入院したときのお金——高額療養費の対象外が3つあります。一般の病床なら食事は1食550円(令和8年6月から)、差額ベッドは1人室で1日平均8,625円。ただし同意書がなければ差額ベッド代は求められません
入院が決まると、いちばん心配なのはお金です。ここで押さえておきたいのは、医療費そのものは高額療養費で月の上限までに収まること、そしてその上限の外側に3つの費用があることです。請求書を見て驚くのは、たいていこの外側の3つです。
| 費用 | 高額療養費の対象 | 目安 |
|---|---|---|
| 治療・検査・手術・薬(保険が効くもの) | ○ 月の上限まで | 上限額は所得区分で決まる(令和8年8月からの上限額) |
| 食事代 | × 対象外 | 1食550円(令和8年6月から)。3食で1日1,650円、30日で約5万円 |
| 差額ベッド代(特別療養環境室) | × 対象外 | 1人室の1日平均8,625円(令和6年8月・全国)。ただし請求できない場合がある |
| 日用品・テレビカード・洗濯代など | × 対象外 | 病院と内容による |
まず入院前に——窓口の支払いを上限までにする
高額療養費は、いったん窓口で自己負担分(1割・2割・3割のいずれか)を払い、月の上限を超えた分があとから戻るのが基本の形です。ただし、窓口での支払いを最初から上限額までにする方法があります。
- マイナ保険証を使う——顔認証付きカードリーダーで「限度額情報の提供」に同意すれば、認定証がなくても窓口負担が上限までになります
- 限度額適用認定証をもらう——マイナ保険証を使わない場合に、加入している医療保険(市区町村の国保、後期高齢者医療、会社の健康保険)に申請して交付を受け、入院時に窓口へ出します
ただし、そもそも認定証が要らない区分もあります。70歳から74歳の「一般」や「現役並みⅢ」などは、マイナ保険証を使わなくても、保険証(資格確認書)だけで窓口負担が上限までになります。ご自身に認定証が必要かどうかは、加入している医療保険に確認してください。
住民税非課税の方は、これに加えて食事代も下がります(次の節)。ここで「持参」と「申請」を分けて考えてください。マイナ保険証を使える医療機関では、認定証を窓口へ持っていく必要はありません。一方で、減額の認定を受けるための申請が要るかどうかは、加入している医療保険によって違います。全国健康保険協会(協会けんぽ)は低所得の区分について、マイナ保険証を使う場合でも申請を求めています。市区町村の国民健康保険では、オンラインで区分を確認できれば事前の申請が要らない扱いもあります。申請の要否は、加入している医療保険(市区町村の国保・後期高齢者医療の窓口、会社の健康保険)に確認してください。ご自身が非課税かどうかは住民税非課税ライン判定で目安が分かります。
① 食事代——一般の病床なら、令和8年6月から1食550円
入院中の食事は「入院時食事療養費」という仕組みで、かかった費用のうち決まった額(標準負担額)を自分で払います。食材費の高騰を受けて令和6年6月・令和7年4月と引き上げられ、令和8年6月1日からさらに上がりました。
| 区分 | 1食あたり | 1日3食・30日なら |
|---|---|---|
| 下の区分に当てはまらない方(一般) | 550円 | 49,500円 |
| 低所得者Ⅱ(住民税非課税の世帯)・過去1年の入院が90日以内 | 270円 | 24,300円 |
| 同・過去1年の入院が90日を超える | 220円 | 19,800円 |
| 低所得者Ⅰ(非課税で所得が一定基準に満たない70歳以上の方など) | 130円 | 11,700円 |
| 小児慢性特定疾病児童等・指定難病の患者 | 330円 | 29,700円 |
この表は一般の病床に入院したとき(入院時食事療養)の額です。65歳以上の方が療養病床に入院する場合は「入院時生活療養」という別の扱いになり、食費の額が違うことがあるうえ、居住費(原則1日430円)が加わります。ご自身がどちらに当たるかは、病院か加入している医療保険にご確認ください。
一般の区分では、1か月の入院で食事代だけで約5万円。高額療養費の上限とは別にかかります。
220円の区分は、入院が90日を超えれば自動で切り替わるわけではありません。過去12か月の入院日数が90日を超えたら、領収書など入院期間が分かる書類を用意して、加入している医療保険に「長期該当」の申請をします。マイナ保険証を使っていても、この申請そのものは必要です。適用が始まる日は保険者によって扱いが異なるので、窓口で確認してください。
② 差額ベッド代——「同意書がなければ請求できない」
差額ベッド代(正式には「特別の療養環境の提供」=特別療養環境室の料金)は、入院費の中でいちばん差が出る項目です。厚生労働省が毎年集計している数字を見ると、規模も金額の幅も相当なものです。
| 部屋 | 全国の病床数(令和6年8月1日) | 1日あたりの平均徴収額 |
|---|---|---|
| 1人室 | 182,544床(総病床の14.3%) | 8,625円 |
| 2人室 | 36,770床 | 3,149円 |
| 3人室 | 3,688床 | 2,778円 |
| 4人室 | 41,705床 | 2,780円 |
| 合計 | 264,707床(総病床の20.8%) | 6,862円 |
最低は1日50円、最高は385,000円。病院の病床の5床に1床が差額ベッドです。1人室に30日入れば、平均でも約26万円になります。
部屋の条件
差額ベッド代を取れる部屋には、国が決めた条件があります。①1室4床以下、②1人あたり6.4平方メートル以上、③病床ごとのプライバシーを確保する設備、④特別の療養環境として適切な設備。病院全体の病床の5割までと決められています(例外の承認制度あり)。
請求してはいけない場合——ここが大事です
厚生労働省の通知は、患者に差額ベッド代を求めてはならない場合を具体的に挙げています。
- 同意書による同意の確認を行っていない場合——同意書に室料の記載がない、患者側の署名がないなど、内容が不十分な場合を含みます
- 患者本人の「治療上の必要」により入院させる場合——例として、救急患者・術後患者で病状が重篤なため安静を必要とする人、常時監視や適時適切な看護・介助が必要な人、免疫力が低下し感染症にかかるおそれのある人、集中治療や、著しい苦痛をやわらげる必要のある終末期の人
- 病棟管理の必要性などから入院させ、実質的に患者の選択によらない場合——例として、院内感染を防ぐために主治医の判断で個室に入れた場合、ほかの病室が満床だったため特別療養環境室に入院させた場合
さらに通知は、「治療上の必要」に当たらなくなったときは、患者の意に反して個室への入院が続かないよう、改めて同意書で意思を確認するなどの配慮を求めています。病院側には、部屋ごとのベッド数・場所・料金を受付や待合室の見やすい場所に掲示し、希望する患者には設備・構造・料金を明確に説明して、料金を明示した文書に署名をもらう義務があります。
つまり、「満床だったので個室へ」と言われて入り、署名もしていないのに請求された——これは通知に反します。納得できないときは、まず病院の医事課に「同意書は書いていない」「治療上の必要と聞いた」と伝えて確認し、それでも解決しなければ、病院の所在地を管轄する地方厚生(支)局や、都道府県・保健所の医療安全支援センターに相談できます。
入る前に確かめる3つ
- 案内された部屋は差額ベッドか、いくらか(1日あたり・消費税込みか)
- 同意書に金額が書いてあるか。書いていなければ署名しない
- 治療上の必要か、自分の希望か。「満床なので」と言われたら、その旨を同意書ではなくメモに残しておく
③ 日用品・その他
寝巻き・タオル・洗面具、テレビカード、洗濯代、文書料(診断書など)は保険の外です。病院の売店で買うと割高になりがちなので、家族が用意できるものは持ち込むほうが安くなります。おむつ代は、医療費控除の対象になることがあります(後述)。
入院中に確かめておくこと
- 月をまたがないか——高額療養費の上限は暦月(1日〜末日)で計算します。月末から月初にまたぐ入院は、同じ日数でも2か月分の上限がかかり、自己負担が増えます。手術日を選べるなら、この点は医師に相談する価値があります
- 医療保険(生命保険)の入院給付金——請求には診断書が要ることが多く、文書料がかかります。給付金が出たら、医療費控除ではその入院の医療費から差し引いて計算します
- 領収書は捨てない——医療費控除に使います。明細書の記載内容の確認のため、確定申告期限等から5年間の保存が必要です
- 身元保証人——保証人がいないことだけを理由に入院を拒否するのは不適切だという厚生労働省の通知があります(事実婚のふたりの施設選びに詳しく書きました)
退院したあと——医療費控除と高額療養費
高額療養費を事前手続きなしで払った場合は、あとから申請して戻ります(申請先は加入している医療保険。時効は2年)。そのうえで、1年間の医療費が一定額を超えていれば、確定申告で医療費控除が使えます。入院の費用のどれが対象でどれが対象外か、差額ベッド代や付添料の扱いは、医療費控除の対象になるもの・ならないものにまとめました。
今日できること
- 加入している医療保険(市区町村の国保・後期高齢者医療の窓口、会社の健康保険)に、自分の区分では認定証が必要かを確かめる。必要なら申請先と手順もあわせて聞く
- 住民税非課税なら、食事代が下がる(低所得者Ⅱは270円、低所得者Ⅰは130円)。マイナ保険証を使えるなら認定証の持参は不要だが、減額の申請が要るかどうかは加入先に確認する。低所得者Ⅱで入院が90日を超えたら長期該当の申請(認められれば220円)
- 入院の案内を受けたら、部屋の料金表と同意書の様式を見せてもらう
- 加入している生命保険の入院給付金の条件(日額・支払開始日)を証券で確かめる
医療費のことを、順番に
月の上限額そのものは高額療養費の上限が令和8年8月から変更と高額療養費の目安計算で。退院後の確定申告は医療費控除の対象になるもの・ならないものへ。75歳からの窓口負担の割合は1割・2割・3割の分かれ目、住民税が非課税かどうかは非課税ライン判定で確かめられます。
「入院でこんな請求があった」という話は、質問・リクエスト箱から教えてください。
このテーマをまとめて読む:老後資金のまとめ
出典
- 静岡県国民健康保険団体連合会「入院時食事療養費等の標準負担額見直しについて」(令和8年6月1日から。食事療養標準負担額:一般1食550円、低所得者Ⅱは過去1年の入院90日以内270円・90日超220円、低所得者Ⅰ130円、小児慢性特定疾病児童等・指定難病患者330円。65歳以上で療養病床に入院する場合の生活療養標準負担額は1日430円+1食550円〈入院時生活療養(Ⅱ)は510円〉、低所得者Ⅱ430円+270円、低所得者Ⅰ430円+160円など)※改正告示の内容を伝える通知 (2026年9月23日確認)
- 厚生労働省告示「入院時食事療養費に係る食事療養及び入院時生活療養費に係る生活療養の費用の額の算定に関する基準」【令和8年6月1日適用】(入院時食事療養(Ⅰ)1食730円ほか) (2026年9月23日確認)
- 厚生労働省保険局「入院時の食費・光熱水費について」(第206回社会保障審議会医療保険部会 資料2-3・令和7年12月4日。令和6年6月+30円、令和7年4月+20円の経過と患者負担の考え方) (2026年9月23日確認)
- 厚生労働省保険局医療課長通知「療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて」(保医発0327第6号・令和8年3月27日。特別療養環境室の要件〈1室4床以下・1人6.4平方メートル以上・プライバシー確保の設備・適切な設備、病床の5割まで〉、掲示と説明・署名の義務、特別の料金を求めてはならない場合〈同意書による確認を行っていない場合=室料の記載がない・患者側の署名がない等を含む/治療上の必要/病棟管理の必要性等で実質的に患者の選択によらない場合〉) (2026年9月23日確認)
- 中央社会保険医療協議会 総会資料「主な選定療養に係る報告状況」(総-1-2・令和7年7月23日。令和6年8月1日現在:特別の療養環境の病床 合計264,707床〈総病床の20.8%〉、1人室182,544床〈14.3%〉。1日当たり平均徴収額の推計 1人室8,625円・2人室3,149円・3人室2,778円・4人室2,780円・全体6,862円、最低50円・最高385,000円) (2026年9月23日確認)
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(月の上限額、世帯合算、多数回該当。食費・居住費・差額ベッド代は対象外) (2026年9月23日確認)
- 厚生労働省「医療機関等における資格確認の方法」(マイナ保険証での限度額情報の提供) (2026年9月23日確認)
- 厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用について」(マイナ保険証を使えば限度額適用認定証・限度額適用・標準負担額減額認定証がなくても限度額を超える支払いが不要になる) (2026年9月23日確認)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)」(低所得者の区分は、マイナ保険証を利用する場合も減額認定の申請が必要) (2026年9月23日確認)
- 札幌市「限度額適用認定証・限度額適用・標準負担額減額認定証」(国民健康保険。オンライン資格確認で区分が確認できる場合の取扱い)※自治体の例 (2026年9月23日確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.1126「医療費控除の対象となる入院費用の具体例」(寝巻き・洗面具などの身の回り品は対象外、本人や家族の都合だけの差額ベッド代は対象外、付添料は対象・親族への心付けは除く、病院で支給される食事は対象・出前や外食は対象外、高額療養費や入院給付金は差し引く) (2026年9月23日確認)
- 厚生労働省「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて」(病院向けの通知) (2026年9月23日確認)