介護保険の福祉用具は「借りる」が原則——車いす・介護ベッド・手すりなど13種類は月々のレンタル、腰掛便座や入浴用いすは年10万円まで購入。一部の杖・歩行器・スロープは2024年から「借りるか買うか」を選べます
親の歩き方がおぼつかなくなってきた、ベッドからの立ち上がりがつらそう——そんなとき、ホームセンターや通販で杖や手すりを買う前に知っておきたいのが、介護保険の福祉用具です。要支援・要介護の認定を受けていれば、多くの用具を費用の1〜3割で借りたり買ったりできます。
ポイントは3つ。原則は「借りる」こと、「買う」ものは年10万円まで・指定の事業者からであること、そして2024年から一部は「借りるか買うか」を選べるようになったことです。工事を伴う手すりや段差の解消は介護保険の住宅改修(20万円まで)の扱いなので、あわせてご覧ください。
全体像——借りるもの・買うもの・どちらも選べるもの
| 区分 | 対象の用具 | 自己負担 |
|---|---|---|
| 借りる(福祉用具貸与) | 車いす(付属品を含む)、特殊寝台(介護ベッド・付属品を含む)、床ずれ防止用具、体位変換器、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえ、認知症老人徘徊感知機器、移動用リフト(つり具の部分を除く)、自動排泄処理装置 | 毎月のレンタル料の1〜3割 |
| 買う(特定福祉用具販売) | 腰掛便座、自動排泄処理装置の交換可能部、排泄予測支援機器、入浴補助用具(入浴用いす、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴室内すのこ、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルト)、簡易浴槽、移動用リフトのつり具の部分 | 年度10万円までの購入費の1〜3割 |
| 借りるか買うかを選べる(2024年4月から) | 固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、歩行補助つえのうち単点杖(松葉づえを除く)と多点杖 | 選んだ方式による |
「借りるのが原則」なのは、体の状態は変わるからです。厚生労働省は、状態や要介護度の変化、用具の性能の向上に合わせて適切な用具に取り替えられるよう、貸与を原則にしていると説明しています。一方、人が使ったものを使うのに抵抗がある、使うと形や質が変わって再利用できない、といった用具は購入の対象です。
借りる——月々のレンタル料の1〜3割
自己負担が1〜3割になるのは、要介護度ごとに決まった1か月の支給限度額の範囲内です。福祉用具のレンタルは、訪問介護やデイサービスなど他の在宅サービスと同じ限度額を分け合って使うので、合計が限度額を超えた分は全額自己負担になります(限度額の目安は介護にいくらかかるかに書きました)。ケアプランを作るときに、ケアマネジャーが全体の配分を調整します。
手順は、担当のケアマネジャーと福祉用具貸与事業者に相談して、借りる用具を決めます。事業者には福祉用具専門相談員がいて、体の状態に合った用具を選び、使い方を説明し、利用開始後も様子を確かめます。
レンタル料には上限がある
レンタル料は公定価格ではなく事業者が決めますが、2018年10月から商品ごとに貸与価格の上限が設けられ、厚生労働省が全国平均の貸与価格と上限を公表しています。事業者には、利用者に全国平均価格を説明し、機能や価格帯の違う複数の商品を示すことが求められています。見積もりが高いと感じたら、全国平均価格を聞いてみてください。
要支援・要介護1の人は、借りられない用具がある
要支援1・2と要介護1の人は、車いす、特殊寝台、床ずれ防止用具、体位変換器、認知症老人徘徊感知機器、移動用リフト、自動排泄処理装置は、原則として介護保険の対象外です(自動排泄処理装置は、尿のみを吸引するものを除き要介護2・3の人も原則対象外)。手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえは借りられます。
ただし例外があります。要介護認定の調査の結果、たとえば「日常的に歩行が困難」と判断されている場合や、医師の所見にもとづいてケアマネジメントで必要と判断され、市区町村が書面で確認した場合(状態が日や時間帯で変わりやすい、急速に悪化することが確実、など)は、例外的に借りられます。「要介護1だから介護ベッドは無理」と決めつけず、ケアマネジャーに相談してください。
買う——年度10万円まで、指定の事業者から
- 上限——要介護度にかかわらず、同じ年度(4月〜翌年3月)で10万円まで。1割負担なら10万円の購入で9万円が支給されます
- どこで買うか——都道府県などの指定を受けた販売事業者から買ったものに限ります。通販サイトやホームセンターで買ったものは、原則として対象になりません。買う前にケアマネジャー(要支援なら地域包括支援センター)に相談を
- 同じ品目は原則1回——壊れた、状態が変わったなどの事情がなければ、同じ品目を何度も支給は受けられません
- 支払い方——いったん全額を払って申請すると7〜9割が戻る「償還払い」が基本。自己負担分だけを払う「受領委任払い」を用意している市区町村もあります
2024年からの「借りるか買うか」——どう選ぶか
固定用スロープ・歩行器(歩行車を除く)・単点杖と多点杖は、2024年4月から貸与と購入を選べるようになりました。厚生労働省は、利用者の負担を軽くし、制度を続けていけるようにしながら、用具を適時・適切かつ安全に使えるようにするため、と説明しています。選ぶときは、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員が、医師やリハビリ専門職などの意見も踏まえて、借りた場合と買った場合の違いを説明することになっています。
- 借りるのが向く——状態が変わりそう、合うものを試したい、手入れや点検を任せたい
- 買うのが向く——長く同じものを使う見込みが高い、レンタル料が積み重なるより安く済む
借りた場合も、利用開始から6か月以内に少なくとも1回、専門相談員が使い具合を確かめ、必要なら購入への切り替えも含めて見直します。
今日できること
- 家の中で困っている動作を書き出す(立ち上がり、歩く、トイレ、入浴、寝返り)
- 要介護認定を受けていなければ、まず認定の申請から
- ケアマネジャーに「福祉用具を使いたい」と伝え、借りる・買う・住宅改修のどれが合うか相談する
- 買う前に、その店が指定を受けた販売事業者かを確かめる
- レンタルの見積もりでは、全国平均の貸与価格を聞いてみる
家で暮らし続けるために、順番に
工事を伴う手すりや段差の解消は介護保険の住宅改修は20万円まで、要介護認定は要介護認定の申請から結果までへ。在宅で使えるサービス全体は施設に入る前に、まだできること、冬の浴室の備えは冬の入浴事故を防ぐで。
「この用具が役に立った」という話は、質問・リクエスト箱から教えてください。
このテーマをまとめて読む:老人ホームのまとめ
出典
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修」(給付対象種目:貸与13種目・販売種目、要支援・要介護1の人は手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえ以外は原則対象外、令和6年4月から固定用スロープ・歩行器〈歩行車を除く〉・単点杖〈松葉づえを除く〉・多点杖の貸与と販売の選択制、貸与価格の上限と全国平均貸与価格の公表、選択制のモニタリング) (2026年9月26日確認)
- 厚生労働省「介護保険制度における福祉用具貸与・販売の概要」(貸与の原則の理由、販売種目の考え方、全国平均貸与価格の説明・複数商品の提示、特定福祉用具販売の指定事業者制度) (2026年9月26日確認)
- 厚生労働省「要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与について」(軽度者が原則対象外となる種目、自動排泄処理装置は要介護2・3も原則対象外、基本調査の結果や医師の医学的所見にもとづく例外給付) (2026年9月26日確認)
- 厚生労働省「福祉用具貸与と特定福祉用具販売の選択制について」(令和6年4月施行、選択制の対象種目、ケアマネジャー・福祉用具専門相談員による提案、医師等の意見の聴取、貸与後6か月以内のモニタリング) (2026年9月26日確認)
- 横浜市「介護保険サービスの利用限度はありますか」(訪問介護・福祉用具貸与等の在宅サービスは要介護度ごとに1か月あたりの利用限度、福祉用具購入費は4月1日〜翌年3月31日で総額10万円)※自治体の例 (2026年9月26日確認)
- 江東区「介護保険特定福祉用具購入費の支給」(指定を受けた販売事業者から購入したものに限る、同じ年度内〈4月から翌年3月まで〉で10万円、同一品目は原則1回、償還払いと受領委任払い、排泄予測支援機器〈令和4年4月〜〉)※自治体の例 (2026年9月26日確認)