国民年金と厚生年金の違い——「1階と2階」で分かる、誰が入り・いくら払い・いくらもらうか。会社員は両方に入っています。2026年10月・2027年10月からパートの加入が段階的に広がります
「国民年金と厚生年金、うちはどっち?」——この質問には、じつは「両方」という答えがよくあります。日本の年金は2階建てで、1階の国民年金は全員が入り、2階の厚生年金は会社員・公務員がその上に乗せて入るしくみだからです。
この記事では、まず1枚の表で違いを見て、それから1階・2階の順にほどいていきます。金額は令和8年度(2026年4月〜2027年3月)のものです。
まず1枚の表で
| 国民年金(1階・基礎年金) | 厚生年金(2階) | |
|---|---|---|
| 誰が入る | 日本に住む20歳以上60歳未満の全員(自営業・学生・無職の人は自分で手続き) | 会社・役所などに勤める70歳未満の人(勤め先が手続き) |
| 保険料 | 月17,920円の定額(収入に関係なく同じ) | 給料と賞与の18.3%を、本人と会社が半分ずつ負担(本人は9.15%) |
| 老後にもらう額 | 納めた月数で決まる。40年納めた満額が月70,608円 | 給料の額と加入した月数で決まる。1階の基礎年金に上乗せして受け取る |
| 実際の平均(令和6年度末) | 月54,578円(厚生年金・共済年金の受給権がない、国民年金だけの人) | 月150,289円(1階+2階の合計) |
| もらう条件 | 納付と免除を合わせて10年以上、原則65歳から | 1階の10年を満たし、厚生年金に1か月以上入っていれば、原則65歳から |
| 障害・遺族 | 障害基礎年金(1級・2級)、遺族基礎年金(子のある配偶者か子) | 障害厚生年金(1〜3級・障害手当金)、遺族厚生年金(配偶者・子など)を上乗せ |
1階「国民年金」——全員が入る、定額の土台
国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満の人が職業に関係なく全員入る制度です。ただし、入り方が3通りあります。
- 第1号——自営業・農業・学生・無職の人など。自分で市区町村に届け出て、月17,920円を自分で納めます
- 第2号——会社員・公務員。厚生年金に入ることで、国民年金にも自動的に入っています。国民年金の保険料を別に払う必要はありません(厚生年金の保険料に含まれています)
- 第3号——第2号の人に扶養されている配偶者(年収の目安130万円未満など)。本人の保険料負担はゼロですが、納めた期間として扱われ、老後の基礎年金は受け取れます
老後に受け取る老齢基礎年金は、収入とは関係なく、何か月納めたかだけで決まります。40年(480月)すべて納めると満額の月70,608円、たとえば35年(420月)なら約61,800円です。免除を受けた期間は一部が計算に入り、未納の期間は入りません。
「払えない」ときのために、所得が少ない人の免除、50歳未満の納付猶予、学生納付特例があります。免除や猶予の期間は10年の受給資格に数えられ、原則として10年以内なら、あとから納める(追納)こともできます。手続きをせずに未納にしておくと、資格の期間にも額にも入らず、万一のときの障害基礎年金も受け取れないことがあります。
2階「厚生年金」——会社員・公務員が給料に応じて上乗せで入る
厚生年金は、会社・役所などに勤める70歳未満の人が入ります。手続きも保険料の納付も勤め先がやるので、本人は給料から天引きされるだけです。
保険料は給料と賞与の18.3%で、本人と会社が半分ずつ負担します。この率は平成29年9月以降、固定されています。給料が上がれば保険料も上がりますが、計算のもとになる「標準報酬月額」には上限があり、いまは月65万円です(2027年9月から68万円、2028年9月から71万円、2029年9月から75万円に段階的に引き上げ)。
老後に受け取る老齢厚生年金は、現役時代の給料の平均と加入した月数に比例します。給料が高く、長く勤めた人ほど多くなります。式は年金はいくらもらえるかに書きましたが、一つの目安として、賞与込みの平均月収35万円で38年勤めた人の2階部分は月約7万3千円、1階の満額と合わせて月約14万4千円という見当です。
大事なのは、厚生年金の人は1階も受け取るということです。「厚生年金だから国民年金はもらえない」ということはありません。定期便や統計の「厚生年金の平均15万円」は、1階と2階を合わせた額です。
障害・遺族のときの違い
年金は老後のためだけではなく、障害を負ったときと亡くなったときの保障でもあります。ここでも1階と2階の差が出ます。
- 障害——1階の障害基礎年金は1級・2級だけ(2級が月70,608円、1級はその1.25倍)。2階の障害厚生年金は3級まであり、さらに軽い場合の障害手当金(一時金)もあります。会社員のほうが、対象になる範囲が広い形です
- 遺族——1階の遺族基礎年金は18歳になる年度末までの子(障害等級1級・2級の子は20歳未満)がいる配偶者、またはその子にしか出ません(年847,300円に子の加算)。2階の遺族厚生年金は、子のいない配偶者や父母なども対象になり、額は亡くなった人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3が基本です。ここは制度改正が続いている分野で、詳しくは遺族年金の「2つの5年」と夫婦の年金が、ひとり分になるときをどうぞ
パートで働く人はどちらに入るか——2026年10月・2027年10月から段階的に広がります
いまパートやアルバイトで働いている人が厚生年金に入るかどうかは、働き方と勤め先の規模で、2段階で決まります。
- まず、週の労働時間と月の労働日数が、その職場の正社員の4分の3以上なら、勤め先の規模に関係なく厚生年金に入ります
- 4分の3未満の「短時間労働者」は、週20時間以上・月給8.8万円以上・2か月を超えて働く見込み・学生でない、そして勤め先の厚生年金の加入者が51人以上、の条件をすべて満たすと入ります
この2つ目の条件が、2025年6月に成立した年金制度改正法で、順に広がります。
| 時期 | 変わること |
|---|---|
| 2026年10月〜(予定) | 「月給8.8万円以上」の条件(いわゆる106万円の壁)がなくなる。法律上は公布から3年以内の政令で決まる日で、厚生労働省は2026年10月の撤廃を予定と案内しています |
| 2027年10月〜 | 勤め先の加入者36人以上で対象に |
| 2029年10月〜 | 同21人以上で対象に。常時5人以上を雇う個人事業所も、業種を問わず新たに対象に(その時点で既にある事業所は当分の間、対象外) |
| 2032年10月〜 | 同11人以上で対象に |
| 2035年10月〜 | 企業の規模の条件がなくなる |
厚生年金に入ると、保険料の本人負担(給料の9.15%)は増えますが、会社が同じ額を負担し、老後の2階部分と、障害・遺族の保障が増えます。第3号だった配偶者が入る場合は「保険料ゼロ」から「保険料あり」になるので、手取りとの兼ね合いをよく確かめてください。なお、適用拡大で新たに加入する短時間労働者(週20時間以上・月収13万円未満・学生でない、などの条件あり)については、本人の保険料負担を通算3年間軽くする「保険料調整制度」があります。ただし、対象の事業所がこの制度を利用した場合に限られ、自動ではありません。
自営業・フリーランスの人が「2階」の代わりにできること
第1号の人は、そのままでは1階しかありません。国が用意している上乗せの制度は次のとおりです。ここでは制度の名前と性格だけ並べ、どれが向くかは人によります。
- 付加年金——国民年金の保険料に月400円を足して納めると、「200円×納めた月数」が毎年の基礎年金に上乗せされます。2年受け取れば元が取れる計算で、いちばん手軽です
- 国民年金基金——第1号の人が任意で入る、公的な上乗せ年金。掛金は全額が所得控除の対象です(付加年金とは同時に入れません)
- iDeCo(個人型確定拠出年金)——自分で掛金を出し、自分で運用する制度。掛金は所得控除の対象ですが、運用の結果で受け取る額は変わります。受け取り方には退職金との関係などの注意もあります
- 60歳からの任意加入——40年に満たない人は、60歳から65歳まで納めて満額に近づけられます
よくある勘違い3つ
- 「厚生年金に入っていたから、国民年金はもらえない」——逆です。厚生年金の人は国民年金にも入っているので、1階と2階の両方を受け取ります
- 「第3号(専業主婦・主夫)は保険料を払っていないから、年金はない」——第3号の期間は納めた期間として扱われ、老齢基礎年金は受け取れます。ただし2階はないので、額は1階分だけです
- 「10年払えば満額もらえる」——10年は「もらう資格」ができる最低ラインで、額は納めた月数に比例します。10年なら満額の4分の1(月約17,700円)です
今日できること
- ねんきん定期便かねんきんネットで、自分の加入記録に「国民年金」と「厚生年金」の期間がそれぞれ何か月あるかを見る。未納や、空白の期間がないかも一緒に
- 会社員の配偶者で、これからパートの時間を増やす予定の人は、正社員の4分の3を超えるかどうか、勤め先の加入者数、2026年10月以降の予定を確かめておく
- 自営業の人は、付加年金の申し出を市区町村の窓口でしているか確かめる(申し出た月から始まります)
年金は「どちらか一方」ではなく「土台と上乗せ」です。自分がいま、どの階に、何か月分の積み上げがあるのか——それを知るだけで、老後の見通しはかなりはっきりします。
自分の階を確かめる
自分の額の見方は年金はいくらもらえるか——ねんきん定期便の見方、65歳の請求手続きは65歳までに必ずやる手続き、額面から手取りへは天引きされる5つの正体をどうぞ。働きながら受け取る人は在職老齢年金の目安計算で確かめられます。
「うちはどの区分?」という質問は、質問・リクエスト箱から教えてください。
出典
- 日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」(令和8年4月現在:第1号・第2号・第3号の区分と保険料の納め方、国民年金保険料 月17,920円、付加保険料 月400円で200円×月数、任意加入、厚生年金保険は適用事業所に常時使用される70歳未満、保険料は加入者と事業主が半分ずつ、免除・納付猶予・学生納付特例、障害・遺族年金のしくみ) (2026年9月17日確認)
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」(老齢基礎年金の満額 月70,608円、標準的な年金額 夫婦2人分で月237,279円) (2026年9月17日確認)
- 日本年金機構「国民年金保険料」(令和8年度 月額17,920円、付加保険料 月400円) (2026年9月17日確認)
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」(保険料率18.3%で固定〈平成29年9月以降〉、事業主と被保険者が半分ずつ負担、標準報酬月額は1等級8万8千円〜32等級65万円) (2026年9月17日確認)
- 日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」(受給資格期間10年、計算式 847,300円×納付月数等÷480月、免除期間の反映割合、付加年金) (2026年9月17日確認)
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(令和6年度末:厚生年金保険〈第1号〉老齢年金受給権者の平均年金月額150,289円〈基礎年金を含む〉、国民年金 老齢年金受給者の平均年金月額59,431円〈厚生年金等の併給者を含む〉・基礎のみ共済なし〈厚生年金・共済年金の受給権がない人〉54,578円) (2026年9月17日確認)
- 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」(週20時間以上・月額賃金8.8万円以上・2か月を超える雇用の見込み・学生でない・被保険者数51人以上の特定適用事業所) (2026年9月17日確認)
- 日本年金機構 Q&A「短時間労働者の資格取得要件」(1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上なら企業規模にかかわらず被保険者、4分の3未満は4要件で判定) (2026年9月17日確認)
- 厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト「社会保険加入の要件」(月額8.8万円以上の賃金要件は2026年10月に撤廃予定、企業規模要件の段階的拡大) (2026年9月17日確認)
- 厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト「支援制度について」(保険料調整制度:事業主が従業員の保険料を一時的に負担することで従業員の負担を通算3年間軽減できる。3年目は割合が半減) (2026年9月17日確認)
- 日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」(子=18歳到達年度の末日までにある子、障害の状態にある場合は20歳未満) (2026年9月17日確認)
- 厚生労働省「年金制度改正法(令和7年6月13日成立)法律説明資料(概要版)」(企業規模要件の段階的撤廃:36〜50人は2027年10月・21〜35人は2029年10月・11〜20人は2032年10月・1〜10人は2035年10月、賃金要件の撤廃は公布から3年以内の政令で定める日、5人以上の個人事業所は2029年10月〈既存は当分対象外〉、標準報酬月額の上限 65万→68万〈2027年9月〉→71万〈2028年9月〉→75万円〈2029年9月〉、新たに加入対象となる短時間労働者への3年間の保険料負担軽減) (2026年9月17日確認)