誠一の老後メモ

知らないと損をすることを、ひとつずつ。

夫婦ふたりで施設に入る——入居条件・部屋・お金の「3つの壁」と、ひとりになったあとまで見学で確かめる5つのこと

「入るなら、ふたり一緒に」。ご夫婦なら自然な希望です。ところが施設の仕組みは、基本的に「1人ずつ」でできています。入居の条件も、部屋も、費用も、介護度の判定も、1人ずつ。ここを知らないまま探すと、「一緒に入れると思っていたのに」ということが起きます。

この記事は、ご夫婦(パートナー)でふたり一緒に施設を考えている方に向けて、3つの壁——入居条件・部屋・お金——と、いちばん話しにくい「ひとりになったあと」まで含めて、見学で確かめることを整理します。施設の種類そのものがあいまいな方は、先に8種類の見取り図をどうぞ。

壁1:入居条件が、ふたりで違う

いちばん多いのがこれです。ふたりの介護度が違うと、片方は入れて、片方は入れない施設があります。

種類ふたりで入るときの主な壁
特別養護老人ホーム(特養)原則として要介護3以上が対象で、要支援1・2は利用できません。要介護1・2の方は、認知症や介護者不在などで在宅生活が困難と認められた場合に特例入所の対象になることがありますが、原則は対象外です。入所は1人ずつ判定されます。単純な申込順ではなく、介護の必要度や家族の状況などを考慮して優先順位が決まるため、同じ施設に同じ時期に入れる保証はありません
介護老人保健施設(老健)要介護1以上が対象で、要支援1・2は利用できません。在宅復帰・在宅療養の支援を目的とする施設で、ふたりの長期の住まいを前提にした場所ではありません
介護医療院要介護1以上で、長期の医療・療養が必要な方が対象。お元気なほうの入所先にはなりません
グループホーム認知症があり、要支援2または要介護1以上の方が対象(要支援1は利用できません)。地域密着型サービスのため、原則として施設のある市区町村の住民であることも必要。片方だけが認知症の場合、ふたり一緒は難しいことが多い
ケアハウス60歳以上が対象ですが、夫婦で入居する場合はどちらかが60歳以上であれば可。介護型(特定施設)は要介護認定が前提の施設があります
介護付き有料老人ホーム「自立の方から入れる」施設と「要介護の方専用」の施設があります。ふたりの状態に幅があるなら、前者が中心です
住宅型有料老人ホーム幅広く受け入れる施設が多い一方、介護は外部サービスで支える形。重くなったときの対応は施設によります
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)60歳以上、または要支援・要介護認定を受けている方が対象。ふたりで入居できる住戸を掲げている住宅もあります。介護が重くなったときの対応は差が大きい

まとめると、介護度に差があるふたりが「同じ屋根の下」を目指すなら、介護付き有料(自立から入れるタイプ)・住宅型有料・サ高住・ケアハウスが中心になります。特養やグループホームは、条件を満たすほうだけが入り、もう一方は近くの別の住まい、という形になりがちです。それも一つの選び方ですが、「ふたり一緒」が第一条件なら、最初に施設へそう伝えてください。条件を先に言うほうが、候補は早く絞れます。

壁2:同じ施設でも、同じ部屋とは限らない

有料老人ホームの国の標準指導指針では、居室は個室が原則で、1人あたり13平方メートル以上とされています。ただし、これは国の指針上の基準で、自治体独自の指針や既存施設などへの特例・経過措置があるため、実際の居室の広さは重要事項説明書で確認してください。夫婦向けに2人で使える居室を用意している施設もありますが、数は限られ、いつも空いているとは限りません。特養は多床室でも個室でも1人ずつの入所です。同じ施設に入れても、「隣の部屋」「別の階」になることは珍しくありません。

2人部屋があっても、確かめたいのは「その先」です。片方の介護が重くなったとき、介護専用の居室へ移る決まりになっているのか。片方が亡くなったとき、残った側は1人部屋へ移るのか、そのまま2人部屋にいられるのか、そのとき費用はどう変わるのか。重要事項説明書・入居契約書・管理規程に書かれていることがあります。書かれていなければ質問し、答えは書面でもらってください。

壁3:お金は「ふたり分の合計」で見る

パンフレットに書かれた月額が「1人分」なのか「1室分」なのかを、まず確認してください。施設によって、家賃は1室単位、食費や管理費は1人単位など、表示のしかたが違います。ふたりで入る費用は単純に2倍とは限らないので、何が1室分で、何が1人ずつなのかを分けて見ます。

  • 居室にかかる費用(家賃相当・管理費)——2人部屋なら1室分で済む施設もあれば、2人分の設定になっている施設もあります。
  • 食費・日用品・上乗せの介護費用——1人ずつかかります。
  • 介護保険の自己負担(所得に応じて1〜3割)——1人ずつ。ただし月ごとの上限(高額介護サービス費)は世帯単位でも計算され、超えた分は申請すると戻ります。対象は介護サービスの自己負担分だけで、食費・居住費・日常生活費のほか、福祉用具購入費など一部の負担も対象外です。
  • 入居金——2人分なのか、2人部屋で1室分なのか。途中で退去したとき・亡くなったときにいくら戻るか(償却の仕組み)は、1人ずつ確認します。

特養・老健・介護医療院で使える食費・居住費の軽減(負担限度額認定)は、「世帯全員(世帯を分けた配偶者も含む)が住民税非課税」という要件に加えて、本人と配偶者の預貯金などの資産要件や、年金収入などによる段階の判定があります。ご夫婦の一方だけが入所して住民票を分けても、配偶者の課税状況や資産は判定の対象です。非課税かどうかだけでは使えるかどうか判断できませんが、最初の分かれ目ではあります。目安は住民税非課税ライン 判定で確かめられます。

そして、払う側の収入は年金ふたり分です。片方が亡くなると、年金はひとり分になります。モデル年金のケースでは、ふたりのときのおよそ6割です。そのとき、残った側がひとりで払い続けられる月額なのか——ここまで見て、はじめて「ふたりで入る」お金の話になります。仕組みは夫婦の年金がひとり分になるときにまとめました。

「ひとりになったあと」を、先に考えておく

ふたりで入る施設選びで、いちばん大事で、いちばん話しにくいのがここです。3つの場面があります。

  1. 片方の介護が重くなったら——住み替えが必要になる施設なのか、同じ建物の中で介護専用の居室へ移れるのか。そのとき、もう一方はそこに残れるのか。施設ごとの「その先」は介護度が進んだら、住み替え?で整理しています。
  2. 片方が入院したら——部屋は確保されるのか、その間の費用はかかるのか、どのくらいの入院で契約が終わるのか。
  3. 片方が亡くなったら——残った側の部屋・費用・年金。上の3つの壁が、一度に変わります。

事実婚のパートナーの方は、「ご家族ですか」と聞かれたときの備えが加わります。2人部屋の入居を「夫婦に限る」としている施設もあるので、事前に確認してください。整えておくことは事実婚のふたりの施設選びにまとめています。

見学で確かめる、5つのこと

パンフレットには「ふたりで入る場合」のことはあまり書いてありません。見学で、口頭で、この5つを聞いてください。

  1. 「ふたりとも、今の状態で入居条件を満たしますか。介護度が変わったあとも住み続けられますか」
  2. 「2人で使える居室はありますか。空きはありますか。別々の部屋になるのはどんな場合ですか」
  3. 「ふたり分の月額の合計を、含まれるもの・含まれないものを分けて、書面でいただけますか」
  4. 「一方が入院・住み替え・亡くなったとき、残る側の部屋と費用はどうなりますか」
  5. 「一方だけ先に入ることはできますか。あとからもう一方が入る場合の条件は何ですか」

答えを聞いたら、重要事項説明書・入居契約書・管理規程で確かめます。口頭の説明と書面が食い違っていないかを見るのが、いちばん確かな確認です。そして見学は必ず2か所以上。比べる物差しがないまま契約しないためです。

ひとりで抱えなくて大丈夫です

地域包括支援センターはすべての市区町村にあり、無料で相談できます。ふたりに別々のケアマネジャーがついている場合は、「ふたり一緒に」という希望を両方に伝えておいてください。担当が違うと、片方ずつの計画になりがちだからです。

「ふたりで入りたい」は、わがままではありません。施設に伝えるべき、第一条件です。この記事を保存して、見学のときにそのまま使ってください。

あわせて読む・確かめる

施設の種類を整理するなら8種類の見取り図、片方の介護が進んだときの住み替えは見学で聞く3つの質問、事実婚のパートナーの備えは事実婚のふたりの施設選びへ。費用の分かれ目になる住民税非課税ライン 判定もあります。

「うちの場合はどうなる?」という疑問があれば、質問・リクエスト箱から教えてください。記事の形でお答えしていきます。

出典

施設の入居条件・費用・サービスは、施設や自治体によって大きく異なります。契約の前に必ず書面(重要事項説明書など)で確認し、迷ったときは地域包括支援センターや担当のケアマネジャーにご相談ください。