年金14万円の現実——手取り・生活費・男女差を数字で見る
「年金14万円」。厚生年金を受け取っている人の平均額は、月およそ14万6千円です(老齢厚生年金・基礎年金を含む平均、令和6年度の厚生労働省統計)。ただし、これは額面です。この記事では、手取り・生活費・男女差という3つの視点で、この数字の中身を見ていきます。
先にお断りしておくと、「平均」はあくまで受け取っている人全体をならした数字です。現役時代の働き方で大きく変わるので、ご自身の額はねんきんネットで確かめるのがいちばん確実です。
▶ この内容は動画でも解説しています:年金14万円の現実(YouTube)
視点① 手取りは約13万円
年金からは、国民健康保険料・介護保険料・住民税などが天引きされます。東京都文京区のモデルケースの試算では、年間約17万9千円、月あたり約1万5千円が引かれ、額面14万6千円に対して手取りは月約13万1千円になります。何がどう引かれるのかは、天引きされる5つの正体で詳しく書きました。
保険料は自治体ごとに決まるため、同じ年金額でも住む場所によって手取りは変わります。ねんきん定期便に書かれているのはすべて額面です。
視点② 単身の平均生活費には届かない
総務省の家計調査(2025年平均)では、65歳以上・単身無職世帯の消費支出は月16万1,435円。内訳は食費約4万2千円、光熱費約1万5千円、医療費約8千円、住居費約1万1千円などです。
手取り13万1千円との差は月約3万円。1年で36万円、30年続けば約1,080万円になります。しかもこの生活費には2つの前提が隠れています。
- 住居費1万1千円は、ローンを完済した持ち家の前提です。賃貸の方は家賃のぶん、不足はもっと大きくなります
- 介護費用は含まれていません。生命保険文化センターの2024年度調査では、介護の一時的な費用は平均47.2万円、月々の費用は平均9.0万円、期間は平均55ヶ月(約4年7ヶ月)。掛け算すると約540万円になりますが、これは平均同士の掛け算による目安で、実際は人によって大きく違います
数字を怖がらせるために並べているのではありません。「額面で計画を立てると、この分がまるごとずれる」ということを、先に知っておくためのものです。
視点③ 男女差——女性の平均は月11万1千円
「平均14万6千円」を男女で分けると、景色が変わります(令和6年度・厚生労働省統計)。
| 厚生年金の平均月額(基礎込み) | |
|---|---|
| 男性 | 169,967円 |
| 女性 | 111,413円 |
差は月約5万9千円。厚生年金を受け取る女性の6割以上が月10万円未満です。理由は主に2つ——現役時代の賃金の差がそのまま年金額に反映されること、出産・育児・介護による離職で加入期間が短くなりやすいことです。
国民年金だけの方は、満額でも月約7万円(令和8年度で70,608円)です。また、配偶者が亡くなったあとの遺族厚生年金は「亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3」が基本で、夫婦2人分の年金がそのまま続くわけではありません。女性は平均寿命が長いぶん、この期間も長くなります。
打てる手は5つある
現実を並べたあとは、動かせるものの話です。どれが合うかは人によるので、選択肢として並べます。
- 繰下げ受給——1ヶ月遅らせるごとに0.7%増額。ただし待っている間は年金ゼロで、増えた分には税金・保険料もかかります。得かどうかは金額だけでなく手取りと健康寿命で考える、というのが当サイトの提案です。部分繰下げの記事と損益分岐の計算機をどうぞ
- iDeCo——掛金が全額所得控除の対象になります(受け取り方には退職金との10年ルールなどの注意があります)
- NISA——運用益が非課税。ただし投資なので値下がりもあります。ここでは「そういう制度がある」に留めます
- 65歳以降も働く——月数万円の収入で毎月の赤字は大きく変わります。在職老齢年金(働くと年金が減る仕組み)は基準額があり、パート程度の収入ならまず影響しません
- 支出の見直し——通信費・使っていない契約の整理など。医療保険を見直すときは、高額療養費という公的な上限があることを知ったうえで判断すると、落ち着いて考えられます
今日から確かめられること
この記事の手取りの金額は東京都文京区・令和8年度のモデル試算です。実際の金額は、お住まいの自治体と所得で変わります。
「平均」より「わが家の数字」
この記事の数字はすべて平均とモデル試算です。ご自身の場合を知る近道は、ねんきんネットで額面を見て、繰下げの計算機や高額療養費の計算機にご自身の数字を入れてみることです。入力した内容は保存されません。
出典
- 厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」(令和6年度・平均年金月額) (2026年8月25日確認)
- 総務省「家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果」(65歳以上単身無職世帯の消費支出) (2026年8月25日確認)
- 生命保険文化センター「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」(2024年度調査) (2026年8月25日確認)
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」(国民年金満額) (2026年8月25日確認)