誠一の老後メモ

知らないと損をすることを、ひとつずつ。

医療費の上限が令和8年8月から変わりました——上がっただけではありません

ひと月の医療費が100万円かかったとします。70歳以上・一般区分の方なら、実際に払うのは6万1,500円です。高額療養費という制度で、自己負担に上限があるからです。

この制度が、令和8年8月から変わりました。月ごとの上限は引き上げられましたが、上がっただけではありません。同時に「年間の上限」という新しい仕組みができ、長く治療を続ける方の「多数回該当」は据え置かれています。何が変わって、何が変わらなかったのかを整理します。

▶ この内容は動画でも解説しています:医療費の上限が8月から変わりました(YouTube・約10分)

まず、しくみのおさらい

高額療養費は、ひと月に払う医療費(保険がきく分)に上限をつける仕組みです。上限を超えて払った分は、あとから戻ってきます。上限は所得によって決まります。

70歳以上の方は、上限が2つに分かれます。外来だけを見る上限(一人ずつ計算)と、入院を含む上限(世帯ごと)です。通院だけの月は、低いほうの外来の上限が使われます。

ひとつ、落とし穴があります。上限は月の1日から末日で区切って計算されます。月末に入院して月初に退院すると2つの月に分かれ、同じ治療でも合算してもらえません。

① 上がったもの:月ごとの上限

区分(70歳以上)見直し前令和8年8月から
一般:外来(個人ごと)月 18,000円22,000円
一般:入院を含む(世帯ごと)月 57,600円61,500円
住民税非課税:外来月 8,000円11,000円
住民税非課税:入院を含む月 24,600円25,700円
非課税で所得が一定以下:入院を含む月 15,000円15,700円

上がった幅はどの区分でも数千円の範囲で、所得が低い区分ほど上げ幅は抑えられています。所得が低いほど負担が軽い、という形そのものは変わっていません。

② 新しくできたもの:年間の上限

今回いちばん大きな変更はこちらです。これまで上限はひと月ごとにしかありませんでしたが、8月からは1年分の合計にも上限ができました。達したあとは、それ以上払わなくてよくなります。

  • 一般区分(〜年収約370万円):年 53万円(外来だけなら年 21万6千円)
  • 住民税非課税:年 29万円(外来だけなら年 9万6千円)
  • 非課税で所得が一定以下:年 18万円

これは、毎月の上限には届かないけれど治療が長く続く——月ごとに見ると軽く、年で見ると重い——という方のための仕組みです。これまでは救いのなかった層です。

ここで気づいていただきたい数字があります。非課税の方の外来上限は8千円から1万1千円に上がりましたが、年間上限は9万6千円。8千円×12ヶ月=ちょうど9万6千円です。つまり外来については、毎月上限まで使う方の1年の負担は変わっていません。これは偶然ではなく、厚生労働省の資料に「毎月現在の上限額まで利用される方の負担は変わらない」と明記された、意図された設計です。

③ 変えなかったもの:多数回該当

直近12ヶ月で4回以上上限に達すると、4回目からは上限がさらに下がる「多数回該当」という仕組みがあります。この金額は今回据え置きです。

  • 一般区分:月 44,400円のまま
  • 住民税非課税:月 24,600円のまま

短い治療には少し重く、長い治療には手厚く、という形に寄せられた見直しだと言えます。

実際いくら払うのか

入院してひと月の医療費が100万円かかった場合、支払いの上限はこうなります。

一般区分61,500円
住民税非課税25,700円
非課税で所得が一定以下15,700円

一般区分と非課税では、ひと月で3万5,800円、倍以上の差があります。年金の繰下げの記事で「年金を増やすと住民税非課税から外れることがある」とお話ししましたが、外れると医療費の上限もここまで変わる、ということです。

ひとつ注意があります。高額療養費の対象は健康保険がきく分だけです。個室にしたときの差額ベッド代や、入院中の食事代は対象外で、別に支払います。

窓口で立て替えずに済む方法

この制度は本来「いったん払って、あとから戻る」仕組みですが、事前に手を打てば、窓口の支払いを最初から上限までに抑えられます。やり方は2つで、どちらでも結果は同じです。

  1. マイナ保険証を窓口で使う
  2. 限度額適用認定証を事前にもらっておく(国民健康保険・後期高齢者医療の方は市区町村の窓口。入院が決まったら先に動いておくと安心です)

知っておくと得な2つのこと

世帯で合算できます。70歳以上の方は、同じ世帯の医療費を足して上限と比べられます。ご夫婦それぞれでは届かなくても、合わせると届くことがあります。ただし条件は「同じ世帯」かつ「同じ医療保険」。ご主人が75歳を過ぎて後期高齢者医療に移り、奥様がまだ国民健康保険——この形になると合算できません。75歳をまたぐご夫婦はご注意ください。

2年さかのぼれます。高額療養費を請求できる期間は2年あります。過去に高い医療費を払った心当たりがあれば、今からでも申請できます。ただし、黙っていても戻ってはきません。

令和9年8月に、もう一度変わります

令和9年8月からは所得区分がさらに細かく分かれ、年収200万円未満の課税世帯では多数回該当が44,400円から34,500円に下がる予定です。非課税のすぐ上にいる層を手厚くする方向です。

今日から確かめられること

  1. ご自分がどの所得区分に当たるか(住民税が非課税かどうかが大きな分かれ目です)
  2. マイナ保険証が窓口で使える状態になっているか
  3. 過去2年に、高い医療費を払った心当たりがないか

この記事の金額は令和8年8月〜令和9年7月のものです。所得区分はご自身の状況で変わります。正確なところは、お住まいの市区町村の窓口や、加入している医療保険でご確認ください。

ご自身の場合の目安を計算できます

所得区分と医療費を入れると、その月に支払う目安・年間上限・多数回該当をその場で確かめられます:高額療養費 かんたん目安計算(70歳以上)。入力した内容は保存されません。

この記事は一般的な情報をまとめたもので、診断や治療を目的としたものではありません。症状が続くとき、痛みが強いときは、自己判断せず医師にご相談ください。