誠一の老後メモ

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年金14万円の現実——手取り・生活費・男女差を数字で見る

「年金14万円」。厚生年金を受け取っている人の平均額は、この記事を書いた時点の最新統計(令和5年度末)で月およそ14万6千円でした。その後に公表された令和6年度末の統計では月150,289円に上がっています(どちらも民間会社員などが加入する厚生年金保険〈第1号〉の老齢年金受給権者の平均で、基礎年金を含みます。厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」)。ただし、これは額面です。この記事では、額面14万6千円の例をもとに、手取り・生活費・男女差という3つの視点で、この数字の中身を見ていきます。

先にお断りしておくと、「平均」はあくまで受け取っている人全体をならした数字です。現役時代の働き方で大きく変わるので、ご自身の額はねんきんネットで確かめるのがいちばん確実です。

視点① 手取りは約13万3千円

年金からは、条件に応じて介護保険料・国民健康保険料(75歳からは後期高齢者医療保険料)・住民税・所得税などが差し引かれます。以下では、年金から天引きされるか別に納めるかを問わず、年間の負担額を月平均に直して手取りを試算します。次の視点②で比べる生活費が「65歳以上・ひとり暮らし」の平均なので、手取りも同じ条件で試算します。65歳・ひとり暮らし・収入は年金だけ(額面 月14万6千円=年175万2千円で、前年も同じ)・東京都文京区・国民健康保険・令和8年度のモデルです。

引かれるもの年額(試算)計算の根拠
介護保険料84,300円文京区の第6段階(本人が住民税課税で合計所得120万円未満)
国民健康保険料約57,000円所得割は(年金所得65.2万円−43万円)×10.58%=約23,500円。均等割67,073円は所得基準(43万円+31万円)以下なので5割軽減で約33,500円
住民税約10,500円均等割5,000円+所得割(65.2万円−基礎控除43万円−社会保険料控除約14.1万円=約8万円の10%)−調整控除2,500円
所得税0円年金所得65.2万円は基礎控除(令和8年分104万円)より少なく、課税所得がない。年金の年額175.2万円は65歳以上の源泉徴収の基準(年205万円)にも達しないので、このモデルでは源泉徴収もない
合計約151,800円(月約12,650円)額面146,000円 → 手取り約13万3千円(手取り率約91%)

年金所得は、額面175万2千円から公的年金等控除110万円(65歳以上・年金収入330万円以下)を引いた65万2千円です。保険料は自治体ごとに決まるため、同じ年金額でも住む場所によって手取りは変わります。何がどう引かれるかの仕組みは天引きされる5つの正体に書きました。

ねんきん定期便に書かれているのはすべて額面です。

視点② 単身の平均生活費には届かない

総務省の家計調査(2025年平均)では、65歳以上・単身無職世帯の消費支出は月14万8,445円。内訳は食費約4万2千円、光熱・水道約1万5千円、保健医療約8千円、住居約1万1千円などです(このほかに税金・社会保険料が月12,990円かかりますが、手取りと比べるときは消費支出だけを見ます)。

手取り13万3千円との差は月約1万5千円。1年で約18万円、30年続けば約540万円になります。しかもこの生活費には2つの注意があります。

  • 住居費1万1千円は、持ち家の世帯も含めた平均です。家計調査では持ち家の「家賃相当額」や住宅ローンの返済は住居費に入らないため低く見えます。賃貸の方はこの数字をそのまま当てはめられず、実際の家賃に置き換えると不足はもっと大きくなります
  • 介護費用は、介護を使っていない世帯も含めた平均に薄く混ざっているだけです。実際に介護が始まったときの額は別に見積もる必要があります。生命保険文化センターの2024年度調査では、介護の一時的な費用は平均47.2万円、月々の費用は平均9.0万円、期間は平均55ヶ月(約4年7ヶ月)。単純に合計すると約542万円になりますが、これは平均同士を組み合わせた目安で、実際は人によって大きく違います

数字を怖がらせるために並べているのではありません。「額面で計画を立てると、この分がまるごとずれる」ということを、先に知っておくためのものです。

視点③ 男女差——女性の平均は月11万1千円

平均を男女で分けると、景色が変わります(厚生年金保険〈第1号〉の老齢年金受給権者・令和6年度末・厚生労働省統計)。

厚生年金の平均月額(基礎込み)
男性169,967円
女性111,413円

差は月約5万9千円。厚生年金を受け取る女性の約4割が月10万円未満です(男性は約1割)。理由は主に2つ——現役時代の賃金の差がそのまま年金額に反映されること、出産・育児・介護による離職で加入期間が短くなりやすいことです。

国民年金だけの方は、満額でも月約7万円(令和8年度で70,608円。昭和31年4月1日以前生まれは70,408円)で、実際の平均は月約5万4千円です(令和6年度末・厚生年金や共済の受給歴がない「基礎のみ共済なし・旧国年」の受給権者の平均54,412円)。また、配偶者が亡くなったあとの遺族厚生年金は「亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3」が基本で、夫婦2人分の年金がそのまま続くわけではありません。女性は平均寿命が長いぶん、この期間も長くなります。

打てる手は5つある

現実を並べたあとは、動かせるものの話です。どれが合うかは人によるので、選択肢として並べます。

  1. 繰下げ受給——1ヶ月遅らせるごとに0.7%増額。ただし待っている間は年金ゼロで、増えた分には税金・保険料もかかります。得かどうかは金額だけでなく手取りと健康寿命で考える、というのが当サイトの提案です。部分繰下げの記事と損益分岐の計算機をどうぞ
  2. iDeCo——掛金が全額所得控除の対象になります(受け取り方には退職金との10年ルールなどの注意があります)
  3. NISA——運用益が非課税。ただし投資なので値下がりもあります。ここでは「そういう制度がある」に留めます
  4. 65歳以降も働く——月数万円の収入で毎月の赤字は大きく変わります。在職老齢年金(働くと年金が減る仕組み)は基準額があり、パート程度の収入ならまず影響しません
  5. 支出の見直し——通信費・使っていない契約の整理など。医療保険を見直すときは、高額療養費という公的な上限があることを知ったうえで判断すると、落ち着いて考えられます。保険の見直しを誰かに相談するなら、相談先ごとの立場の違いを老後のお金は誰に相談するかに書きました(保険代理店の無料FP相談(ほけんNaviせつやくん)(PR)も紹介しています)

今日から確かめられること

  1. ねんきんネットで、ご自身の額面を確認する
  2. そこから引かれるものを天引きの記事で確かめて、手取りに直してみる
  3. ご家庭の生活費と並べてみる(平均と比べるより、わが家の数字で見るほうが確かです)

この記事の手取りの金額は東京都文京区・令和8年度のモデル試算です。実際の金額は、お住まいの自治体と所得で変わります。

「平均」より「わが家の数字」

この記事の数字はすべて平均とモデル試算です。ご自身の場合を知る近道は、ねんきんネットで額面を見て、繰下げの計算機や高額療養費の計算機にご自身の数字を入れてみることです。入力した内容は保存されません。

このテーマをまとめて読む:年金のまとめ/老後資金のまとめ

出典

この記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の購入を勧めるものではありません。制度や手数料は改定されることがあります。実際のご契約にあたっては、必ずご自身で最新の条件をご確認ください。