誠一の老後メモ

知らないと損をすることを、ひとつずつ。

要介護の親がいるなら「障害者控除対象者認定書」を——手帳がなくても、65歳以上で市区町村の認定を受ければ所得税27万円・住民税26万円(特別障害者なら40万円・30万円)の控除。交付の方法は市区町村で確認を

親の介護が始まってから、税金のことまで手が回る方は多くありません。そのなかでいちばん知られていないのに、いちばん手間が小さいのが、この「障害者控除対象者認定書」です。

障害者手帳を持っていなくても、65歳以上で、身体の障害や認知症の状態が手帳の等級に準ずると市区町村長の認定を受ければ、所得税と住民税の障害者控除が使えます。根拠は所得税法施行令と地方税法施行令で、厚生労働省も市区町村向けに取扱いを示しています。

いくら戻るのか

区分所得税の控除額住民税の控除額
障害者27万円26万円
特別障害者40万円30万円
同居特別障害者(特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族と同居を常況としている場合)75万円53万円

これは「所得から差し引ける額」で、戻る税金そのものではありません。所得税率が5%の方なら27万円×5%=約1万3千円、住民税が10%で26万円×10%=2万6千円。合わせて年に約4万円が目安です。特別障害者・同居特別障害者ならもっと大きくなります。

そして忘れてはいけないのが、住民税が下がることの波及です。住民税の課税所得で判定する75歳からの医療費の窓口負担割合(1割・2割・3割の分かれ目)に効くことがあります。

誰が受けられるか——「手帳がない人」のための仕組み

所得税法は、障害者控除の対象に「精神または身体に障害のある年齢が満65歳以上の人で、その障害の程度が知的障害者・身体障害者手帳の交付を受けている人などに準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人」を挙げています。厚生労働省の資料では、65歳以上の方について次のように整理されています。

区分市区町村長の認定で対象になる状態
障害者
(所得税27万円・住民税26万円)
知的障害(中度・軽度)または身体障害者手帳3〜6級に準ずると認定された方
特別障害者
(所得税40万円・住民税30万円)
知的障害(重度)または身体障害者手帳1〜2級に準ずると認定された方。常に就床を要し、複雑な介護を要する方(ねたきり)も同様の手続きで認定書の交付を受けられます

実際の認定基準は市区町村が定めます。横浜市の例では、障害者控除は「身体障害者3〜6級に準ずる」「認知症(軽度または中度)に準ずる」「知的障害(軽度または中度)に準ずる」、特別障害者控除は「身体障害者1〜2級に準ずる」「認知症(重度)に準ずる」「知的障害(重度)に準ずる」「6か月程度以上ねたきりで、食事・排泄等の日常生活に支障のある方」。認知症が入っているのがポイントで、身体は元気でも認知症が進んでいる方は対象になり得ます。

大事な注意——「要介護なら必ず出る」ではありません

厚生労働省は、介護保険の要介護認定が「どの程度の介護サービスを提供するか」を判断するもの(介護の手間のかかり具合)であるのに対し、身体障害者福祉法の障害認定は「永続する機能障害の程度と日常生活の制限の度合い」を見るものであり、判断基準が異なるとしています。要介護認定の結果だけで「身体障害の何級に相当するか」を一律に判断することはできません。

実際、自治体の案内にも「要介護認定を受けた方が必ずしも障害者控除認定の対象になるとは限らず、要介護認定を受けていない方でも対象になることがある」と書かれています。要介護度が低いから無理だと決めつけず、窓口で聞いてみるのが正解です。

申請——「12月31日時点」で判定します

まず確かめたいのは、申請が要るかどうかです。申請して交付を受ける自治体が多い一方、対象になる方へ毎年送ってくれる自治体もあります(埼玉県朝霞市は「対象の方には毎年1月下旬頃に認定証を送付しますので、申請は不要です」と案内し、転入で認定を引き継いだ方などだけ申請を求めています)。なお、認定書が届くことと、税の控除を申告することは別の手続きです。認定書が自動で届いても、申告しなければ控除は受けられません。

  1. 申請先——市区町村の介護保険の担当課(高齢福祉課、福祉事務所など。自治体によって名前が違います)。窓口のほか、オンラインや郵送で受け付ける自治体もあります
  2. 持ち物——申請書、対象になる方の介護保険被保険者証、窓口に来る方の本人確認書類。多くの自治体は介護認定の資料(主治医意見書や認定調査票)で判定するので、診断書を取り直す必要はないのがふつうです
  3. 判定の基準日——その年の12月31日の状況で判定します。年の途中で亡くなった場合は、亡くなった日の状況です
  4. 時期——申告のシーズンに合わせ、1月の初めから前年分の受付を始める自治体が多いです
  5. 使い方——認定書を受け取ったら、確定申告書か年末調整の書類に障害者控除を記入します。認定書そのものを提出・提示する必要があるかどうかは申告の先によって違うので(国税庁の添付書類の一覧では、国内に住む親族についてこの認定書を一律には求めていません)、税務署・勤務先・市区町村に確認してください。求められたときに出せるよう、認定書は手元に保管しておきます

なお、この認定書は税の控除のためだけのもので、これがあっても障害者向けの福祉サービスが使えるようになるわけではありません。

誰の申告で使うか——扶養している家族でも使えます

障害者控除は、本人だけでなく、同一生計配偶者や扶養親族が障害者に当たる場合にも、その人を扶養している納税者が受けられます。つまり、年金だけで暮らす親(もともと税金がかからない)の認定書を、親を扶養に入れている子の側で使えます。親の税金が0円でも、子の税金が下がるわけです。

「生計を一にしている」ことが条件で、同居は必須ではありません。別居していても生活費を送っていれば該当します(医療費控除の対象になるもの・ならないものと同じ考え方です)。

申告し忘れていた年は、5年さかのぼれます

認定書を過去の年の分についても出してもらえる自治体は多く、申告していなかった年の分はその年の翌年1月1日から5年間、還付申告ができます。2026年(令和8年)中なら2021年(令和3年)分まで——ただし2021年分の期限は2026年12月31日です。

すでに申告した年で控除を入れ忘れていた場合は、更正の請求(原則として申告期限から5年以内)になります。

今日できること

  1. 市区町村のホームページで「障害者控除対象者認定書」を検索し、申請が要るのか送られてくるのか、認定基準と申請先を見る
  2. 要介護認定を受けている家族がいれば、要介護度が軽くても窓口に相談してみる(判断基準が別だからです)
  3. 認知症の診断を受けている方は、その旨を伝える(重度なら特別障害者に当たる可能性があります)
  4. 親を扶養に入れているなら、子の側の申告で使えることを確かめる
  5. 過去の年に使い忘れていないか、5年分を見直す

申請しないともらえないお金を、順番に

医療費控除の対象は医療費控除の対象になるもの・ならないもの、年金の確定申告は年金と確定申告へ。要介護認定の流れは要介護認定の申請から結果まで、介護費用の全体像は介護にいくらかかるかで。住民税が非課税かどうかは非課税ライン判定をどうぞ。

「うちの市ではこうだった」という話は、質問・リクエスト箱から教えてください。

このテーマをまとめて読む:老人ホームのまとめ老後資金のまとめ

出典

この記事は、国税庁・厚生労働省の資料と自治体の案内にもとづく一般的な情報です。認定の基準と申請の方法は市区町村が定めるため、地域によって異なります。申請の前に、お住まいの市区町村の介護保険・高齢福祉の窓口でご確認ください。申告の内容は税務署または税理士にご相談ください。