60代からの健康診断とがん検診——40〜74歳は「特定健診」、75歳からは後期高齢者の健診。がん検診は市区町村で5種類。「要精密検査」と言われたら、必ず受診を
会社を辞めたら、毎年の健康診断の案内が来なくなった。がん検診は、どこで、何歳まで受ければいいのか分からない——。定年をはさむと、健診の「受け方」が変わります。
この記事は、60代からの健康診断とがん検診の受け方を、厚生労働省と国立がん研究センターの案内にそってまとめたものです。病気の診断や、検査を受けるべきかどうかを個別に判断するものではありません。持病で通院している人や、気になる症状がある人は、かかりつけの医師に相談してください。
健診は2種類——生活習慣病の健診と、がん検診
| 主な目的 | 誰が行うか | |
|---|---|---|
| 特定健診(40〜74歳) | メタボリックシンドロームや、高血圧・糖尿病などの生活習慣病の予防 | 加入している医療保険(国民健康保険なら市区町村、会社の健康保険なら健保組合や協会けんぽ) |
| 後期高齢者の健診(75歳から) | 生活習慣病の早期発見と、心身の衰え(フレイル)への気づき | 後期高齢者医療広域連合(多くは市区町村に委託) |
| がん検診 | がんを早く見つけて、がんで亡くなる人を減らす | 住んでいる市区町村 |
会社員のときは、会社の健康診断で済んでいた人も多いはずです。退職して国民健康保険に入ると、特定健診の案内は市区町村から届きます(家族の扶養に入った場合は、その家族の健康保険から)。がん検診は、どの保険に入っていても、住んでいる市区町村で受けられます(職場などで受ける機会がある人は、そちらを使う場合もあります)。
40〜74歳——特定健診
特定健診は、医療保険が年度に1回、40歳以上74歳までの加入者に行います。主な項目は次のとおりです。
- 質問(これまでの病気、飲んでいる薬、たばこなど)と、医師の診察
- 身長・体重・腹囲・BMI、血圧
- 血液検査:肝機能(AST・ALT・γ-GT)、脂質(中性脂肪・HDL・LDLコレステロール)、血糖
- 尿検査(糖・たんぱく)
- 医師が必要と判断したときは、心電図や血清クレアチニン(腎臓の働き)などの検査(詳しい項目)
結果で、腹囲やBMIが基準を超え、血圧・脂質・血糖などのリスクが重なっている人には、特定保健指導(保健師や管理栄養士などによる生活習慣の見直しの支援)が案内されます。高血圧・脂質異常症・糖尿病の薬を飲んでいる人は、保健指導の対象外です。65〜74歳の人は、リスクが多くても比較的軽い「動機付け支援」の対象になります。
厚生労働省によると、2023年度の特定健診の実施率は全体で59.9%でした。ただし、加入している保険によって大きく違い、会社の健保組合は82.9%なのに対し、市町村国保は38.2%です。年齢別では、65〜69歳が51.0%、70〜74歳が46.2%でした。市町村国保は実施率が低いので、退職して国保に入ったら、健診の受け方を確かめておくことが大切です。
75歳から——後期高齢者の健診
75歳になって後期高齢者医療制度に入ると、健診は後期高齢者医療広域連合(都道府県ごとの運営団体)が行います。法律上は「行うように努める」もので、多くは市区町村に委託して実施されています。
- 項目は、基本的に75歳未満と同じです。腹囲は、医師の判断で行う項目とされています。
- 2020年度からは、「後期高齢者の質問票」(15項目)が使われています。食事・口の働き・運動・転倒・もの忘れ・社会参加などを聞いて、心身の衰え(フレイル)に早く気づくためのものです。
- 費用の例:東京都後期高齢者医療広域連合は、自己負担を500円とし、区市町村によっては無料になる、としています。
市区町村によっては、歯科健診も行われています。
がん検診——国が勧める5種類
市区町村のがん検診は、厚生労働省の指針(最新は2025年12月24日の一部改正)にそって行われています。指針が勧めているのは、次の5種類です。
| がん | 対象 | 受ける間隔 | 検査の方法 | 受診を特に勧める年齢 |
|---|---|---|---|---|
| 胃がん | 50歳以上(X線は当分の間40歳以上でも可) | 2年に1回(X線は年1回でも可) | 問診と、胃のX線検査か内視鏡検査のどちらか | 50〜69歳 |
| 肺がん | 40歳以上 | 年1回 | 質問と、胸のX線検査 | 40〜69歳 |
| 大腸がん | 40歳以上 | 年1回 | 問診と、便潜血検査(2日分の便) | 40〜69歳 |
| 乳がん | 40歳以上の女性 | 2年に1回 | 質問と、マンモグラフィ(乳房のX線検査) | 40〜69歳 |
| 子宮頸がん | 20歳以上の女性 | 2年に1回(HPV検査単独法は原則5年に1回・30歳以上) | 問診・視診・内診と細胞診(HPV検査単独法は、問診・視診とHPV検査) | 細胞診は20〜69歳、HPV検査単独法は30〜60歳 |
子宮頸がんのHPV検査単独法の「5年に1回」は、HPV検査が陰性だった場合です。陽性で細胞診に異常がない場合は1年後に追跡の検査を、細胞診に異常がある場合は精密検査を受けます(国立がん研究センター)。
肺がん検診の痰の検査(喀痰細胞診)は、2026年4月から指針の項目から外れました。市区町村によっては、前立腺がん検診など、指針にない検診を独自に行っているところもあります。
70歳を過ぎたら、受けなくていいのか
指針は、多くのがん検診で「受診を特に勧める年齢」を69歳までとしています。一方で、その年齢に当てはまらない人にも、受診の機会を提供するよう留意することとされていて、70歳以上でも受けられる市区町村は多くあります。
がん検診には、がんを早く見つけられるという利益と同時に、がんがないのに「がんの疑い」とされて不安になる、必要のない精密検査を受ける、といった不利益もあると、指針は説明しています。持病がある人や、70歳を過ぎて受けるかどうか迷う人は、かかりつけの医師に相談して決めてください。
どれくらいの人が受けているか
2025年の国民生活基礎調査(40〜69歳。職場などで受けた人も含む、本人の回答)では、がん検診を受けた人の割合は次のとおりで、どのがん検診も上がる傾向にあります。
- 過去1年間:肺がん 男性55.2%・女性49.5%、大腸がん 男性50.9%・女性46.2%
- 過去2年間:胃がん(50〜69歳)男性55.9%・女性46.5%、乳がん 51.0%、子宮頸がん(20〜69歳)46.1%
国の計画の目標は、受診率60%以上です。
費用は、市区町村によって違います
がん検診や健診の自己負担は、市区町村が決めています。無料か、数百円〜数千円のことが多く、年齢や所得によって無料になる仕組みもあります。2026年度の例です。
- 横浜市:がん検診の自己負担は、胃がん2,500円、肺がん680円、乳がん680円など。大腸がん検診は40歳以上が無料。2026年4月から、65歳以上はがん検診が無料になりました(70歳以上は以前から無料)。横浜市国保の特定健診も無料です。
- 大阪市:胃がん(X線)500円、大腸がん300円、肺がん無料など。後期高齢者医療制度の対象者、高齢受給者証の対象者(70〜74歳)、市民税非課税世帯の人などは無料です(証明の提示が必要)。
案内やクーポンが届かないときは、お住まいの市区町村の健康づくりの担当や、国保・後期高齢者医療の窓口に問い合わせてください。
「要精密検査」と言われたら
がん検診で「要精密検査」と判定されたら、必ず精密検査を受けてください。国立がん研究センターは、要精密検査だからといって必ずしもがんではなく、実際にがんと診断されるのはごくわずかだとしたうえで、「症状がない」「健康だから」と精密検査を受けないことのないよう呼びかけています。
ところが、市区町村のがん検診で要精密検査になった人のうち、実際に精密検査を受けた人の割合は、がんの種類によって差があります。
厚生労働省「地域保健・健康増進事業報告」(令和6年度)の表から作成。大腸がんでは、要精密検査となった人のおよそ3割が、精密検査を受けたことを確認できていません(受けていない人と、受けたかどうか分からない人)。
精密検査を受けた割合がいちばん低いのは、大腸がんです。症状がなくても、要精密検査と言われたら、医療機関で詳しい検査を受けてください。
症状があるときは、検診を待たずに受診を
がん検診は、症状がない人のためのものです。国立がん研究センターは、次のような症状がある人は、がん検診ではなく、医療機関を受診して、診断のための検査を受けるよう案内しています。
- 胃の痛みや不快感、食欲がない、食事がつかえる
- 便に血が混じる、おなかが痛い、便の状態や回数が変わった
- 痰に血が混じる、咳が長引く、胸の痛み、声のかれ、息切れ
- 乳房のしこりやひきつれ、乳首から血の混じった液が出る
- 月経以外の出血、閉経後の出血
こうした症状は、がん以外の病気でも起こります。自分で判断せず、痛みが強いときや症状が続くときは、早めに医師に相談してください。
ほかにも、市区町村の検診があります
- 歯周病の検診(歯周疾患検診):20・30・40・50・60・70歳の人が対象です。
- 骨粗しょう症の検診:40〜70歳の5歳刻みの年齢の女性が対象です。
行っているかどうか、対象年齢や費用は市区町村によって違います(2024年度に歯周疾患検診を行った市区町村は85.1%、骨粗しょう症検診は65.6%)。
チェックリスト
- 自分の健診の案内が、どこから届くのか確かめた(国保なら市区町村、75歳からは後期高齢者医療広域連合)
- 今年度の特定健診(または75歳からの健診)を受けた
- がん検診の対象と間隔を確かめ、市区町村の案内やクーポンを確認した
- 「要精密検査」と言われたら、症状がなくても必ず精密検査を受ける
- 気になる症状があるときは、検診を待たずに医療機関を受診する
- 持病がある人、70歳を過ぎて受けるか迷う人は、かかりつけの医師に相談した
体とお金の備えを、あわせて
医療費の自己負担は75歳からの医療費は1割・2割・3割と医療費の上限(高額療養費)、入院したときのお金は入院したときのお金、退職後の保険は退職後の健康保険は3択、予防接種は65歳からのインフルエンザと新型コロナの定期接種へ。
「うちの市ではこうだった」という話は、質問・リクエスト箱から教えてください。
出典
- e-Gov法令検索「高齢者の医療の確保に関する法律」(第20条 保険者は40歳以上の加入者に特定健康診査を行う、第125条 後期高齢者医療広域連合は健康診査等を行うように努めなければならない) (2026年10月6日確認)
- e-Gov法令検索「特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準」(健診項目、腹囲・BMIなどの保健指導の基準、高血圧症・脂質異常症・糖尿病の薬を服用している者を除く、65歳以上75歳以下は動機付け支援) (2026年10月6日確認)
- 厚生労働省「2023年度 特定健康診査・特定保健指導の実施状況」(実施率59.9%、市町村国保38.2%・健保組合82.9%、65〜69歳51.0%・70〜74歳46.2%) (2026年10月6日確認)
- 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム」第7章(後期高齢者の健診項目は基本的に75歳未満と同様、腹囲は医師の判断等によって実施する項目) (2026年10月6日確認)
- 厚生労働省「後期高齢者の質問票の解説と留意事項」(15項目の質問で構成) (2026年10月6日確認)
- 東京都後期高齢者医療広域連合「健康診査」(健診受診時の自己負担金は500円、市区町村により無料になることもある)※広域連合の例 (2026年10月6日確認)
- 厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」(令和7年12月24日一部改正。5種類のがん検診の対象・間隔・方法、受診を特に推奨する者、該当しない者にも受診の機会を提供するよう留意、利益と不利益、肺がん検診は質問と胸部エックス線検査、大腸がんは免疫便潜血検査2日法、乳がんの視触診は推奨しない) (2026年10月6日確認)
- 厚生労働省 指針の一部改正の新旧対照表(令和7年12月24日。肺がん検診の喀痰細胞診を削除、令和8年4月1日から適用) (2026年10月6日確認)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「子宮頸がん検診について」(HPV検査陰性なら5年に1度、HPV検査陽性・細胞診異常なしは要追跡精検で1年後にHPV検査) (2026年10月6日確認)
- 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」(がん検診の受診率〈40〜69歳、胃は50〜69歳、子宮頸は20〜69歳〉は上昇傾向) (2026年10月6日確認)
- 厚生労働省「令和6年度 地域保健・健康増進事業報告の概況」(令和5年度の精密検査受診率 胃85.7%・肺82.7%・大腸71.1%・子宮頸78.0%・乳90.6%、歯周疾患検診は20・30・40・50・60・70歳、骨粗鬆症検診は40〜70歳の5歳刻みの女性、実施市区町村の割合) (2026年10月6日確認)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん検診について」(症状がある場合は検診ではなく医療機関で受診、要精密検査と判定されたら必ず精密検査を、がんと診断されるのはごくわずか) (2026年10月6日確認)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん検診受診率」(受診率は自己申告で職域等の検診も含む、目標は60%以上) (2026年10月6日確認)
- 横浜市「がん検診」(令和8年度の自己負担額、大腸がん検診は40歳以上無料)※自治体の例 (2026年10月6日確認)
- 横浜市 記者発表資料(令和8年3月27日。令和8年4月からがん検診無料の対象を65歳以上に拡大、70歳以上は従来より無料、精密検査費用の補助)※自治体の例 (2026年10月6日確認)
- 横浜市「特定健康診査」(横浜市国民健康保険の特定健診は無料)※自治体の例 (2026年10月6日確認)
- 大阪市大正区「がん検診」(令和8年度の料金、後期高齢者医療制度の対象者・高齢受給者証の対象者・市民税非課税世帯などは無料、自覚症状のある方は医療機関で診察を)※自治体の例 (2026年10月6日確認)