誠一の老後メモ

知らないと損をすることを、ひとつずつ。

医療費控除の対象になるもの・ならないもの——介護の施設は特養だけ2分の1、デイサービスは訪問看護などと組み合わせた月だけ。おむつ代は「おおむね6か月以上寝たきり」なら証明書で対象。通院のタクシー代とガソリン代は原則ダメ

医療費控除は、「1年間に払った医療費が10万円を超えたら申告できる」と覚えている方が多い制度です。ただ、実際に損をしやすいのは金額の線ではなく、何が対象で何が対象外かを知らないことのほうです。特に介護が始まると、対象になるものが一気に増えます。

この記事は、対象・対象外を一覧にしたものです。年金の確定申告そのものの考え方は年金と確定申告に、入院の費用は入院したときのお金に書きました。

まず計算式——「10万円」は全員ではありません

医療費控除の額は、次の式です(最高200万円)。

(1年間に払った医療費)−(保険金などで補てんされる金額)−(10万円、ただしその年の総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%)

年金だけで暮らす方は、総所得金額等が200万円未満になることが多く、その場合の線は10万円ではなく「総所得金額等の5%」です。たとえば65歳以上で年金収入が年180万円なら、公的年金等控除110万円を引いた所得は70万円なので、線は3万5千円。10万円だと思って諦めていた方が、実は対象だったということが起こります。

「保険金などで補てんされる金額」には、高額療養費高額介護サービス費、生命保険の入院給付金などが入ります。差し引くのはその給付の目的になった医療費からで、引ききれない分をほかの医療費から差し引く必要はありません。

病院・薬局——対象と対象外

費用医療費控除注意
診察・検査・手術・入院の費用、保険が効く治療高額療養費や入院給付金は差し引く
病院で出される食事入院代に含まれるため。出前や外食は対象外
付添人を頼んだときの付添料所定の料金以外の心付けは除く。親族に付き添ってもらった場合の「謝礼」は対象外
医師の処方による薬、治療のための市販薬予防や健康増進のためのビタミン剤などは対象外
寝巻き・タオル・洗面具などの身の回り品×入院に際して買っても対象外
差額ベッド代本人や家族の都合だけで個室に入ったときは対象外。治療上の必要による個室なら対象
親族が付き添うときの、その親族の食事代×
診断書などの文書料×治療そのものの費用ではないため
健康診断・人間ドックの費用×ただし診断の結果、重大な疾病が見つかり引き続き治療を受けた場合は、その健康診断等の費用も対象になる

通院の交通費——電車とバスは対象、車とタクシーは原則対象外

  • 電車・バスなどの公共交通機関の運賃——対象。付き添いが必要な人に付き添う家族の交通費も対象になります
  • タクシー代——公共交通機関が利用できない場合を除き、対象になりません(足を骨折している、陣痛が始まった、といった事情があれば対象)
  • 自家用車のガソリン代・駐車場代——対象になりません

電車やバスは領収書が出ないので、「いつ・どこからどこへ・いくら」をノートに書いておけば足ります。通院の回数が多い方は、これだけで年に数万円になることがあります。

介護保険のサービス——ここが見落とされます

施設に入っている場合

施設医療費控除の対象対象外
特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設・地域密着型も同じ)施設サービスの対価(介護費・食費・居住費)として払った自己負担額の2分の1日常生活費、特別なサービス費用
介護老人保健施設(老健)全額同上
介護医療院全額同上

特養だけ2分の1なのは、老健や介護医療院が医療の色合いの濃い施設として扱われるのに対し、特養は生活の場としての性格があるためです。食費と居住費まで対象に入るのが大事な点で、月13万円払っていれば、特養で年約78万円、老健なら年約156万円が対象になります。

なお、これらの施設が発行する領収証には、基本的に医療費控除の対象となる金額が記載されています。自分で計算する必要はありません。領収証の「医療費控除対象額」の欄を見てください。

高額介護サービス費が支給される場合は、その対象になった介護費を払った年分の医療費から差し引きます(戻ってきた年ではありません)。このとき、特養(指定介護老人福祉施設・地域密着型)の施設サービス費の自己負担だけに対する高額介護サービス費は、その2分の1に相当する額を差し引きます。対象になる費用がもともと2分の1だからです。老健と介護医療院は、支給される額の全額を差し引きます。

申告のときにまだ金額が確定していない場合は、見込額で計算してかまいません。あとで確定した額と違っていたときは、更正の請求か修正申告で直します。高額療養費や生命保険の入院給付金も同じ扱いです。

有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、これらの施設サービスではないので、施設に払う家賃や食費は対象外です。ただし、そこで訪問看護などの医療系サービスを使っていれば、その分は下の「在宅」の扱いになります。

在宅でサービスを使っている場合

在宅は「医療系か福祉系か」で3つに分かれます。

区分サービスの例医療費控除
①医療系訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導(医師等による管理・指導)、通所リハビリテーション(医療機関でのデイサービス)、短期入所療養介護(医療型ショートステイ)など○ 対象
②福祉系訪問介護(生活援助中心型を除く)、訪問入浴介護、通所介護(デイサービス)、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、短期入所生活介護(ショートステイ)など①と併せて利用する月だけ対象
③対象外訪問介護(生活援助中心型)、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、特定施設入居者生活介護、福祉用具貸与 など× 対象外

②の「①と併せて利用する場合」とは、1か月単位のケアプランに医療系サービスが位置づけられている月のことです。つまり、デイサービスだけを使っている月は対象になりませんが、同じ月に訪問看護も入っていれば、デイサービスの自己負担も対象になります。これを知らずに申告していない方が、とても多い項目です。

こちらも、事業者が発行する領収証に医療費控除の対象となる金額が記載されることになっています。金額が書かれていないときは、領収証を発行した介護サービス事業者に確認してください。そもそも対象になるサービスかどうかが分からないときは、ケアプランを作っているケアマネジャーにも確認できます。

おむつ代——証明書があれば対象

傷病によっておおむね6か月以上にわたり寝たきりで、医師の治療を受けている方のおむつ代は、治療を受けるため直接必要な費用として医療費控除の対象になります。必要なのは、医師が発行する「おむつ使用証明書」です。

  • 確定申告書に添付するか、提出のときに提示します
  • ①証明年月日、②証明の名称、③証明者の名称(医療機関名など)を医療費控除の明細書の余白に書けば、添付や提示を省略できます。省略した証明書は、申告期限等から5年間の保存が必要です
  • 令和7年1月1日以後に令和6年分以後の確定申告書を提出する場合は、おむつ使用証明書に代えて、市町村が主治医意見書の内容を確認した書類、または主治医意見書の写しでも差し支えありません。ただし、意見書の「寝たきり度」や「尿失禁の発生可能性」の記載、要介護認定の有効期間などの条件があり、1年目と2年目以降で条件が違います

市区町村によっては、おむつの現物支給や購入費の助成があります。助成を受けた分は「補てんされる金額」として差し引いてください。

そのほか、対象になるもの

  • 補聴器——医師(補聴器相談医)の診療情報提供書がある場合。手順は補聴器と集音器の違いに書きました
  • 入れ歯・インプラント——治療として一般的に行われる範囲であれば対象。歯列矯正は、発育段階の子の歯列矯正など、治療として必要な場合に対象
  • あんま・はり・きゅう・柔道整復——治療のためなら対象。疲れを取る目的や体調を整える目的は対象外
  • 介護福祉士等による喀痰吸引等——対象外のサービス(医療系と組み合わせていない福祉系、または③のサービス)の中で行われた場合でも、その自己負担額の10分の1が対象になります。領収証の対象額を確かめてください
  • おおむね6か月以上寝たきりの方の在宅療養の世話の費用(家政婦などに療養上の世話を頼んだ場合)

申告の仕方——5年さかのぼれます

  1. 医療費控除の明細書を作ります。領収書の添付は不要ですが、申告期限等から5年間の保存が必要です
  2. 健康保険組合などから届く医療費通知(「医療費のお知らせ」)を添付すると、明細書の記載を簡単にできます。ただし通知に載るのは保険が効いた分だけなので、通院の交通費やおむつ代は自分で書き足します
  3. 市販薬のセルフメディケーション税制とはどちらか一方しか使えません。両方の金額を出して、有利なほうを選びます
  4. 申告していなかった年の分は、その年の翌年1月1日から5年間さかのぼって還付申告ができます。2026年(令和8年)中なら2021年(令和3年)分まで戻れますが、2021年分の期限は2026年12月31日です。年が明けると1年分ずつ落ちていくので、心当たりがあれば早めに
  5. 所得税だけでなく住民税の所得割も下がります。住民税の課税所得で判定する75歳からの窓口負担の割合などに効くことがあります。ただし介護保険料の段階は「合計所得金額」などで判定するため、医療費控除だけでは通常下がりません(非課税ライン判定

家族の分をまとめられる——ただし「生計を一にする」

医療費控除は、自分の分だけでなく「自己と生計を一にする配偶者やその他の親族」のために払った医療費も合算できます。同居は条件ではなく、別居していても生活費を送っていれば生計を一にすると扱われます。

ただし、申告できるのは原則として実際にその医療費を支払った人です。申告のときに「所得の高い人」を自由に選べるわけではありません。これから先の支払いを所得の高い人が負担すれば、税率が高いぶん控除の効果が大きくなる場合があります。

注意が1つ。ここでいう配偶者・親族は税法上の配偶者・親族なので、事実婚のパートナーの医療費は合算できません(事実婚と医療・介護のお金)。

今日できること

  1. 去年1年分の領収書を箱にまとめる——病院、薬局、介護事業者、施設、通院の交通費のメモ
  2. 介護の領収証の「医療費控除対象額」の欄を見る。書いていなければ事業者に確認する
  3. デイサービスを使っている月に訪問看護や通所リハビリが入っているか、ケアプラン(サービス利用票)で確かめる
  4. 寝たきりの家族がいるなら、次の受診でおむつ使用証明書を相談する
  5. 総所得金額等が200万円未満なら、線は10万円ではなく5%。もう一度計算してみる

医療と介護のお金を、順番に

入院の費用は入院したときのお金、年金の確定申告そのものは年金と確定申告へ。介護費用の全体像は介護にいくらかかるか、施設の月額は老人ホームの費用はいくらかで。手取りの計算は年金の手取り計算、住民税が非課税かどうかは非課税ライン判定をどうぞ。

「これは対象になるのか」という疑問は、質問・リクエスト箱から教えてください。

このテーマをまとめて読む:年金のまとめ老後資金のまとめ

出典

この記事は、国税庁の公表資料にもとづく一般的な情報です。医療費控除の対象になるかどうかは、治療の目的や個別の事情で判断が分かれることがあります。実際の申告の前に、国税庁の確定申告書等作成コーナー、税務署、または税理士にご確認ください。