事実婚のまとめ——年金・相続・医療と介護・施設で、何が違うか
婚姻届を出していないふたりは、制度によって扱いがまったく違います。年金と健康保険の法律は「配偶者」に事実婚を含めると書いてあり、遺族年金も扶養も届出婚と同じ土俵。一方で相続と税金の法律は含めていないので、遺言がなければ取り分はありません。医療と介護は住民票の世帯しだい。施設では「ご家族ですか」と聞かれます。この4つを、読む順番に並べました。
並べ方は「効くもの → 効かないもの → 分かれ目 → 現場」の順です。上から読むと、元気なうちに何を整えておけばよいかが見えてきます。
順番に読む
- 事実婚と年金——遺族年金・加給年金・扶養は「婚姻届なし」でも対象になる。法律に「事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」と書いてあるからです。ただし申立書と証明が要り、年金分割は対象が限られ、相手に戸籍上の配偶者がいると壁があります 年金の世界では、事実婚(内縁)のパートナーは「配偶者」として扱われます。国民年金法・厚生年金保険法に「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」と明記されているためです。遺族厚生年金・遺族基礎年金、配偶者加給年金、振替加算、未支給年金、寡婦年金、そして第3号被保険者と健康保険の被扶養者。婚姻届がなくても届出婚と同じ条件で対象になるものを一覧にし、そのために求められる「事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書」、第三者の証明、住民票の「未届」記載、生計維持の年収850万円の線を整理しました。効かないのは、離婚時の年金分割(第3号被保険者だった期間だけ)と、税金の配偶者控除。どちらかに戸籍上の配偶者が残っている「重婚的内縁」は、届出婚が実体を全く失っているときに限って認められます。
- 事実婚と相続——パートナーに相続権はありません。遺言で残せますが、相続税は2割加算・配偶者の税額軽減なし・生命保険の非課税枠なし。家に住み続ける権利、口座、お墓まで、「届出なし」で何が変わるかと、元気なうちにできる5つの備え 年金では「配偶者」として扱われる事実婚のパートナーも、相続では他人です。民法890条の「配偶者」は届出婚だけなので、遺言がなければ財産は相続人(子・親・きょうだい)へ行き、パートナーの取り分はゼロ。遺言で遺贈すれば残せますが、子や親には遺留分があり、受け取った財産の相続税は2割加算、配偶者の税額軽減(1億6千万円)も、小規模宅地の特例も、生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人)も使えません。相続人が誰もいない場合だけ「特別縁故者」として家庭裁判所に分与を求める道があります。住まいは、持ち家なら配偶者居住権が使えない一方、借家なら借地借家法36条で同居者が賃借権を引き継げます。遺言(公正証書または法務局保管)、生命保険の受取人指定、死後事務委任、任意後見、名義の整理——元気なうちにしかできない5つの備えを、根拠つきで整理しました。
- 事実婚と医療・介護のお金——分かれ目は「住民票の世帯」と「医療保険の世帯」。同じ世帯なら高額療養費・高額介護サービス費は合算できるが、介護保険料の段階と上限は相手の課税で上がる。施設の食費・居住費の軽減は、別世帯でもパートナーの課税と預貯金で判定されます 事実婚の医療・介護のお金は、婚姻届の有無ではなく、住民票の世帯と医療保険の世帯で決まります。介護の制度は住民票の世帯、高額療養費は医療保険上の世帯(会社の健康保険なら被保険者と被扶養者)が単位です。同じ世帯なら、高額療養費(同じ医療保険なら)と高額介護サービス費はふたりの自己負担を合算できます。反対に、相手が住民税を払っていると、介護保険料の段階が「世帯非課税」から外れて上がり、高額介護サービス費の上限も24,600円から44,400円に上がります。施設の食費・居住費を下げる負担限度額認定は、介護保険法施行規則が配偶者に事実婚を含めているため、別世帯でもパートナーの課税状況と預貯金(ふたりで1,500万〜2,000万円以下)が見られます。医療費控除だけは、パートナーは「親族」でないので合算できません。何が効いて何が効かないかの一覧と、世帯を同じにするかどうかの考え方を整理しました。
- 事実婚のふたりの施設選び——「ご家族ですか」と聞かれる前に、整えておく3つのこと 籍を入れていないふたりが施設を選ぶとき、身元引受人・医療の同意・お金の場面で「家族の扱い」が確認事項になります。事実婚でも使える制度、使えない制度を整理し、先に整えておく3点セットをまとめました。おひとりさまにも重なる内容です。
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掲載している制度や金額は、各記事の出典と確認日にもとづきます。改定されることがありますので、実際のお手続きの前に最新の内容をご確認ください。