誠一の老後メモ

知らないと損をすることを、ひとつずつ。

家の中の転倒を防ぐ——東京消防庁管内の65歳以上の日常生活事故では「ころぶ」が最多。家の中でいちばん多い場所は居室・寝室。転倒・転落による65歳以上の死亡は交通事故の5倍以上

「家の中なら安全」と思いがちですが、高齢になるほど、けがの多くは家の中で起きています。それも、階段から落ちるような大きな事故より、部屋の中でつまずいて転ぶような、ささいなきっかけが中心です。

この記事は、どこで・なぜ転ぶのかを公的なデータで確かめ、部屋ごとにできる対策と、使える公的な支えをまとめたものです。

数字で見る——日常生活の事故の救急搬送は「ころぶ」が最多

東京消防庁によると、令和6年に東京消防庁の管内で、日常生活の事故で救急搬送された65歳以上の人は98,056人。そのうち「ころぶ」事故は73,500人でした。令和2〜6年の5年間で見ると、「その他」「不明」を除いた事故の8割以上が「ころぶ」です。

  • 「ころぶ」事故のうち、住宅などの住まいで起きたのは42,180人。そのうち屋内が39,053人で、9割以上です。
  • 「ころぶ」事故で運ばれた高齢者の約4割は、入院が必要な中等症以上でした。
  • 75歳以上(後期高齢者)になると、事故が住まいで起きる割合が約7割に増えます。

亡くなる人の数でも、転倒・転落は大きな問題です。厚生労働省の人口動態統計(令和6年)では、65歳以上の「転倒・転落・墜落」による死亡は11,175人で、交通事故による死亡(2,103人)の5倍以上にあたります。政府広報オンラインも、令和4年の統計で「交通事故による死亡者数の5倍以上」と伝えています(なお、転倒・転落による死亡のすべてが家の中で起きているわけではありません)。

家の中のどこで転ぶか——いちばん多いのは居室・寝室

東京消防庁の令和6年のデータで、65歳以上が家の中で「ころぶ」事故が起きた場所の上位5つは、次のとおりです。

65歳以上が家の中で「ころぶ」事故が起きた場所(東京消防庁・令和6年・上位5つ)
居室・寝室29,783人
玄関・勝手口など3,900人
廊下・縁側・通路2,653人
トイレ・洗面所1,229人
台所・調理場・ダイニング・食堂1,079人

いちばん長く過ごす部屋で、いちばん多く転んでいます。階段での事故は、別に数えられている「落ちる」事故に多く、「落ちる」事故のきっかけでいちばん多いのが階段(4,240人)です。

転んだきっかけでは、段差(3,923人)がいちばん多く、お酒、椅子、ベッド、自転車と続きます。国民生活センターに寄せられた事例でも、電気のコードにひっかかった、カーペットの縁に足をとられた、スリッパが脱げて靴下が滑った、といった「ちょっとしたこと」が原因になっています。

なぜ転ぶのか——体・病気や薬・運動不足

政府広報オンラインは、転倒の主な原因として、①加齢による体の機能の低下、②病気や薬の影響、③運動不足の3つを挙げています。消費者庁も、加齢による筋力の低下が原因の一つと考えられるとしています。

  • 薬は、主治医と薬剤師に相談:飲んでいる薬の種類と量を、定期的に主治医と薬剤師に相談するよう勧められています。自己判断で薬をやめたり減らしたりはしないでください。
  • 体勢を変えるときは、ゆっくり:ベッドから起きてトイレに行くときなど、体勢を変えるときはゆっくり慎重に(消費者庁)。
  • 体の変化は医師に:ふらつきや、以前より転びやすくなったと感じるとき、転んで痛みが強いときは、医師に相談してください。

部屋ごとの対策

政府広報オンライン、消費者庁、国民生活センターが挙げている対策を、場所ごとにまとめます。

場所できること
居室・寝室電気のコードが通り道にかからないよう家電の置き場所を工夫する/めくれやすいカーペットの下には滑り止めを敷き、端を留める/床に新聞やチラシを置かない/ベッドや椅子は、立ち上がりやすい安定した高さのものを
玄関段差に手すりや滑り止めをつける/玄関マットの下に滑り止めを敷く/靴を脱ぎはきするための椅子を置く
廊下・階段手すりや滑り止めをつける/足元を照らすランプをつける
トイレ・浴室・脱衣所手すりや滑り止めマットをつける
家じゅう照明を明るくして足元を見えやすくする/滑りやすい靴下やスリッパは使わない/1〜2cmの小さな段差や敷居にも気をつける(スロープや手すりで解消する方法もある)

冬の浴室の事故は、転倒とは別に注意が要ります。冬の入浴事故を防ぐもあわせて読んでください。

使える公的な支え

  • 介護保険の住宅改修:要支援・要介護の認定を受けている人は、手すりの取付け、段差の解消、滑りにくい床への変更などの工事に、20万円までの工事費の7〜9割が支給されます。工事の前に市区町村へ申請が必要です。詳しくは介護保険の住宅改修は20万円までに。
  • 福祉用具のレンタル:手すり、スロープ、歩行器、対象となる歩行補助つえ(松葉づえや多点杖など)は、介護保険で借りられます(費用の1〜3割)。一般的なT字杖は対象外です。介護保険の福祉用具は「借りる」が原則に書きました。
  • 介護予防の場:市区町村の介護予防の事業(通いの場など)は、65歳以上ならだれでも対象です。自治体によっては「転倒予防教室」などもあります。お住まいの地域の内容は、地域包括支援センターに聞くのが近道です。
  • 消防署の防火防災診断(東京の例):東京消防庁は、配慮が必要な人の家を訪ね、階段や床などの転倒の危ない場所も確かめる「住まいの防火防災診断」をしています。費用を請求したり物を売ったりすることは一切ない、と明記しています。消防署員を名乗って物を売りつける訪問には注意してください(住まいの防犯)。

チェックリスト

  • いちばん長くいる部屋(居室・寝室)の床に、コード・新聞・めくれたカーペットがない
  • 玄関・廊下・階段・トイレに、手すりか、つかまれる場所がある
  • 夜、トイレまでの道が足元まで明るい
  • 家の中で、脱げやすいスリッパや滑りやすい靴下をはいていない
  • 飲んでいる薬のことを、主治医か薬剤師に一度相談した
  • この1年に転んだことがある、転ぶのが不安——なら、地域包括支援センターに相談する

住まいの安全を、順番に

手すりや段差の工事は介護保険の住宅改修は20万円まで、杖や歩行器は福祉用具は借りるが原則、冬の浴室は冬の入浴事故を防ぐ、地震への備えは家具の固定へ。ひとり暮らしの親が心配ならひとり暮らしの見守りもどうぞ。

「うちではこう工夫した」という話は、質問・リクエスト箱から教えてください。

このテーマをまとめて読む:老人ホームのまとめ

出典

この記事は、東京消防庁・厚生労働省・消費者庁・国民生活センター・政府広報の公表資料にもとづく一般的な情報です。救急搬送のデータは東京消防庁の管内のものです。ふらつきや転びやすさが気になるとき、転んで痛みが強いときは、医師に相談してください。飲んでいる薬については、自己判断でやめたり減らしたりせず、主治医や薬剤師にご相談ください。