遺族年金には「2つの5年」があります——請求の時効と、2028年改正の「5年で終わる」はまったく別の話
遺族年金には、意味の違う「5年」がふたつあります。
ひとつは、請求が遅れたときの時効の5年。もうひとつは、2028年の改正で話題になった受給期間の5年。まったく別の話なのですが、混同されやすいのです。「5年で終わる」というニュースを見て不安になった方ほど、先に結論をお伝えします——60歳以上で配偶者を亡くした方、すでに受け取っている方には、改正の5年は関係ありません。そして、そういう方にこそ関係するのが、もう一方の時効の5年です。
この記事は、ふたつの5年を順番にほどきます。金額の仕組み(ひとり分になるといくらか)は夫婦の年金がひとり分になるときにまとめているので、ここでは手続きと期限の話に絞ります。
ひとつめの5年:請求しないと出ない、さかのぼれるのは5年まで
遺族年金は、自動では出ません
遺族年金は、待っていても振り込まれません。請求して、はじめて出ます。遺族厚生年金の窓口は、年金事務所か、街角の年金相談センターです。遺族基礎年金だけを請求する場合は、市区町村が窓口になることもあります。電話で予約してから行くと、相談がスムーズです。
持っていく主なもの
- 亡くなった方とご自分の、年金の番号が分かるもの(基礎年金番号通知書、年金手帳など)
- 戸籍謄本(続柄の確認のため)と、住民票(世帯全員の写し。亡くなった方の住民票の除票が含まれていない場合は別途)
- 死亡が分かる書類(市区町村に出した死亡診断書のコピーなど)
- 振込先になる、ご自分名義の通帳かキャッシュカード
収入を確認する書類など、場合によって必要なものが変わります。細かい書類は、予約の電話のときに確認してください。
さかのぼって受け取れるのは、5年分まで
ここが、ひとつめの5年です。年金そのものを受ける権利(基本権)と、各支払期の年金を受け取る権利(支分権)には、それぞれ5年の時効があります。請求が遅れた場合、原則として5年より前の各回分は時効となり、遡って受け取れるのは直近5年分です。ただし、やむを得ない事情で時効までに請求できなかった場合や、年金記録の訂正、日本年金機構の事務処理の誤りなどによる例外があります。
葬儀や相続の手続きをしていると、時間はあっという間に経ちます。すぐに動けなくても大丈夫です。ただ、落ち着いたら、できるだけ早めに確認してください。
もらい忘れやすいお金:未支給年金
もうひとつ、もらい忘れやすいお金があります。未支給年金です。
年金は、2か月に1度、後払いで振り込まれます。ですから、年金を受けていた方が亡くなった場合、亡くなった月の分まで、まだ受け取っていない年金が残ることがあります。これは、亡くなった方と生計を同じくしていた遺族が受け取れます。順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他の3親等内の親族の順です。
手続きは「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」で、遺族年金と同時にできます。未支給年金にも時効があるので、これも遺族年金と一緒に済ませてしまうのがいちばんです。
いまの制度の「男女差」を、一度だけ見ておく
ふたつめの5年を理解するために、いまの制度の男女差を見ておきます。
- 妻が先に亡くなったとき——一定の要件を満たせば、夫も遺族厚生年金を受け取れます。ただし今の制度では、子のない夫は妻の死亡時に55歳以上である方に限られ、受給が始まるのは原則60歳からです(お子さんがいる場合などに例外があります)。
- 妻だけにある上乗せ——中高齢寡婦加算といい、夫を亡くしたとき40歳以上65歳未満で、生計を同じくする子がいない妻などに、65歳になるまで加算されます。令和8年度は年635,500円。妻を亡くした夫には、つきません。
なお、現行制度でも「5年間だけ」の方はいます。子のない30歳未満の妻が受ける遺族厚生年金は、いまも5年間に限られています。2028年改正は、この有期給付の仕組みを男女共通のものへ広げていくものです。
こうした男女差が、2028年4月から見直されることが決まっています。その中身が、ふたつめの5年です。
ふたつめの5年:「5年で終わる」の正体
2025年の改正で、遺族厚生年金の一部を原則5年間の有期給付にする見直しが決まりました。法律はすでに成立していて、施行は2028年4月の予定です。ただし、全員の話ではありません。対象は、かなり限られています。
対象になるのは
- 2028年4月1日以後に遺族厚生年金の受給権が発生した方のうち、18歳年度末までの子を養育していない場合が基本的な対象です。そのうえで、
- 男性は、60歳未満の方(いま対象外の55歳未満にも受給の対象が広がる一方、60歳未満の給付は原則5年の有期給付になります。55〜59歳の方の現行の給付も、有期に変わります)
- 女性は、まず2028年度末の時点で40歳未満の方から。その後、約20年かけて段階的に、60歳未満まで対象が広がります
18歳になった年度末までのお子さんを育てているあいだは、いまの給付内容が続きます。そのあとで、原則5年間の有期給付などの対象になります。「子がいる人は対象外のまま」ではありません。
影響を受けない方
- 60歳以上で配偶者を亡くし、遺族厚生年金の受給権が発生する方——これまでどおりで、期限はありません
- すでに遺族厚生年金を受け取っている方——影響はありません
- 2028年度に40歳以上になる女性——今回の見直しの対象になりません
ニュースの見出しだけで、不安になる必要はありません。ご自分がどれに当たるかは、この3つで確かめられます。
対象になる方にも、手当てはあります
- 5年のあいだは有期給付加算という上乗せがつき、現在の遺族厚生年金の額の約1.3倍になります
- 障害の状態や収入など一定の条件を満たす方には、5年のあとも最長65歳まで続く給付(継続給付)があります。条件を満たさなければ5年で終わるので、「打ち切って終わりではない」とも「必ず続く」とも言い切れません
- 中高齢寡婦加算も、あわせて段階的に見直されます
細かな内容は、施行が近づいたら最新の情報を確かめてください。この記事も、公式の案内が更新されたら見直します。
「2つの5年」を1枚で
| 時効の5年 | 改正の5年 | |
|---|---|---|
| 何の話か | 請求が遅れたとき、さかのぼって受け取れるのは5年分まで | 2028年4月以降の一部の方の遺族厚生年金が、原則5年の有期給付になる |
| 関係する人 | 原則として、遺族年金を請求するすべての人(未支給年金も原則同じ) | 2028年4月1日以後に遺族厚生年金の受給権が発生した方のうち、子を養育していない60歳未満の男性と、2028年度末に40歳未満の女性から段階的に |
| 関係しない人 | —— | 60歳以上で受給権が発生する方、すでに受給中の方、2028年度に40歳以上になる女性 |
| いつから | いまも | 2028年4月(予定) |
元気なうちに、できること
- 年金の番号が分かるものが家のどこにあるか、お互いに知っておく
- 通帳・保険・大事な書類の場所も同じように共有しておく
- この記事を保存して、必要ならご家族にも共有する
遺族年金の請求は、実際には「書類さがし」から始まります。場所が分かっていれば、手続きの負担をひとつ減らせます。事実婚のパートナーの方は、遺族年金の対象になり得る一方で、事実婚関係と生計維持関係の確認・証明が必要になります。事実婚のふたりの施設選びの「お金の効く・効かない」の項をあわせてどうぞ。
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ひとり分になったとき、年金がいくらになるかの仕組みは夫婦の年金がひとり分になるときへ。年金の受け取り方そのものを考えるときは年金の受け取り方タイプ診断もあります。
「うちの場合はどうなる?」という疑問があれば、質問・リクエスト箱から教えてください。記事の形でお答えしていきます。
出典
- 日本年金機構「遺族厚生年金を受けられるとき」(請求書の提出先・添付書類・時効の注意) (2026年9月7日確認)
- 日本年金機構「年金の時効」(基本権・支分権とも5年で時効) (2026年9月7日確認)
- 日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」(未支給年金を受け取れる遺族の範囲と順位・提出書類) (2026年9月7日確認)
- 日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」(子のない夫は55歳以上・60歳から、中高齢寡婦加算635,500円) (2026年9月7日確認)
- 厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」(2028年4月施行予定・対象になる方と影響を受けない方・有期給付加算約1.3倍・継続給付・こどもがいる場合) (2026年9月7日確認)