誠一の老後メモ

知らないと損をすることを、ひとつずつ。

墓じまい(改葬)の手続き——遺骨を移すには、いまお墓がある市区町村の「改葬許可」が要る。書類と申請の単位は市区町村で違う。改葬は令和6年度に全国で17万6千件

「遠くて墓参りに行けない」「継ぐ人がいない」——そうした理由で、お墓を片づけて遺骨を別の場所に移す墓じまいを考える方が増えています。

墓じまいには、お墓(墓石と区画)を片づけることと、遺骨を移すことの2つが含まれます。このうち遺骨を移すことには、法律で決まった手続きがあります。この記事は、その手続きの順番、必要な書類、移す先の選び方、お金とトラブルの注意点のまとめです。

法律では「改葬」——市区町村の許可が要る

墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)では、お墓や納骨堂に納めた遺骨を、ほかのお墓や納骨堂に移すことを改葬といいます。改葬をするには、いま遺骨がある場所の市区町村長の許可を受けなければなりません(第5条)。許可されると改葬許可証が交付され、移す先の墓地や納骨堂の管理者は、この許可証を受け取るまで遺骨を納めることができません。

申請先は、移す先ではなく、いまお墓がある市区町村です。たとえば地方の実家近くのお墓から東京の納骨堂に移すなら、地方の市町村役場に申請します。郵送で受け付けている市区町村もあります(大田区など)。

改葬は増えています

厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、全国の改葬の件数は次のとおりです。

年度改葬の件数
平成10年度70,263件
平成30年度115,384件
令和元年度124,346件
令和2年度117,772件
令和3年度118,975件
令和4年度151,076件
令和5年度166,886件
令和6年度176,140件

令和6年度は平成30年度の約1.5倍です(令和6年度の数字は、2026年9月に厚生労働省が訂正した後のもの。訂正前は176,105件)。この件数は改葬の件数で、墓じまいをしたお墓の数とは一致しません。1つのお墓に複数の遺骨があることも、墓じまい以外の理由で遺骨を移すこともあるからです。

手続きの順番——6つのステップ

大田区の案内をもとに、一般的な流れを並べます。細かな順番や書式は市区町村で少しずつ違います。

その前に、まず家族と、いまの墓地の管理者(お寺や霊園)に墓じまいを考えていることを話しておくと、そのあとの手続きが進めやすくなります。誰が手続きをするか、遺骨をどこへ移すかを家族で決めておくのが出発点です。

  1. 移す先を決めて「受入証明書」をもらう——新しいお墓や納骨堂の管理者から。墓地の使用許可証や契約書で代えられる市区町村もあります(練馬区)。
  2. 改葬許可申請書を手に入れる——いまお墓がある市区町村の窓口かホームページから。
  3. いまの墓地の管理者に「埋蔵の証明」をもらう——その遺骨が確かにそこに納められていることの証明です。申請書の中の証明欄に記入してもらう形の市区町村もあります。
  4. 申請して、改葬許可証を受け取る
  5. いまの墓地で許可証を見せて、遺骨を取り出す——墓石の撤去と区画の返還は、墓地の管理者や石材店と相談して進めます。
  6. 移す先に許可証を出して、遺骨を納める

必要な書類——申請の単位は市区町村で違う

書類誰が書く・出す
改葬許可申請書申請する人(いまお墓がある市区町村の書式)
埋蔵(収蔵)の証明いまの墓地・納骨堂の管理者
受入証明書移す先の墓地・納骨堂の管理者(使用許可証などで代えられる場合あり)
承諾書(必要な場合だけ)申請する人が墓地の使用者(名義人)でないとき、使用者が書く
  • 申請の単位:江東区は「お骨一柱につき一枚」、世田谷区は「一体につき1通」と、遺骨1体ごとに申請書を出す形です。この場合、両親と祖父母の4体を移すなら4枚です。一方、2体以上なら「死亡者内訳書」を付けてまとめる形の市区町村もあります(練馬区)。埋蔵の証明も、申請書の証明欄に書いてもらう形と、別紙で付ける形があります。
  • 申請書に書くこと:亡くなった方の本籍・住所・氏名、亡くなった日、埋葬や火葬の場所と日、改葬の理由と移す先、申請者と亡くなった方の続柄など。古い遺骨で分からない欄は、空欄にせず「不詳」と書くよう案内している市もあります(仙台市)。
  • 手数料:八王子市と川口市は無料、川西市は許可証1通につき300円(遺骨3体なら900円)。市区町村で違います。
  • 申請する人:いまのお墓の使用者とする市(八王子市・府中市)と、移す先の墓地の使用者とする市(川口市)があります。誰が申請できるかは、いまお墓がある市区町村に確かめてください。
  • 補助:八王子市は、改葬の費用への市の補助金制度は「ありません」と案内しています。

移す先の選び方——許可が要るもの、要らないもの

移す先改葬許可
別のお墓・納骨堂要る
同じ霊園の中の永代供養墓(合葬墓など)要る(川口市・府中市・八王子市)
散骨(海や山にまく)改葬にあたらない、と案内する市がある(八王子市・府中市・川口市)
自宅で保管する改葬の手続きは要らない、と案内する市がある(府中市)。墓地から「遺骨引渡証明書」をもらっておくよう勧めている
遺骨の一部を移す(分骨)改葬にあたらない。墓地の管理者が出す「分骨証明書」で移す

注意したいのは、自宅で保管していた遺骨を、あとでお墓に納めるときです。このときは、自宅がある市区町村で改葬の手続きをすることになり、墓地から受け取った遺骨引渡証明書が必要になると案内されています(八王子市・府中市)。最初に「自宅で一度預かる」形にするなら、証明書をなくさないようにしてください。

散骨には、法律で決まった届出や許可の制度はありません(八王子市)。厚生労働省の研究班がまとめた散骨のガイドラインは、遺骨を形が分からない粉状にすることや、業者が「散骨証明書」を渡すことなどを示しています(法令ではなく、指針です)。同じガイドラインは、地方公共団体の条例なども守るよう求めています。散骨をしてはいけない場所を条例で決めている自治体もあるので、散骨する場所の自治体の決まりを確かめてください。

公営の合葬墓・樹林墓地という選択肢もあります。たとえば東京都の都立霊園は、令和8年度に合葬式墓地や樹林墓地を募集しました(申込は6月12日〜7月3日で終了。使用料は遺骨1体あたり、多磨霊園の樹林墓地で95,000円、小平霊園の合葬式墓地〈直接共同埋蔵〉で58,000円など。都内に3年以上住んでいることなどが条件)。墓じまいで取り出した遺骨を申し込めるかどうかは、霊園ごとの申込みのしおりで確かめてください。

お金とトラブル——「離檀料」の相談も

墓じまいの費用について、公的な平均の統計は見当たりません。かかるお金は、おおむね次の4つに分かれます。

  • 墓石の撤去と区画を元に戻す工事(石材店)
  • 遺骨の取り出し
  • 移す先の費用(新しいお墓、納骨堂、合葬墓の使用料など)
  • 寺院墓地の場合の、お寺へのお礼など

国民生活センターには、「墓」に関する相談が年に1,000件ほど寄せられています(2025年度1,077件)。最近の事例として、菩提寺に墓じまいを頼んだら高額な「離檀料」を請求された、規約などの定めもなく根拠が分からない、という相談が紹介されています。

  • 工事や移す先の費用は、書面で見積もりをもらって比べる
  • お寺には、墓じまいを決める前の早い段階で、事情を話して相談する
  • 請求の根拠が分からない、話し合いが進まないときは、消費者ホットライン188(お住まいの地域の消費生活センターなどにつながります)へ

なお、いまの墓地の管理者が埋蔵の証明を書いてくれない場合について、法律の施行規則は「これにより難い特別の事情のある場合」には「市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面」でよいとしています。困ったときは、いまお墓がある市区町村の窓口に相談してください。

継ぐ人がいないまま放っておくと

使用料が払われず、縁故者も分からないお墓は、無縁墳墓として改葬されることがあります。そのときは、墓地の管理者が官報に載せ、お墓の見やすい場所に立札を1年間立てて申し出を待つ、という手順が施行規則で決まっています。令和6年度の改葬のうち、無縁墳墓等の改葬は3,006件でした。

「いずれ墓じまいをするかもしれない」と思ったら、元気なうちに、家族で誰がお墓を継ぐか(あるいは継がないか)を話しておくと、手続きも話し合いも楽になります。実家の片づけと合わせて考える方は実家じまい・生前整理の順番も参考にしてください。

チェックリスト

  • お墓の使用者(名義人)は誰か。申請する人と違うなら承諾書が要る
  • お墓に何人の遺骨が入っているか(遺骨ごとに書類が要る市区町村もあるので、申請の単位を確かめる)。亡くなった方の名前・亡くなった日が分かるか
  • 別のお墓・納骨堂へ移す場合は、受入証明書や使用許可証など、市区町村が求める書類を確かめる。散骨や自宅保管なら、その後の扱いも決めておく
  • いまお墓がある市区町村の改葬の案内ページで、書式・手数料・郵送の可否を確かめる
  • 墓石の撤去と移す先の費用は、書面で見積もりをもらう。寺院墓地なら早めにお寺に相談する

家族のこと、順番に

実家の片づけは実家じまい・生前整理の順番、家族が亡くなったあとの手続きは期限の順に並べた手続き、思いを残す方法は遺言書の書き方と保管へ。相続した土地を手放す道は相続土地国庫帰属制度にまとめました。

「うちはこうして墓じまいをした」という話は、質問・リクエスト箱から教えてください。

出典

この記事は、法律・厚生労働省の統計・自治体の公表資料にもとづく一般的な情報です。改葬許可の申請書の書式、手数料、申請できる人、郵送の可否は市区町村によって違います。実際の手続きは、いまお墓がある市区町村の窓口でご確認ください。お寺や墓地との費用の話し合いで困ったときは、消費者ホットライン188にご相談ください。