退職後の健康保険は3択——任意継続・国民健康保険・家族の扶養。任意継続は退職から20日以内、国保は前年の所得で決まるので1年目は高くなりがち。令和8年度の東京で比べると
会社を辞めると、それまでの健康保険の資格は退職日の翌日になくなります。そのあとどの健康保険に入るかは、自分で選んで手続きをする必要があります。選択肢は3つで、選び方によって保険料が年に数十万円違うこともあります。
この記事は、3つの選択肢の条件と期限、保険料の比べ方のまとめです。協会けんぽ(全国健康保険協会)も、「毎月納める保険料などを比較の上」選ぶよう案内しています。
3つの選択肢
| ① 任意継続 | ② 国民健康保険 | ③ 家族の被扶養者 | |
|---|---|---|---|
| どんなもの | 退職前の健康保険に、個人として最長2年入り続ける | 住んでいる市区町村の健康保険に入る | 家族(子や配偶者など)の会社の健康保険に入れてもらう |
| 条件 | 退職日までに続けて2か月以上加入していた | ほかの健康保険に入っていない | 年収130万円未満(60歳以上は180万円未満)など |
| 期限 | 退職日の翌日から20日以内(郵送は20日以内に必着) | 退職日の翌日から14日以内に届出 | 家族の勤務先を通じて、すみやかに |
| 保険料 | 退職時の標準報酬月額(上限あり)×保険料率。会社負担がなくなるので全額自分で。原則2年間変わらない | 前年の所得と人数で決まる。毎年変わる | 本人の負担なし |
| 家族の分 | 家族を被扶養者にでき、被扶養者の保険料負担はない(協会けんぽ) | 加入する人数分の均等割がかかる | — |
病院の窓口での負担の割合は、70歳未満なら原則3割です。70〜74歳は2割か3割で、所得などによって決まるので、加入する保険に確かめてください。選ぶときの違いは、主に保険料です。
① 任意継続——20日の期限に注意
- 条件と期限:退職日までに続けて2か月以上、会社の健康保険に入っていた人が、退職日の翌日から20日以内に申し出ます(20日目が土日・祝日なら翌営業日)。郵送の場合は20日以内に届く必要があります。期限を過ぎると入れません。
- 期間:最長2年です。2022年1月からは、本人が申し出れば途中でやめられるようになりました(申し出が受理された月の翌月1日に資格がなくなります)。
- 保険料:退職時の標準報酬月額と、協会けんぽ全体の平均のうち低いほうに保険料率をかけます。協会けんぽの令和8年度の上限は32万円です。在職中は会社が半分払っていた分も、全額自分で払います。保険料は原則2年間変わりませんが、保険料率(健康保険・介護保険・子ども・子育て支援金)や標準報酬月額の上限が変わったとき、40歳や65歳になって介護保険料の扱いが変わったときなどは変わります。保険料率は住んでいる都道府県のものを使います。
- 前納の割引:6か月分や12か月分をまとめて前納すると、保険料が割り引かれます(年4%、複利現価法による)。
東京都の令和8年度の保険料率は、健康保険9.85%、40〜64歳の介護保険1.62%、子ども・子育て支援金0.23%(任意継続にもかかります)。上限の32万円で計算すると、
- 40〜64歳:32万円×11.70%=月37,440円(年449,280円)
- 65歳以上:32万円×10.08%=月32,256円(年387,072円)。65歳からの介護保険料は、市区町村に別に納めます
保険料率は都道府県ごとに違います。また、会社が独自に作っている健康保険組合の任意継続は、組合の規約で、標準報酬月額の決め方(上限)を協会けんぽと違う形にできます。組合に入っていた人は、組合に確かめてください。
② 国民健康保険——前年の所得で決まる
国民健康保険の保険料は、前年の所得をもとに世帯単位で決まります。退職した年の翌年度までは、働いていたときの給料が元になるので、高くなりやすいのが特徴です。届出は退職日の翌日から14日以内で、遅れても、資格ができた月までさかのぼって保険料を納めることになります。
東京23区(文京区・新宿区・世田谷区など)の令和8年度の計算は、次のとおりです。所得割は「前年の総所得金額等−43万円」にかけます。
| 所得割 | 均等割(1人あたり) | 年間の上限 | |
|---|---|---|---|
| 医療分 | 7.51% | 47,600円 | 67万円 |
| 後期高齢者支援金分 | 2.80% | 17,600円 | 26万円 |
| 介護分(40〜64歳の人だけ) | 2.43% | 17,800円 | 17万円 |
| 子ども・子育て支援金分 | 0.27% | 1,873円(18歳以上の人だけ) | 3万円 |
解雇・雇い止めなどで辞めた人には軽減がある
倒産・解雇・雇い止めなど、自分の意思によらずに離職した65歳未満の人(雇用保険の「特定受給資格者」「特定理由離職者」。離職理由コード11・12・21・22・23・31・32・33・34)は、前年の給与所得を100分の30とみなして保険料を計算する軽減があります。期間は離職日の翌日の月から、その翌年度末までで、届出が必要です(文京区など)。
ただし、定年退職(離職理由コード25)は対象外です(茂原市など)。定年後の再雇用の契約期間が終わって辞めた場合などは、雇用保険の受給資格者証に書かれた離職理由コードで確かめてください。
③ 家族の被扶養者——条件を満たせば保険料なし
子や配偶者が会社の健康保険に入っていれば、その被扶養者になる方法があります。本人の保険料はかかりません。日本年金機構の案内では、主な条件は次のとおりです。
- 年間収入が130万円未満(60歳以上または障害のある人は180万円未満)
- 同居なら、家族(被保険者)の年間収入の半分未満。別居なら、家族からの仕送り額未満
ここでいう収入には、年金や失業給付(雇用保険の基本手当)も含まれます。たとえば雇用保険の受給者は、日額3,611円以下なら条件を満たすと案内されています(130万円を基準にした額)。60歳以上は180万円が基準で、目安は日額5,000円未満(4,999円以下)です。ほかの収入や、生計を支えられているかどうかも含めて、加入先の健康保険が認定します。失業給付を受けている間は扶養に入れず、受け終わってから入る、ということも起こります。
なお、75歳になると全員が後期高齢者医療に移るので、家族の扶養からは外れます。
例——60歳で定年退職した場合(東京23区・ひとり暮らし)
前年(在職中)の給与収入が700万円、退職時の標準報酬月額が50万円の人が、60歳で定年退職した場合の1年目の試算です。
| 1年目の保険料(年額) | 計算 | |
|---|---|---|
| ① 任意継続(協会けんぽ・東京) | 約44万9千円(月37,440円) | 標準報酬月額50万円でも上限の32万円×11.70% |
| ② 国民健康保険(東京23区) | 約70万5千円(月約5万9千円) | 給与所得520万円−43万円=477万円に所得割13.01%、均等割84,873円 |
| (参考)解雇・雇い止めなどの軽減がある場合の国保 | 約23万2千円 | 給与所得を30%の156万円とみなした場合。定年退職は対象外 |
この例では、1年目は任意継続のほうが年25万円ほど安くなります。ただし、国保は前年の所得で毎年計算し直されるので、退職した年の収入が少なければ、それをもとに計算される年度の国保は大きく下がることがあります。任意継続は途中でやめられるので、国保の保険料が下がる年度になったら、市区町村の試算で比べ直して切り替えるという選び方もあります(やめる申し出は、やめたい月の前の月に出します)。
家族を扶養している人は、任意継続なら家族の分の保険料がかからず、国保なら人数分の均等割がかかる点も比べてください。国保の保険料は、多くの区市町村がホームページに試算のページや早見表を載せています。
60歳未満で退職した人は、年金の手続きも
20歳以上60歳未満で会社を辞めた人のうち、退職日の翌日から途切れずに再就職先の厚生年金に入る人や、会社員などの配偶者に扶養されて第3号被保険者になる人以外は、国民年金の第1号被保険者への切り替えの届出が必要です(退職日の翌日から14日以内、市区町村)。再就職までに空いた期間がある場合も、その期間は切り替えが必要です。辞めた人に扶養されていた20歳以上60歳未満の妻や夫(第3号被保険者)も、厚生年金にも第3号にも当たらなくなる場合は、第1号への切り替えが必要なので、一緒に届け出ます。年金の加入の仕組みは国民年金と厚生年金の違いにまとめました。
チェックリスト
- 任意継続を考えるなら、退職日の翌日から20日以内。退職前に保険料の額を確かめておく
- 市区町村の国保の試算ページか早見表で、前年の所得をもとにした保険料を出してみる
- 解雇・雇い止めなどで辞めた65歳未満の人は、国保の軽減の届出をする(離職理由コードを確認)
- 家族の扶養に入れるか、年金・失業給付も含めた収入で確かめる
- 任意継続を選んだら、2年目以降は国保と比べ直す(途中でやめられる)
定年前後のお金を、順番に
定年前後の保険の見直しは定年前後の保険の見直し、退職した翌年の税金や保険料の山は年金の手取り、退職金の税金は退職金の税金、65歳までの手続きは65歳までに必ずやる手続きへ。
「うちはこれを選んだ」という話は、質問・リクエスト箱から教えてください。
このテーマをまとめて読む:老後資金のまとめ
出典
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「任意継続」(保険料は原則2年間変わらないが、保険料率・標準報酬月額の上限の変更や65歳到達などで変更、退職後は任意継続・国民健康保険・家族の被扶養者の3つの選択、保険料を比較のうえ選択、被扶養者の保険料負担はない、保険料は都道府県別保険料率〈子ども・子育て支援金率を含む〉、前納で年4%〈複利現価法〉の割引) (2026年10月3日確認)
- 協会けんぽ よくある質問「任意継続の加入条件」(資格喪失日の前日まで継続して2か月以上、資格喪失日から20日以内〈20日目が土日・祝日は翌営業日〉、郵送は20日以内必着) (2026年10月3日確認)
- 協会けんぽ よくある質問「任意継続の加入期間」(退職日の翌日に資格を取得し加入期間は2年間) (2026年10月3日確認)
- 協会けんぽ「令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限」(上限は32万円、全被保険者の標準報酬月額の平均額318,100円) (2026年10月3日確認)
- 協会けんぽ「令和8年度 都道府県単位保険料率」(東京都 9.91%→9.85%) (2026年10月3日確認)
- 協会けんぽ「子ども・子育て支援金率」(任意継続被保険者は令和8年4月分から0.23%) (2026年10月3日確認)
- 協会けんぽ「令和8年度 保険料額表(東京都)」(標準報酬月額32万円:健康保険31,520円・介護保険第2号該当36,704円・子ども・子育て支援金736円〈全額〉、任意継続の標準報酬月額の上限は320,000円) (2026年10月3日確認)
- 厚生労働省「健康保険法等の一部改正に伴う任意継続被保険者制度の見直しに関するQ&A」(令和3年11月10日。本人の申出による資格喪失は申出が受理された日の属する月の翌月1日、健保組合は規約で標準報酬月額の決め方を設定可能、令和4年1月1日施行) (2026年10月3日確認)
- 文京区「国民健康保険料の計算方法」(令和8年度:基礎分7.51%・47,600円・限度額67万円、後期高齢者支援金分2.80%・17,600円・26万円、介護分2.43%・17,800円・17万円、子ども・子育て支援金分0.27%・1,873円〈18歳以上のみ負担〉・3万円、算定基礎額=総所得金額等−43万円)※自治体の例 (2026年10月3日確認)
- 世田谷区「国民健康保険の加入」(加入すべき事由が発生した日から14日以内に届出、保険料は前年の所得をもとに世帯単位で算定)※自治体の例 (2026年10月3日確認)
- 新宿区「国民健康保険の届出」(国保の資格が生じた月までさかのぼって保険料を納める)※自治体の例 (2026年10月3日確認)
- 文京区「非自発的失業者の国民健康保険料の軽減」(離職時65歳未満、離職理由コード11・12・21・22・23・31・32・33・34、前年の給与所得を100分の30として算定、離職日の翌日の属する月から翌年度末まで、届出が必要)※自治体の例 (2026年10月3日確認)
- 茂原市「非自発的失業者に係る国民健康保険税の軽減」(離職理由コードが25〈定年退職〉の場合は該当にならない)※自治体の例 (2026年10月3日確認)
- 日本年金機構「従業員が家族を被扶養者にするとき」(年間収入130万円未満〈60歳以上または障害者は180万円未満〉かつ同居なら被保険者の年間収入の半分未満・別居なら仕送り額未満、雇用保険等の受給者は日額3,611円以下、後期高齢者医療の被保険者は被扶養者になれない) (2026年10月3日確認)
- 日本年金機構「国民年金の加入手続き」(20歳以上60歳未満で厚生年金に加入していない方は第1号または第3号、退職日の翌日から14日以内に市区町村へ) (2026年10月3日確認)
- 日本年金機構 よくある質問「夫が退職したときの妻の国民年金」(第1号被保険者として加入するため届出が必要) (2026年10月3日確認)