誠一の老後メモ

知らないと損をすることを、ひとつずつ。

もの忘れが気になったら——認知症の相談先と受診までの流れ。最初の窓口は地域包括支援センターかかかりつけ医。チェックリストは目安で、診断は医療機関で

親の同じ話が増えた。約束を忘れることが続く。自分でも、言葉がすぐに出てこない——。「もしかして認知症では」と思っても、どこに相談すればいいのか分からず、そのままにしてしまう方は少なくありません。

この記事は、認知症かどうかを判断するためのものではありません。もの忘れが気になったときの相談先と、受診までの流れのまとめです。診断は、医療機関でしかできません。

数字で見る——高齢者の約3割が、認知症かMCI

厚生労働省が公表した研究の推計では、2022年の65歳以上のうち、認知症の人は443.2万人(12.3%)、認知症ではないものの認知機能の低下がみられる軽度認知障害(MCI)の人は558.5万人(15.5%)で、合わせて約28%です。2022年の性別・年齢層ごとの有病率が今後も一定と仮定すると、2040年には認知症の人が584.2万人、MCIの人が612.8万人になると推計されています。

2024年1月には「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行され、国の基本計画は、認知症になってからも「希望を持って自分らしく暮らし続けることができる」という考え方を示しています。

加齢によるもの忘れと、認知症によるもの忘れ

政府広報オンラインは、違いの一例として次のように説明しています。

加齢によるもの忘れ認知症によるもの忘れ
忘れ方体験したことの一部を忘れる(例:朝ごはんを食べたことは覚えているが、メニューが思い出せない)体験したことの全てを忘れている(例:朝ごはんを食べたこと自体を忘れている)
自覚もの忘れの自覚があるもの忘れの自覚がない(初期には自覚があることも少なくない)
進み方極めて徐々にしか進まない進行する

あくまで一例です。国立長寿医療研究センターも、もの忘れがあるからといって必ずしも認知症とは限らない、としています。

MCI(軽度認知障害)は、認知症そのものではありませんが、健常な状態でもない、その中間の状態です。MCIの人が必ず認知症になるわけではなく、年相応の正常なレベルに戻る人もいると、国の資料(国立長寿医療研究センターのMCIハンドブック)は説明しています。

早めに相談したほうがいい理由

  • 治療で改善する病気が原因のことがある:正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症、ビタミン欠乏などが、認知症のような症状の原因になることがあります。処方薬など薬の影響で同じような症状が出ることもあります(国立精神・神経医療研究センター)。うつや、せん妄(一時的な意識の混乱)など、よく似た状態もあります。
  • 軽い段階で気づけば、選べることが増える:厚生労働省は、症状が軽い段階で気づいて適切な治療を受けられれば、薬で進行を遅らせられることもある、としています。
  • 暮らしの備えができる:お金の管理や、これからの暮らし方を、本人の意思を確かめながら決めておけます(親が認知症になったら、口座はどうなるか)。

薬の影響が心配でも、自己判断で薬をやめたり減らしたりはしないでください。まず処方している医師に相談してください。

自分でできるチェック

東京都は「自分でできる認知症の気づきチェックリスト」を公開しています。「財布や鍵など、物を置いた場所がわからなくなることがありますか」「5分前に聞いた話を思い出せないことがありますか」といった10の質問に1〜4点で答え、合計点で相談の目安を示すものです。東京都のページで、その場でチェックできます。家族や身近な人がチェックすることもできます。

東京都は、合計が20点以上の場合は認知機能や社会生活に支障が出ている可能性があるとして、医療機関や相談機関への相談を勧めています。ただし、この結果はおおよその目安で、医学的な診断に代わるものではありません。体の機能が落ちていると点数が高くなることもあります。点数にかかわらず、気になることがあれば相談してください。

暮らしや体の動き、もの忘れ、気分などをまとめて確かめたいときは、市区町村や地域包括支援センターで使われている国の基本チェックリスト(25問)も、このサイトの「チェック&クイズ」で試せます。

相談から受診までの流れ

もの忘れが気になってから、受診と支援につながるまで
  1. 気づく本人や家族が「前と違う」と感じる。いつから、どんな変化があったかをメモしておく。
  2. 相談する地域包括支援センター・かかりつけ医地域包括支援センターはすべての市町村にあります。かかりつけ医がいれば、まずそこへ。
  3. 受診するもの忘れ外来・認知症疾患医療センターなどかかりつけ医がいない場合は、医療機関のもの忘れ外来を受診する方法もあります。
  4. 結果に応じて、支援を受ける地域包括支援センター・ケアマネジャーなど治療、介護保険のサービス、認知症カフェなどの地域の支え。

本人が受診を嫌がるときは、地域包括支援センターに相談すると、認知症初期集中支援チームが家を訪ねる仕組みもあります。

主な相談先

相談先どんなところか
地域包括支援センターすべての市町村にある、高齢者の総合相談窓口。医療・介護の相談に応じ、認知症疾患医療センターや初期集中支援チームとも連携します。迷ったら、まずここへ
かかりつけ医日ごろの体の状態を知っている医師。必要に応じて専門の医療機関につないでもらえます
もの忘れ外来医療機関の専門外来。かかりつけ医がいないときの受診先の一つ
認知症疾患医療センター都道府県などが指定する医療機関で、全国514か所(令和7年11月現在)。認知症かどうか、どの種類かを見分ける診断(鑑別診断)や、専門の医療相談を担います
認知症初期集中支援チーム医療と介護の専門職のチーム。40歳以上で在宅で暮らし、認知症が疑われる人などの家を訪問し、おおむね6か月、集中的に支援します。すべての市町村に置かれています

電話で相談したいとき(厚生労働省の相談先のページに載っている窓口):

  • 認知症の人と家族の会:0120-294-456(フリーダイヤル。携帯電話からは050-5358-6578・有料)。午前10時〜午後3時(月〜金、祝日を除く)
  • 若年性認知症コールセンター:0800-100-2707(フリーダイヤル)。午前10時〜午後3時(月〜土。水曜日は午後7時まで。年末年始・祝日を除く)。65歳未満の人と家族の相談

受診の準備

市の案内や専門医療機関の受診案内では、次のような準備が勧められています。

  • メモを用意する:日常生活での困りごと(いつ頃から、どんな状態が、どんなふうに現れたか)、ほかに治療している病気、今飲んでいる薬。家族から見た変化や、暮らしで困っていること(福岡市)
  • お薬手帳と紹介状:可能なら、かかりつけ医の紹介状とお薬手帳を持っていく(国立長寿医療研究センターの受診案内)
  • 家族と一緒に:本人の普段の様子を伝えられる家族が付き添うと、診察に役立ちます

本人が受診を嫌がるとき

市の案内では、次のような工夫が紹介されています。

  • 無理やり受診させない。否定しない、怒らない(日立市)
  • 「良くなるもの忘れもあるようだから診てもらおう」など、本当の理由を話す(日立市)
  • かかりつけ医に協力をお願いする。医師から勧めてもらうと受診につながりやすい場合がある(さいたま市)
  • それでも難しいときは、地域包括支援センターに相談する。認知症初期集中支援チームが訪問する仕組みがある(さいたま市)

なお、急に会話がまとまらなくなった、ぼんやりするなど、短い期間で変化した場合は、ここまでの相談の順番を待たずに、速やかに医療機関へ相談してください。せん妄(一時的な意識の混乱)など、早めの対応が必要な状態のこともあります。

新しい薬について

アルツハイマー病には、新しい薬(レカネマブ、ドナネマブ)もあります。厚生労働省によると、対象はアルツハイマー病による認知症が軽度の時期と、アルツハイマー病による軽度認知障害の人で、脳にアミロイドβがたまっていることを検査(脳脊髄液の検査かアミロイドPET検査)で確かめる必要があります。臨床試験では認知機能の悪化が抑えられたと報告されていますが、元に戻す薬ではなく、頭痛や発熱、脳のむくみや小さな出血などの副作用の報告もあります。対象になるかどうかは、まずかかりつけの医師に相談するよう案内されています。

チェックリスト

  • 気になる変化を、いつから・どんなふうに、メモしている
  • お住まいの地域包括支援センターの場所と電話番号を調べた
  • かかりつけ医に、もの忘れのことを一度話した
  • 飲んでいる薬を、お薬手帳で一覧にしている(薬は自己判断でやめない)
  • 本人が嫌がるときは、無理に連れて行かず、地域包括支援センターに相談する

認知症への備えを、順番に

お金の管理の備えは親が認知症になったら、口座はどうなるか、介護が必要になったときは要介護認定の申請から結果まで、税金の控除は障害者控除対象者認定書、ひとり暮らしの親の見守りはひとり暮らしの見守りへ。

「こう相談したら、こうつながった」という話は、質問・リクエスト箱から教えてください。

このテーマをまとめて読む:老人ホームのまとめ

出典

この記事は、厚生労働省・政府広報・国の研究機関・自治体の公表資料にもとづく一般的な情報で、認知症かどうかを判断するものではありません。チェックリストの結果は目安で、診断は医療機関でしかできません。もの忘れや体の変化が気になるときは、かかりつけ医や地域包括支援センターにご相談ください。飲んでいる薬は、自己判断でやめたり減らしたりせず、処方している医師にご相談ください。