誠一の老後メモ

知らないと損をすることを、ひとつずつ。

相続の戸籍集め——本籍地が遠くても、近くの役所の窓口でまとめて請求できる(広域交付)。集めた戸籍は法務局で「法定相続情報一覧図」に。写しは無料で、預金・年金・相続税の手続きに使える

親が亡くなって、銀行の相続手続きや不動産の名義変更(相続登記)を始めると、「亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をお持ちください」と言われることがあります。本籍地を何度も移していると、これまでは、本籍地のあった役所それぞれに、郵送などで一つずつ請求する必要がありました。

この手間を軽くする制度が2つあります。戸籍の広域交付(近くの役所でまとめて請求できる)と、法定相続情報証明制度(集めた戸籍をもとに相続関係を1枚の図にまとめ、法務局に確認してもらう)です。この記事は、その2つを法務省・法務局などの案内にそって整理したものです。相続の手続き全体は、家族が亡くなったあとの手続きで期限の順に並べています。

なぜ「出生から死亡まで」の戸籍が要るのか

戸籍は、結婚や本籍地の移動(転籍)、戸籍の作り替え(改製)などで、一人について何通にも分かれていることがあります。法務局は、相続人を特定するには、亡くなった人のすべての戸籍・除籍を漏れなく確認する必要があると説明しています。

2つの制度のちがい

戸籍の広域交付法定相続情報証明制度
何ができるか本籍地以外の市区町村の窓口で、戸籍証明書・除籍証明書をまとめて請求できる集めた戸籍をもとに、相続関係を1枚にまとめた「法定相続情報一覧図」を自分(または頼んだ代理人)が作って法務局に出すと、法務局が確認・保管し、認証文のついた写しを受け取れる
どこで全国の市区町村の戸籍の窓口法務局(登記所)
いつから2024年3月1日2017年5月29日
費用戸籍の手数料(文京区の例:戸籍謄本450円、除籍謄本・改製原戸籍謄本750円)無料(戸籍を取る手数料と、郵送する場合の郵送料は別)
郵送・代理人どちらも不可。本人が窓口へ郵送でも申出できる。親族や、弁護士・司法書士・税理士・行政書士などに頼むこともできる

順番としては、広域交付で戸籍を集め、一覧図を作り、戸籍と一緒に法務局に出すという流れになります。

戸籍集めから相続の手続きまで(例)
  1. 近くの役所で戸籍を請求広域交付亡くなった人の出生から死亡までの戸籍・除籍を、本籍地以外の窓口でまとめて。顔写真付きの身分証明書を持って本人が行きます。
  2. ほかの書類をそろえる相続人全員の今の戸籍、亡くなった人の住民票の除票、申し出る人の本人確認書類など。
  3. 一覧図を作る亡くなった人と相続人を1枚の紙にまとめます。自分で作るか、司法書士などの代理人に頼みます。手書きでもかまいません。
  4. 法務局に申し出る郵送も可申出書・一覧図・集めた戸籍などを出します。戸籍は返してもらえます。
  5. 一覧図の写しを受け取る無料法務局が戸籍と照らし合わせて確認し、認証文のついた写しを、手続きに必要な通数だけ出します。一覧図は5年間保管されます。
  6. 各手続きに使う預金の払戻し、年金、相続税の申告、相続登記など。使えるかどうかは提出先に確認します。

法務省「戸籍法の一部を改正する法律について」、法務局「法定相続情報証明制度」の案内をもとに作成。

広域交付——近くの役所で、まとめて請求できる

2024年3月1日から、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになりました。ほしい戸籍の本籍地が全国にあっても、1か所の窓口でまとめて請求できます(法務省)。

請求できる人

  • 本人
  • 配偶者(夫や妻を亡くした配偶者も請求できます)
  • 父母、祖父母など(直系尊属)
  • 子、孫など(直系卑属)

きょうだいについては注意が必要です。本人や父母が載っている戸籍なら、そこに一緒に載っているきょうだいの記載も含めて取れますが、結婚などで親の戸籍から抜けたあとの、きょうだい自身の戸籍は請求できません(文京区の案内。法務省のパンフレットも、きょうだいの戸籍は請求できないと注意しています)。子がいない人が亡くなり、きょうだいが相続人になる場合などは、広域交付だけでは集めきれないことがあります。そのときは、本籍地の市区町村への請求方法を、その市区町村のページで確かめてください。

行く前に知っておきたい決まり

  • 本人が窓口に行く:郵送や代理人による請求はできません(法務省)。文京区は、受け取りも代理の人には渡さないと案内しています。
  • 顔写真付きの身分証明書:運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど(法務省)。板橋区は、資格確認書や年金手帳は本人確認書類として認めないと案内しています。
  • 取れないもの:戸籍の一部だけの証明(一部事項証明書・個人事項証明書=いわゆる抄本)、コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍(法務省)。戸籍の附票や身分証明書なども、これまでどおり本籍地でしか取れません(文京区・板橋区)。
  • 受け付けない窓口がある:休日の開庁、夜間の窓口、出張所では受け付けていない区があります。

出来上がるまでに時間がかかることがある

相続のために「出生から死亡まで」をさかのぼる請求は、ほかの市区町村に確認しながら進めるため、時間がかかります。区の案内では、たとえば次のとおりです。

  • 文京区:出生から死亡までなど複数の戸籍を請求すると、受け取りに再び来るまで2週間以上
  • 板橋区:当日に出せる場合でも90〜120分程度。父と母の2人分など対象が複数だと数週間から1か月程度。曾祖父母より前の戸籍は事前の予約が必要

かかる時間や受付の決まりは市区町村によって違います。行く前に、その役所のページで確かめておくと安心です。

法定相続情報一覧図——戸籍の束を、1枚の図に

集めた戸籍の束は、銀行・年金・税務署・法務局と、手続きのたびに出し直すことになります。法定相続情報証明制度では、相続人(または頼んだ代理人)が、相続関係を1枚にまとめた一覧図を自分で作り、戸籍と一緒に法務局に出します。法務局の登記官が戸籍と照らし合わせて確認し、認証文のついた写しを無料で出してくれます(2017年5月創設)。一覧図は手書きでもかまいません。

手続きのあらまし

  • 申し出る人:亡くなった人の相続人(またはその相続人)。親族のほか、弁護士・司法書士・土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士・行政書士に代わりに頼むこともできます。
  • 申し出る先:次のどれかを管轄する法務局を選べます。①亡くなった人の本籍地(死亡時の本籍)②亡くなった人の最後の住所地 ③申し出る人の住所地 ④亡くなった人名義の不動産の所在地。
  • 郵送:申出も、一覧図の写しの受け取り(戸籍の返却を含む)も、郵送でできます。郵送で受け取るときは、返信用の封筒と切手を同封します。
  • 通数:相続の手続きに必要な範囲で、複数通を受け取れます。
  • 保管と再交付:一覧図は5年間(申出日の翌年から数えて)保管され、その間は再交付を受けられます。ただし再交付を受けられるのは最初に申し出た人で、ほかの相続人が受けるには、その人からの委任が必要です。

出来上がるまでの日数は、法務局の全国向けの案内には書かれていません。急ぐときは、申し出る法務局に確かめてください。

主な必要書類

  • 亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本
  • 亡くなった人の住民票の除票(取れないときは戸籍の附票)
  • 相続人全員の今の戸籍謄本または抄本(亡くなった日以後に証明されたもの)
  • 申し出る人の本人確認書類(運転免許証の表裏のコピー、マイナンバーカードの表面のコピー、住民票の写しなど)
  • 一覧図に相続人の住所を書く場合は、各相続人の住民票の写し(住所を書くかどうかは任意)

きょうだいが相続人になるときなどは、亡くなった人の親などの戸籍も必要になる場合があります。また、亡くなった人や相続人が日本国籍を持っていないなどで戸籍を出せない場合は、この制度を使えません。

使える手続き

手続きどう使えるか
預金の払戻し法務局が利用先の例として挙げています。銀行ごとに必要書類が違うので、事前に確認を
年金(遺族年金・未支給年金など)2020年10月26日から使えます。日本年金機構は、続柄を確かめる書類として「戸籍謄本」か「法定相続情報一覧図の写し」のどちらかを求めています。請求する人が配偶者、または遺族年金を請求する子の場合は、マイナンバーを書けば戸籍謄本を省略できます
相続税の申告使えます。ただし図の形式で、子が実子か養子かが分かる書き方のものに限ります。亡くなった人に養子がいる場合は、その養子の戸籍謄本か抄本も必要です(国税庁)。続柄を「子」とだけ書くと使えない手続きがある、と法務局も注意しています
相続登記(不動産の名義変更)使えます。2024年4月からは、一覧図に書かれた「法定相続情報番号」を申請書に書けば、写しを付けなくてよくなりました(番号が使えるのは不動産登記だけ)

一覧図が示すのは「誰が法律上の相続人か」です。相続放棄や遺産分割協議の書類は、別に必要です。また、使えるかどうか分からないときは、提出先に問い合わせるよう法務局は案内しています。不動産を相続したときの名義変更は、2024年4月から義務になっています(取得を知った日から3年以内)。

窓口に行く前の確認リスト

  1. 亡くなった人の本籍地の移り変わりを、分かる範囲でメモしておく
  2. 相続人にきょうだいが入るか(入るなら、親の戸籍から抜けたあとのきょうだいの戸籍は広域交付では取れない)
  3. 行く人の顔写真付きの身分証明書
  4. 役所のページで、受付の曜日・時間、予約の要否、出来上がりまでの日数
  5. 手続き先が複数あるなら、法定相続情報一覧図を作るか(相続税の申告がありそうなら、実子・養子が分かる書き方で)

相続の手続きを、順番に

期限の順に並べた全体像は家族が亡くなったあとの手続き、借金が多いときは相続放棄の手続き、年金は遺族年金の「2つの5年」、税金は亡くなった親の確定申告(準確定申告)、ネット銀行や証券口座の探し方はデジタル遺品へ。相続税がかかりそうかは相続税の基礎控除 計算で当たりをつけられます。

「うちの場合はどうなる?」という疑問は、質問・リクエスト箱から教えてください。

このテーマをまとめて読む:老後資金のまとめ

出典

この記事は、法務省・法務局・日本年金機構・国税庁と一部の区の公表資料にもとづく一般的な情報です(2026年10月10日時点)。受付の曜日や時間、予約の要否、手数料、出来上がりまでの日数は市区町村や法務局によって違います。手続き先が一覧図を受け付けるかどうかも含め、それぞれの窓口でお確かめください。