定年前後の保険の見直し——世帯の保険料は年35.3万円、世帯主55〜59歳で40.7万円が最多。先に高額療養費・遺族年金・介護保険を数え、減らすなら解約の前に「払済」「延長」も。乗り換えは新しい保障が始まってから
定年が近づくと、家計の見直しで最初に目に入るのが保険料です。子どもが独立した、住宅ローンを払い終えた、収入が給料から年金に変わる——必要な保障が変わりやすい時期だからです。
ただ、保険は「減らせば得」という単純なものでもありません。この記事は、公的な保障を先に数える → 何に備える保険かを書き出す → 減らし方を選ぶ、の順番で整理します。特定の保険をすすめたり、やめるようすすめたりするものではありません。
みんな、いくら払っているか
生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」(2024年度・世帯員2人以上の世帯)では、次のとおりです。
- 生命保険の世帯加入率は89.2%(民間の生命保険のほか、簡保・JA共済・県民共済や生協の共済を含む)
- 生命保険(個人年金保険を含む)に加入している世帯が1年間に払い込む保険料は、平均35.3万円(月にすると3万円ほど)
- 世帯主の年齢別では、55〜59歳の世帯が40.7万円で最も高い
年35万円は、10年で350万円です。老後の固定費のなかで、見直す余地があるかどうかを一度確かめる価値のある額です(老後資金はいくら必要か)。
ステップ1——公的な保障を先に数える
民間の保険は、公的な保障で足りない部分を埋めるものです。先に「国の制度でどこまで出るか」を知っておくと、保険の要・不要を落ち着いて考えられます。
| 備えたいこと | 公的な保障 | 詳しく |
|---|---|---|
| 病気・けが | 高額療養費(1か月の医療費の自己負担に上限。70歳以上は外来だけの上限もある) | 医療費の上限 |
| 入院の食事・差額ベッド | 高額療養費の対象外。食事代は1食の額が決まっていて、差額ベッド代は同意した場合だけ | 入院したときのお金 |
| 亡くなったあとの家族 | 遺族年金(夫婦の年金は「ひとり分」になる) | 夫婦の年金が、ひとり分になるとき |
| 介護 | 介護保険(自己負担1〜3割、月の上限あり) | 介護にいくらかかるか |
実際の入院で、どれくらい自己負担があったか。生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(2025年度)では、過去5年間に入院して自己負担を払った人の直近の入院の自己負担は平均18.7万円、1日あたりでは平均24,300円、入院日数は平均16.0日でした(費用と日数は集計の対象が少し違うので、掛け算して使う数字ではありません)。この自己負担には、治療費のほか食事代・差額ベッド代、交通費や衣類・日用品なども含まれ、高額療養費を使った人は使った後の額です。平均なので、人によって大きく違います。
この数字を、貯蓄で払えるかと照らし合わせるのが最初の一歩です。貯蓄で払えるなら保険の役割は小さく、払えないなら保険の役割は大きい、という考え方です。
ステップ2——いまの保険を書き出す
保険証券か、毎年届く「契約内容のお知らせ」を並べて、1枚の表にします。
- 何に備える保険か——死亡・医療・がん・介護・貯蓄(個人年金など)
- 保障はいつまでか——「定期」なら何歳で終わるか。更新があるなら更新後の保険料
- 保険料はいつまで払うか——60歳・65歳で払込みが終わる契約か、一生払う契約か
- 特約——主な契約に付けている入院・通院・三大疾病などの特約
- いま解約したらいくら戻るか(解約返戻金)——保険会社に問い合わせると分かります
書き出すと、同じ入院に2つの保険から出る「重なり」や、子どもが独立したのに大きいままの死亡保障に気づくことがあります。
ステップ3——減らし方は、解約だけではない
| 方法 | どうなるか | 気をつけること |
|---|---|---|
| 払済保険 | 保険料の払込みをやめて、保険期間はそのまま、保障額の少ない保険(同じ種類の保険または養老保険)に変える | 付けている各種特約は原則として消える(リビング・ニーズ特約のように続くのが一般的なものもあるので、契約ごとに確認) |
| 延長(定期)保険 | 保険料の払込みをやめて、その時点の解約返戻金をもとに、死亡保障だけの定期保険に変える。死亡保険金はもとの保険と同額 | 保険期間が短くなることがある。付けている各種特約は消える |
| 解約 | 保険をやめて、解約返戻金を受け取る | 返戻金は通常、払い込んだ保険料の総額より少ない。一度解約した保険は元に戻らない |
生命保険文化センターは、解約を「最後の手段」と説明しています。どの方法が使えるかは契約によって違うので、保険会社に確認してください。
なお、保険料を減らす方法ではありませんが、一時的にお金が必要なときは契約者貸付という仕組みもあります。解約返戻金の一定の範囲内でお金を借りられ、保険は続きます。ただし利息(複利)がつき、返さないと元利金が膨らみます。元利金が解約返戻金を超え、保険会社から通知された金額を期日までに払い込まないと、保険は失効します。
生命保険料控除も、少し変わる
保険を減らすと、所得税・住民税の生命保険料控除も減ることがあります。2012年以降の契約なら、一般・介護医療・個人年金の3つの枠それぞれで所得税は最高4万円、住民税は最高2万8千円、合計で所得税12万円、住民税7万円までです(令和8年分からは、23歳未満の扶養親族がいる人の新しい契約の一般生命保険料控除は、所得税で最高6万円になります。合計12万円の上限は変わりません)。控除がなくなって増える税金は、控除額に税率をかけた分です。たとえば所得税の税率が5%、住民税が10%の人が、1つの枠の控除(所得税4万円・住民税2万8千円)をまるごと失うと、税金は合わせて年5千円ほど増えます(所得税には復興特別所得税も加わります)。保険料の減り方と並べて考えてください。
乗り換えは「新しい保障が始まってから」
「いまの保険をやめて、新しい保険に入り直しましょう」と勧められることがあります。乗り換え自体は悪いことではありませんが、生命保険文化センターは次の点を挙げています。
- 契約するときの年齢が上がるので、保険料が割高になることがある
- 健康状態によっては、新しく契約できないことがある
- だから、新しい保険の契約が成立してから、古い保険を解約するなど慎重に
もうひとつ、保障が始まる日にも注意が要ります。たとえばがん保険は、一般的に契約してから90日の待ち期間が過ぎてから保障が始まり、その間にがんと診断されても対象になりません。新しい保険の成立だけでなく、保障が始まる日・待ち期間・保障の条件を確かめてから、古い保険の解約を判断してください。
保険業法は、不利益になる事実を告げずに、いまの契約をやめさせて新しい契約を申し込ませることを禁じています。いまの契約を下取りにして新しい契約に替える「転換」を勧めるときは、書面で説明することが義務づけられています。勧められたら、「いまの契約のままと比べて、何が不利になりますか」と聞いてかまいません。
誰に相談するか
自分の年金額や遺族年金の見込みは年金事務所、税金は税務署。そのうえで、保険をどう組み直すかを誰かと一緒に考えたいときの相談先は、老後のお金は誰に相談するかにまとめました。売る立場ではない相談先(J-FLECなど)と、保険代理店が運営する無料のFP相談があり、立場が違います。
保険代理店の無料相談の例には、ほけんNaviせつやくんのFP無料相談(PR)があります。約50社の保険を扱う代理店で、相談料が無料なのは保険会社からの契約手数料で運営しているためと案内しています。使うなら、ステップ2で作った表を持って行き、「なぜこの商品か」を聞いて、その場では決めずに持ち帰る——この順番がおすすめです。
今日できること
- 保険証券か「契約内容のお知らせ」を全部出して、1枚の表にする
- それぞれの解約返戻金と、払済・延長にした場合の保障を保険会社に問い合わせる
- 入院したときの自己負担(平均18.7万円)を、貯蓄で払えるか考える
- 夫婦なら、どちらかが亡くなったあとの年金額を年金事務所で確かめる
- 解約や乗り換えは、新しい保険の保障が始まる日と条件を確かめてから。急がない
公的な保障から、順番に
医療費の上限は医療費の上限と高額療養費 かんたん目安計算、入院の食事代や差額ベッドは入院したときのお金、残された家族の年金は夫婦の年金が、ひとり分になるときへ。相談先の選び方は老後のお金は誰に相談するかをどうぞ。
「見直してこうなった」という話は、質問・リクエスト箱から教えてください。
このテーマをまとめて読む:老後資金のまとめ
出典
- 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」速報版(世帯員2人以上の一般世帯:世帯加入率は全生保で89.2%、生命保険加入世帯における生命保険〈個人年金保険を含む〉の年間払込保険料〈全生保〉35.3万円、世帯主年齢別では55〜59歳で最も高く40.7万円) (2026年9月27日確認)
- 生命保険文化センター「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査」(直近の入院時の自己負担費用の平均18.7万円、1日あたり平均24,300円、入院日数の平均16.0日。自己負担費用は治療費・食事代・差額ベッド代に交通費・衣類・日用品などを含み、高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額。集計対象は過去5年間に入院し自己負担費用を支払った人) (2026年9月27日確認)
- 生命保険文化センター「保険料の払込みを中止して、保障を継続する方法は?」(延長〈定期〉保険・払済保険、付加している各種特約は消滅、ただしリビング・ニーズ特約は払済保険で継続するのが一般的) (2026年9月27日確認)
- 生命保険文化センター「契約者貸付制度とは?」(解約返戻金の一定範囲内で貸付け、利息〈複利〉、元利金が解約返戻金を超えた場合、通知された金額を所定の期日まで払い込まないと失効) (2026年9月27日確認)
- 生命保険文化センター「解約は最後の手段」(解約返戻金は通常、払い込んだ保険料総額より少ない、一度解約した生命保険は元に戻らない) (2026年9月27日確認)
- 生命保険文化センター「生命保険の契約にあたっての手引 その3」(乗り換えは契約年齢が上がり保険料が割高になる場合や健康状態によって新たに契約できない場合がある、新しい契約成立後に解約するなど慎重に、転換を勧める場合の書面説明の義務) (2026年9月27日確認)
- 生命保険文化センター「がん保険」(一般的に契約してから90日〈待ち期間〉経過後に保障が開始、この期間中にがんと診断されても保障の対象にならない) (2026年9月27日確認)
- 保険業法 第300条第1項第4号(不利益となるべき事実を告げずに既に成立している保険契約を消滅させて新たな保険契約の申込みをさせる行為等の禁止) (2026年9月27日確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.1140「生命保険料控除」(新契約は各控除の上限4万円、3つの控除の合計の上限12万円、令和8年分以降は23歳未満の扶養親族を有する場合の新生命保険料の控除額は一律60,000円が上限) (2026年9月27日確認)
- 生命保険文化センター「生命保険料控除の限度額は?」(各控除の適用限度額は所得税4万円・住民税2.8万円、制度全体で所得税12万円・住民税7万円) (2026年9月27日確認)
- ほけんNaviせつやくん「よくある質問」(相談は無料、保険会社からの契約手数料などで運営)※事業者の案内 (2026年9月27日確認)