薬が多いと感じたら——高齢になると薬が増え、ふらつきや物忘れなどの副作用が起きやすくなることも。自己判断でやめず、お薬手帳を1冊にして、残っている薬も持って医師・薬剤師に相談を
内科、整形外科、眼科……と通う病院がふえるうちに、気づけば毎朝の薬が手のひらいっぱい。そんな方は少なくありません。この記事は、薬が多いときに知っておきたいことと相談のしかたを、厚生労働省と日本老年医学会の資料にそってまとめたものです。
先にお断りします。この記事は、薬を減らすことや、特定の薬をやめることを勧めるものではありません。薬について気になることは、必ず医師か薬剤師に相談してください。具合が急に悪くなったときは、ためらわず医療機関を受診してください。
高齢になると、薬はふえやすい
年齢とともに持病がふえ、いくつもの診療科や医療機関にかかるようになると、薬はふえやすくなります。厚生労働省の「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」(2018年)は、全国の保険薬局での処方調査(2016年)をもとに、75歳以上の約4分の1が7種類以上、4割が5種類以上の薬を処方されていると紹介しています。そして、複数の医療機関にかかることで、処方されている薬の全体が把握されにくくなることも指摘しています。
「ポリファーマシー」とは
薬が多いこと自体を指す言葉ではありません。指針は、ポリファーマシーを「単に服用する薬剤数が多いこと」ではなく、それに関連して副作用のリスクが高まったり、飲み間違いや飲み忘れが起きたりする状態と説明しています。
- 何種類から、という決まりはない:6種類以上で副作用の発生がふえたというデータがある一方、治療に6種類以上が必要な場合もあれば、3種類で問題が起きる場合もあり、本質的には中身が大事だとしています(指針)。
- 多ければ減らす、ではない:厚生労働省のリーフレットも「くすりが多いからといって必ず減らすべきということではありません」と書いています。
高齢者に起きやすい「いつもと違う」
日本老年医学会のパンフレットは、高齢者では処方される薬が6つ以上になると副作用を起こす人がふえることが分かっている、とし、起こりやすい副作用としてふらつき・転倒、物忘れを挙げています。指針や厚生労働省のリーフレットには、薬が関係して起きることがある症状として、次のようなものが並んでいます。
- ふらつき・めまい、転倒
- 物忘れ、急にぼんやりしたり混乱したりする(せん妄)
- 気分の落ち込み、眠気
- 食欲がない、便秘
- おしっこが出にくい、もれる
こうした症状は、薬以外の原因で起きることもあります。原因を自分で決めつけず、「薬が追加されたり変わったりした後は特に注意」(厚生労働省のリーフレット)という目で様子を見て、気になったら医師や薬剤師に伝えてください。
いちばん大事なこと——自分の判断でやめない
「薬が多すぎる気がするから、ひとつやめてみよう」は危険なことがあります。資料はどれも同じことを書いています。
- 厚生労働省のリーフレット:気になる症状があっても、勝手に薬をやめたり減らしたりするのはよくない。急にやめると病状が悪化したり、思わぬ副作用が出たりする薬もある。
- 2026年度「薬と健康の週間」のパンフレット(厚生労働省・日本薬剤師会など):薬の種類によっては、自己判断で急に中止すると危険なケースがある。
- 日本老年医学会のパンフレット:処方された薬は「きちんと使うこと」、そして「自己判断でやめないこと」が大切。
薬を減らせるかどうかは、病気の状態を知っている医師が判断します。患者と家族にできるのは、判断の材料をそろえて相談することです。
- 飲んでいる薬を全部集める市販薬・サプリもどの病院の薬かに関係なく、残っている薬も袋にまとめます。毎日飲んでいる健康食品やサプリメントも含めて。
- お薬手帳を1冊にする病院や薬局ごとに手帳が分かれていたら、1冊にまとめて続けて記録します。
- 気になることをメモする「何という薬を、どのくらいの量・期間使い、どんな症状が出たか」。
- 医師か薬剤師に見せて相談自分でやめないかかりつけの薬局や、かかりつけの医師へ。減らすかどうかは医師が判断します。
厚生労働省・日本薬剤師会など「薬と健康の週間」パンフレット(2026年度)、厚生労働省のリーフレット、日本老年医学会のパンフレットをもとに作成。
相談のしかた——4つの準備
1. お薬手帳を1冊にまとめる
手帳が病院ごと・薬局ごとに分かれていると、全体を見られる人がいなくなります。「薬と健康の週間」のパンフレットは、医師や薬剤師がすべての薬を把握できるよう、お薬手帳はひとつにまとめて、続けて記録するよう呼びかけ、自分で買った薬を飲んだときも記入するよう書いています。
2. 市販薬・サプリ・健康食品も伝える
厚生労働省のリーフレットは、使っている薬は必ず全部伝え、毎日飲んでいる健康食品やサプリメントがあればその情報も伝えるよう書いています。日本老年医学会のパンフレットも、使っている薬を正確に伝えるよう呼びかけています。処方された薬だけでなく、市販薬、サプリメントや健康食品も含めて、使っているものを全部伝えましょう。
3. 残っている薬を、袋に入れて持っていく
飲みきれずに残っている薬があるときは、かかりつけの薬剤師や医師に相談します。パンフレットは、薬局でもらった袋でなくてもよいので、残っている薬を入れて持っていくよう勧め、飲み忘れや副作用、使い方も一緒に確認できるとしています。2025年度の国の調査では、自宅に残薬があると答えた患者は全体の約半数で、残薬があると答えた人の6割が60歳以上でした(中央社会保険医療協議会の資料)。
4. 相談する相手を決めておく
- かかりつけの薬局・薬剤師:厚生労働省は、かかりつけの薬局で服薬の情報を一元的・継続的に把握することで、多剤・重複投薬の防止や残薬の解消につながるとしています。日本薬剤師会も、処方薬や市販薬などの情報を一か所でまとめて把握し、手帳が複数あれば1冊にするよう提案する、と説明しています。
- かかりつけの医師:日本老年医学会のパンフレットは、かかりつけの医師に薬の量と数についてよく相談してみるよう勧めています。
マイナ保険証で、ほかの病院の薬も伝わる
電子処方せんに対応した医療機関・薬局では、マイナ保険証を使って過去のお薬情報の提供に同意すると、複数の医療機関・薬局にまたがる直近のお薬情報を、医師・歯科医師・薬剤師が見られるようになります(厚生労働省)。ふだんは、本人の同意なしに過去の情報を見ることはできません。
- 電子処方せんは、2026年5月時点で9割以上の薬局に導入されています。病院や診療所は対応していないところもあります。
- 資格確認書でも電子処方せんは使えますが、お薬情報をデータで共有することはできません。
- 自分で買った市販薬などはマイナポータルでは確認できないため、お薬手帳での管理が有効とされています。マイナ保険証があっても、お薬手帳は続けましょう。
マイナ保険証の使い方はマイナ保険証と資格確認書にまとめています。
受診や薬局に持っていくもの
- お薬手帳(1冊にまとめたもの)
- 今飲んでいる薬と、残っている薬(袋にまとめて)
- 市販薬・サプリメント・健康食品(現物か、名前のメモ)
- 気になる症状のメモ(いつから、どの薬を飲み始めてから、など)
- マイナ保険証、または資格確認書
2026年度の「薬と健康の週間」は、10月17日から23日までです。薬局で薬の相談をしてみる、ひとつのきっかけにしてみてください。
あわせて読む
マイナ保険証と資格確認書の違いはマイナ保険証と資格確認書、ふらつきや転びやすさが気になる方は家の中の転倒を防ぐ、もの忘れが気になる方はもの忘れが気になったら、医療費の自己負担は75歳からの医療費の窓口負担へ。
「こんなことを知りたい」というご希望は、質問・リクエスト箱から教えてください。
出典
- 厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月(ポリファーマシーは単に服用する薬剤数が多いことではなく薬物有害事象のリスク増加・服薬過誤・服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態、何剤からという厳密な定義はない、6種類以上が特に薬物有害事象の発生増加に関連したというデータ、75歳以上の約1/4が7種類以上・4割が5種類以上〈平成28年の処方調査〉、薬剤起因性老年症候群、市販薬・サプリメントも含めた確認) (2026年10月10日確認)
- 厚生労働省「ポリファーマシーに対する啓発資材の活用について」(一般向けリーフレット「あなたのくすり いくつ飲んでいますか?」を掲載) (2026年10月10日確認)
- 厚生労働省 リーフレット「あなたのくすり いくつ飲んでいますか?」(くすりが追加されたり変わったりした後は特に注意、勝手にやめたり減らしたりしない、多いからといって必ず減らすべきではない、急にやめると病状が悪化することがある、健康食品・サプリメントも伝える) (2026年10月10日確認)
- 日本老年医学会「多すぎる薬と副作用(一般向けパンフレット)」紹介ページ (2026年10月10日確認)
- 日本老年医学会 パンフレット「高齢者が気を付けたい 多すぎる薬と副作用」2016年(処方される薬が6つ以上で副作用を起こす人が増える、起こりやすい副作用はふらつき・転倒と物忘れ、自己判断でやめない、使っている薬を正確に伝える、お薬手帳は1冊に) (2026年10月10日確認)
- 厚生労働省「『薬と健康の週間』の実施について」(令和8年10月17日〜23日、主催 厚生労働省・都道府県・日本薬剤師会・都道府県薬剤師会) (2026年10月10日確認)
- 厚生労働省・日本薬剤師会ほか「薬と健康の週間」パンフレット(令和8年度。自己判断で急に中止すると危険なケース、何という薬をどのくらいの量・期間使いどんな症状が出たか、お薬手帳はひとつにまとめて継続して記録、残っている薬を袋に入れて持参) (2026年10月10日確認)
- 厚生労働省「患者のための薬局ビジョン」概要(2015年。服薬情報の一元的・継続的な把握、多剤・重複投薬の防止や残薬解消) (2026年10月10日確認)
- 日本薬剤師会「かかりつけ薬剤師・薬局とは?」(処方薬や市販薬など使用している薬の情報を一カ所でまとめて把握、複数のお薬手帳は1冊に集約を提案) (2026年10月10日確認)
- 中央社会保険医療協議会 資料(2025年12月19日。令和7年度調査で自宅に残薬があると回答した患者は全体の約半数、残薬があると答えた患者は60歳以上が6割) (2026年10月10日確認)
- 厚生労働省「電子処方せん(国民向け)」(過去のお薬情報の提供に同意すると複数の医療機関・薬局にまたがる直近のお薬情報を共有、通常時は同意なしに閲覧できない、資格確認書ではお薬情報をデータで共有できない) (2026年10月10日確認)
- 厚生労働省「電子処方せん対応の医療機関・薬局についてのお知らせ」(2026年5月時点で9割以上の薬局に導入) (2026年10月10日確認)
- 厚生労働省「よくある質問~マイナ保険証について~」(令和7年2月版。自身で購入したOTC医薬品などはマイナポータルで確認できないため、お薬手帳での管理が有効) (2026年10月10日確認)