年金はいくらもらえるか——国の目安は基礎年金の満額が月70,608円、標準的な夫婦で月237,279円(令和8年度)。実際の平均は厚生年金で月15万円、国民年金だけなら月5万5千円。自分の額は「ねんきん定期便」の見方で分かります
「結局、自分は年金をいくらもらえるのか」。いちばん多い質問なのに、答えが一つではないのがこの話です。年金は、何年納めたかと現役時代の給料がいくらだったかで人ごとに変わるからです。
この記事では、まず国が示す目安と実際に受け取っている人の平均を押さえ、そのうえで自分の額を確かめる方法(ねんきん定期便の見方と、手元にないときの概算の式)を順番に説明します。金額はすべて令和8年度(2026年4月〜2027年3月)のものです。
国の目安——基礎年金の満額は月70,608円、標準的な夫婦で月237,279円
日本年金機構が毎年4月に公表する「年金額」には、2つの目安が載っています。
| 目安 | 令和8年度の額(月額) | どういう人の額か |
|---|---|---|
| 老齢基礎年金の満額 | 70,608円(年847,300円) | 20歳から60歳までの40年間、国民年金の保険料をすべて納めた人の1人分(昭和31年4月1日以前生まれは70,408円) |
| 標準的な年金額(夫婦2人分) | 237,279円 | 平均的な収入(賞与を含む月額換算で45.5万円)で40年間会社勤めをした人の老齢厚生年金と、夫婦2人分の満額の老齢基礎年金を合わせた額 |
2つ目の「標準的な年金額」は、いわゆるモデル年金です。「会社員の夫と、40年間ずっと国民年金だけの妻」という昔ながらの世帯を想定した数字なので、共働きの夫婦や、ひとり暮らしの方には当てはまりません。ここでは「国は夫婦2人で月24万円弱を標準としている」という、ものさしとして覚えておけば十分です。
実際の平均——厚生年金は月15万円、国民年金だけなら月5万5千円
目安ではなく、いま実際に受け取っている人の平均を見ると、景色が少し変わります。厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」(令和6年度末時点)の数字です。
| 受け取っている年金 | 平均月額 | 補足 |
|---|---|---|
| 厚生年金(老齢厚生年金+老齢基礎年金) | 150,289円 | 男性169,967円・女性111,413円。月10万円未満の人が全体の約19%(女性では約38%)、月15万円以上が約50% |
| 国民年金だけ(老齢基礎年金のみ・厚生年金や共済年金の受給権がない人) | 54,578円 | 自営業や専業主婦(夫)の期間が長く、上乗せがない人の平均。なお「老齢基礎年金を受け取っている人全体」の平均は59,431円ですが、これには会社員だった人の基礎年金部分も含まれます |
国民年金だけの平均(約5万5千円)が満額(70,608円)より1万5千円ほど少ないのは、納めた期間が40年に満たない人、免除の期間がある人、繰上げ受給で減額された人なども平均に含まれるためです。逆にいえば、40年きちんと納めた人は満額に近い額を受け取っています。
厚生年金の男女差が月約5万9千円あるのは、現役時代の給料の差と、出産・育児で厚生年金に入っていない期間があることが主な理由です。この差の中身と打てる手は、年金14万円の現実——手取り・生活費・男女差で詳しく書きました。
ただし、平均は「自分の額」ではありません。ここまでの数字は、あくまで全体のものさしです。自分の額は、次の「ねんきん定期便」で確かめるのがいちばん確実です。
自分の額を知る——いちばん確かなのは「ねんきん定期便」
年金に入っている人には、毎年、誕生月に日本年金機構から「ねんきん定期便」が届きます。ふだんははがき、35歳・45歳・59歳の節目の年だけ封書(これまでの全期間の記録つき)です。見るべき場所は年齢で違います。
| 年齢 | 定期便に載っている年金額 | 意味 |
|---|---|---|
| 50歳未満 | 「これまでの加入実績に応じた年金額」 | 今までに納めた分だけで計算した額。これから納める分は入っていないので、若い人ほど小さく見えます |
| 50歳以上60歳未満 | 「老齢年金の種類と見込額(年額)」 | いまの働き方が60歳まで続くと仮定して、65歳から受け取れる額。転職・退職・給料の変化があれば変わります |
| 60歳以上65歳未満 | 同上 | 定期便を作った時点の加入実績で計算した、65歳からの見込額 |
見るときの注意が3つあります。
- 年額で書いてあります。「見込額 1,800,000円」なら、12で割って月15万円です
- 額面です。ここから税金・健康保険料・介護保険料が引かれます(後述)
- 50歳以上の定期便には、受け取りを70歳・75歳まで遅らせた場合の額も載っています。70歳まで遅らせると最大42%増、75歳なら最大84%増の計算です。増やす代わりに、その間は年金がゼロなので、得かどうかは何歳から受け取るのが正解かと損益分岐の計算機で確かめてください
定期便が手元にない、もう捨ててしまった、という方は「ねんきんネット」(日本年金機構のサイト。マイナポータルからも入れます)で同じ内容がいつでも見られます。また、定期便の二次元コードを読み取ると、厚生労働省の「公的年金シミュレーター」で、働き方を変えた場合の見込額を試算できます。
定期便が手元にないとき——ざっくり自分で計算する式
正確な額は定期便に譲るとして、「だいたいいくらか」は2つの式で見当がつきます。
① 老齢基礎年金(1階)
847,300円 × 保険料を納めた月数 ÷ 480月(年額)
480月は40年分です。たとえば納めた月数が420月(35年)なら、847,300円×420÷480=年741,388円、月約61,800円です。会社員だった期間(第2号)や、会社員の配偶者として扶養されていた期間(第3号)も「納めた月数」に数えます。全額免除だった期間は月数の2分の1として計算されます(平成21年4月以降の分)。
② 老齢厚生年金(2階・会社員だった期間の分)
平均年収 ÷ 12 × 5.481 ÷ 1000 × 会社勤めの月数(年額・平成15年4月以降の期間)
「平均年収÷12」は、賞与も含めた現役時代の平均月収(正確には「平均標準報酬額」)です。たとえば賞与込みの平均月収が35万円で38年(456月)勤めた人なら、35万円×5.481÷1000×456=年約874,800円、月約72,900円。これに①の満額70,608円を足すと、月約143,500円という見当になります。
この式は概算です。平成15年3月以前の期間は係数が7.125で賞与を含まない計算になること、昔の給料を今の価値に直す「再評価」があること、65歳未満の配偶者がいる場合の加給年金などで、実際の額は前後します。「ものさし」として使い、正確な額は定期便で確かめてください。
「額面」と「手取り」は別の数字です
定期便の額も、この記事の平均も、すべて額面です。年金からは、所得税・住民税・国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)・介護保険料が天引きされます。額面15万円の場合、手取りが13万円台になるケースもあります(世帯構成・年齢・お住まいの自治体・住民税がかかるかどうかで変わります)。何がどう引かれるかは年金15万円の振込は13万4千円——天引きされる5つの正体で、住民税がかからない分かれ目は住民税非課税ライン判定で確かめられます。
また、65歳を過ぎても会社勤めを続ける方は、給料と年金の合計が一定額を超えると老齢厚生年金の一部が止まる仕組み(在職老齢年金)があります。パート程度の収入ならまず影響しませんが、目安は在職老齢年金の目安計算でどうぞ。
これから増やせる余地
「思ったより少なかった」という方に、年金そのものを増やす公的な方法を並べます。どれも国の制度で、投資ではありません。
- 60歳から65歳までの任意加入——国民年金の納付が40年に満たない人は、60歳以降も申し出て納めることで、満額に近づけられます(会社員として厚生年金に入っている間は対象外)
- 付加保険料——国民年金の第1号の人が月400円を上乗せして納めると、「200円×納めた月数」が毎年の基礎年金に上乗せされます。2年で元が取れる計算です
- 免除期間の追納——免除や猶予を受けた期間は、10年以内ならあとから納める(追納する)ことができ、納めた期間として計算されます。承認を受けた期間の翌年度から数えて3年度目以降に追納すると、当時の保険料に加算額がつきます
- 会社勤めを続ける——厚生年金には70歳になるまで加入でき、働いた分だけ2階が増えます
- 受け取りを遅らせる(繰下げ)——1か月遅らせるごとに0.7%増。ただし待つ間は年金がなく、増えた分にも税・保険料がかかります。夫婦の一方が亡くなったあとの年金には反映されない部分もあるので、「基礎だけ繰下げ」という選択肢もあわせてどうぞ
今日できること3つ
- 直近のねんきん定期便を探す。50歳以上なら「見込額(年額)」を12で割る。50歳未満なら「これまでの実績」であることを頭に置いて見る
- 見当たらなければねんきんネットに登録する(定期便に載っている17桁のアクセスキーがあると手続きが早い。なくてもマイナンバーカードで入れます)
- 出てきた額面を、天引きの記事で手取りに直し、いまの生活費と並べてみる。足りるか足りないかは、平均ではなく、この2つの数字で決まります
年金の額は「決まっている」ものではなく、これからの働き方と受け取り方で動きます。まず今の数字を知ることが、動かす第一歩です。
自分の数字に置きかえる
額面が分かったら、天引きされる5つの正体で手取りに直し、繰上げ・繰下げ 損益分岐で受け取り方を比べ、年金の受け取り方タイプ診断で自分に合う形を見てください。老後の全体像は老後資金はいくら必要か、国民年金と厚生年金のしくみの違いは国民年金と厚生年金の違いをどうぞ。
「定期便のこの欄はどう読む?」という質問は、質問・リクエスト箱から教えてください。
出典
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」(老齢基礎年金の満額 月70,608円〈昭和31年4月2日以後生まれ〉・70,408円〈4月1日以前生まれ〉、標準的な年金額 夫婦2人分で月237,279円〈平均標準報酬45.5万円で40年就業〉) (2026年9月17日確認)
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(令和6年度末:厚生年金保険〈第1号〉老齢年金受給権者の平均年金月額150,289円・男子169,967円・女子111,413円〈基礎年金を含む〉、国民年金 老齢年金受給者の平均年金月額59,431円〈厚生年金等の併給者を含む〉・基礎のみ共済なし〈厚生年金・共済年金の受給権がない人〉54,578円。年金月額階級別の受給権者数は参考資料3から算出) (2026年9月17日確認)
- 日本年金機構「国民年金保険料の追納制度」(追納が承認された月の前10年以内の免除等期間、承認を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降は加算額) (2026年9月17日確認)
- 日本年金機構「老齢年金ガイド 令和8年度版」(老齢基礎年金の計算式 847,300円×納付月数等÷480月、免除期間の反映割合、付加年金200円×月数、老齢厚生年金の報酬比例部分の計算式 平均標準報酬額×5.481/1000×月数〈平成15年4月以降〉・平均標準報酬月額×7.125/1000×月数〈平成15年3月以前〉、経過的加算) (2026年9月17日確認)
- 日本年金機構「大切なお知らせ、『ねんきん定期便』をお届けしています」(毎年誕生月に送付、35歳・45歳・59歳は封書、50歳未満は加入実績に応じた年金額、50歳以上は見込額) (2026年9月17日確認)
- 日本年金機構「『ねんきん定期便』の様式(サンプル)と見方ガイド(令和8年度送付分)」(50歳以上の見込額は現在の加入制度に60歳まで継続して加入したと仮定して計算、60〜64歳は作成時点の実績、70歳・75歳まで遅らせた場合の額〈最大42%増・84%増〉、二次元コードで公的年金シミュレーターにつながる) (2026年9月17日確認)
- 日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」(令和8年4月現在:任意加入は年金額を増やしたい人は65歳になるまで、付加保険料 月400円で200円×月数の上乗せ、厚生年金保険は70歳未満が加入) (2026年9月17日確認)
- 厚生労働省「公的年金シミュレーター」 (2026年9月17日確認)