が届かないことが多く、どこに何があるのか家族には見えません。相続の手続きにも、死亡の事実や相続人を確かめる書類が必要で、店舗のない事業者だと郵送のやりとりで時間がかかることがあります。弟のコード決済の残高について、書類を送って1か月たっても残高すら回答がない、という相談も紹介されています。

なお、ネット銀行やネット証券にある預金や株も、暗号資産も、相続財産です。国税庁は、相続税がかかる財産を「金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのもの」とし、暗号資産を相続したときも相続税がかかるとしています。

3. サブスクは、解約しない限り請求が続く

サブスクの契約は、契約者が亡くなっても、解約の手続きをしない限り請求が続きます。事業者には、契約者が亡くなったことを知る手段がないため、相続人である家族が手続きをする必要があります。

夫を亡くした80代の女性が、カードの明細で約1,000円の見覚えのない請求に気づき、調べるとスマホのセキュリティのサブスクだった、という相談も紹介されています。事業者からは「IDとパスワードが分からなければ、すぐには解約できない」と言われたそうです。ただ国民生活センターは、IDやパスワードが分からなくても、契約先の事業者が特定できれば、家族から連絡することで解約などに応じてもらえるケースが多いとしています。

家族が亡くなったら——手がかりを探す順番

デジタル遺品を確かめる順番(例)
  1. スマホやパソコンを、すぐに初期化・処分しない中に契約の手がかりが集まっています。初期化すると、データは見られなくなります。
  2. 紙と明細から、契約先を探す通帳・クレジットカードの明細・郵便毎月の引き落としや請求から、契約先が分かることがあります。請求元が分からないときは、カード会社などに問い合わせる方法もあります。
  3. 口座を探す制度を使う相続時預貯金口座照会・ほふりの開示請求どちらも手数料がかかり、分かるのは口座がある金融機関などで、残高までは分かりません。
  4. 契約先に連絡して、相続や解約の手続きをするIDやパスワードが分からなくても、事業者が特定できれば応じてもらえるケースが多いとされています。

国民生活センター「今から考えておきたい『デジタル終活』」(2024年11月)などをもとに作成。手続きの細かい流れは事業者ごとに違います。

口座を探す2つの制度

相続時預貯金口座照会ほふり(証券保管振替機構)の開示請求
分かること亡くなった人のマイナンバーが付けられた預貯金口座(金融機関名・支店名・口座番号など)。全国の金融機関が対象(一部の金融機関を除く)上場株式などの振替株式等の口座を開いていた証券会社・信託銀行などの名前。外国株式・国債・社債などだけの口座は分からない
使える条件本人が生前に、口座にマイナンバーを付けていたこと。照会は亡くなってから10年後まで相続人が請求できる
申し込み先金融機関の窓口(取引のない金融機関でも、預金保険機構の委託先なら可)。マイナポータルからは申し込めないほふりへ郵送
手数料1件5,060円(税込)1件7,700円(税込)。法定相続情報一覧図のコピーを出すと6,050円。該当がなくてもかかる
分からないこと口座の残高銘柄、取引の履歴、残高
かかる時間の目安結果の通知まで1か月程度2か月ほど(2026年10月時点の案内)

相続時預貯金口座照会では、亡くなった人のマイナンバーを家族が用意する必要はありません。相続人の誰か1人が申し込みます。ほふりの手数料は改定されることがあるので、申し込む前に最新の案内を確かめてください。どちらも、口座が見つかったあとの払い戻しや名義変更は、それぞれの金融機関で手続きします(家族が亡くなったあとの手続き)。

スマホの契約の解約

携帯電話会社は、契約者が亡くなったときの解約の手続きを案内しています。たとえばドコモは、ショップでの手続きで、死亡の事実が分かるもの(葬儀の案内状、死亡診断書、除籍が分かる戸籍謄本など)と、来店する人の本人確認書類、SIMカードを持っていくよう案内しています。手数料は無料ですが、解約するとためていたポイントは失効します。必要な書類や、プランごとの手続き方法(郵送など)は会社ごとに違うので、各社の案内を確かめてください。

電話番号の契約を解約しても、スマホの本体の中身や、ほかのサービスの契約は残ります。サブスクなどは、それぞれ解約が必要です。

元気なうちにできる5つの備え

国民生活センターは、事前の対策を4つ挙げています。これに、国の口座の制度を加えて5つにまとめました。

1. 「スマホのスペアキー」を作っておく

国民生活センターが紹介している方法です。名刺大の紙にパスワードなどを書き、パスワードの部分に修正テープを2〜3回重ねて貼って隠し、家族が見つけられる場所にしまっておきます。必要なときに、家族がコインなどで削って読みます。誰かが削った跡に気づいたら、すぐにパスワードを変えます。パスワードをそのまま書かず、家族にだけ分かる合言葉(「パートナーの誕生日」など)で書く方法もあります。

パスワードは、ふだんから人に教えるとトラブルのもとにもなります。総務省も、パスワードをメールでやりとりしないこと、やむを得ずメモに書いたときは鍵のかかる机や金庫など安全な方法で保管することを呼びかけています。

2. 契約しているサービスの一覧を作る

ネット銀行・ネット証券・コード決済・サブスクなど、サービスの名前とIDを書き出しておきます。特に、毎月お金がかかる契約は、ふだんから整理しておくよう勧められています。使っていないサブスクがあれば、このときに解約しておくと、家族の手間も減ります。スマホのパスワード管理の機能(Apple・Google)を使って確かめる方法も紹介されています。

3. エンディングノートに書く

法務省と日本司法書士会連合会のエンディングノートは、無料で公開されています。「携帯電話・パソコンのログイン情報」「オンライン口座(銀行、株式、FX、仮想通貨など)」「有料サービスの契約状況」を書く欄があります。ノート自身にも、他人に見られると不正アクセスのおそれがあるので、管理に十分注意するよう書かれています。

4. Apple・Googleの「指名」の機能を使う

  • Apple(iPhone・iPad・Mac):「故人アカウント管理連絡先」に、信頼できる人を指名しておけます(iOS 15.2以降など。複数人可)。亡くなったあと、その人は「アクセスキー」と、日本では死亡の記載がある戸籍謄本を使って申請し、写真・メッセージ・メモ・ファイル・端末のバックアップなどのデータにアクセスできます。ただし、購入した映画・音楽・サブスクや、保存しているパスワード・支払い情報にはアクセスできません。
  • Google(Androidなど):「アカウント無効化管理ツール」で、自分で決めた期間アカウントが使われなかったときに、指定した人(10人まで)に知らせたり、データを共有したりするよう設定できます。Googleは、2年使われていないアカウントは削除されることがある、としています。

どちらも、端末の画面ロックを家族が外せるようになる機能ではありません。画面ロックは、1のスペアキーで備えます。

5. 預貯金口座にマイナンバーを付けておく(任意)

生前に口座へマイナンバーを付けておくと、亡くなったあと、家族が「相続時預貯金口座照会」で口座を探せます。付けるかどうかは本人の任意で、届け出なしに付けられることはありません。デジタル庁の案内では、いったん付けると原則として取り消せないので、仕組みを確かめてから決めてください。

チェックリスト

  • 家族が亡くなっても、スマホやパソコンはすぐに初期化・処分しない
  • 通帳とクレジットカードの明細で、毎月の引き落としを確かめる
  • 口座が分からないときは、相続時預貯金口座照会とほふりの開示請求を検討する
  • 自分のスマホの「スペアキー」を作り、家族が見つけられる場所にしまった
  • サービスの名前とIDの一覧(エンディングノートなど)を作り、使っていない契約は解約した
  • Appleの故人アカウント管理連絡先か、Googleのアカウント無効化管理ツールを設定した

家族が亡くなったあとの手続きを、順番に

期限の順に並べた全体像は家族が亡くなったあとの手続き、税金は亡くなった親の確定申告(準確定申告)、元気なうちの備えは遺言書の書き方と保管と親が認知症になったら、口座はどうなるかへ。

「こうして見つかった」「ここで困った」という話は、質問・リクエスト箱から教えてください。

出典

この記事は、国民生活センター・デジタル庁・預金保険機構・国税庁などの公表資料と、各社の公式の案内にもとづく一般的な情報です(2026年10月5日時点)。手数料や手続きの方法は変わることがあります。相続の手続きや、相続するかどうかの判断に迷うときは、金融機関や、司法書士・弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。困ったときは、お住まいの自治体の消費生活センター(消費者ホットライン188)にも相談できます。