10月の年金の振込額が8月と違う理由——住民税・介護保険料・健康保険料の天引きは、4・6・8月が「仮」の額、10・12・2月で1年分に合わせる
10月15日の年金の振込で、「8月と金額が違う」と気づく方がいます。多くの場合、原因は年金額そのものではなく、年金から天引きされる税金と保険料の額の変更です。
この記事は、なぜ10月に変わるのか(仮徴収と本徴収という仕組み)、どこで確かめるか、どこに問い合わせるかのまとめです。そもそも何が引かれているのかは年金15万円の手取りはいくらか——差し引かれる5つの正体に書きました。
先に結論——10月は「1年分に合わせる」月
- 介護保険料・国民健康保険料(75歳からは後期高齢者医療保険料)・住民税は、条件を満たすと年金から差し引かれます(特別徴収)。
- 4・6・8月の天引きは、前年度をもとにした仮の額です(仮徴収)。今年度の額がまだ決まっていないからです。
- 今年度の税額は6月、保険料は7月ごろに決まります。そこで10・12・2月に、今年度の年額から仮徴収で引いた分を差し引いた残りを3回に分けて引きます(本徴収)。
- だから、10月から天引き額が変わり、振込額も変わることがあります。10月の天引き額が8月より増えれば振込額は減り、減れば増えます。保険料の仮徴収は、原則として前年度の2月の額が基準です。このため、保険料の年額の増減だけでは、10月の振込額が増えるか減るかは決まりません。住民税の仮徴収は、前年度の年税額の6分の1ずつです。
年度ごとの年金額の改定は4月分からで、6月の振込で反映されています。10月の変化は、多くの場合、天引きの側の話です。ただし、働きながら年金を受け取っている人の支給停止額が変わったときや、退職したときなど、年度の途中で年金額そのものが変わることもあります。
年金から引かれるもの
日本年金機構によると、市区町村からの依頼にもとづいて年金から特別徴収されるのは、次の4つです。
| 引かれるもの | おもな条件 |
|---|---|
| 介護保険料 | 65歳以上で、老齢・退職・障害・遺族の年金を年18万円以上受け取っている |
| 国民健康保険料(税) | 世帯主が国民健康保険に入っていて、世帯の加入者全員が65歳以上75歳未満。世帯主の年金から介護保険料が天引きされていること。介護保険料との合計が、1回の支払額の2分の1を超えないこと(世帯の分を、世帯主の年金から引きます) |
| 後期高齢者医療保険料 | 75歳以上。介護保険料が天引きされていること。介護保険料との合計が、1回の支払額の2分の1を超えないこと |
| 住民税(森林環境税を含む) | 65歳以上で、老齢・退職の年金を年18万円以上受け取っている |
条件に当たらない分は、納付書や口座振替で納めます。国民健康保険の細かな扱いは、市区町村で違うこともあります。所得税はこれとは別で、日本年金機構が「源泉徴収」しています(後で触れます)。
仮徴収と本徴収——何月に、いくら引かれるか
年金は偶数月に2か月分ずつ振り込まれます。天引きも、その振込のたびに1回分ずつ差し引かれます。前の年度から続けて天引きされている人の場合、次のようになります。
なお、住民税で年金から引かれるのは、原則として公的年金等の所得にかかる住民税です。給与や事業、不動産などの所得にかかる分は、別の方法で納めます。この記事の住民税の「年税額」は、この年金の所得にかかる分を指します。
| 4・6・8月(仮徴収) | 10・12・2月(本徴収) | |
|---|---|---|
| 介護保険料 国民健康保険料 後期高齢者医療保険料 | 原則として前年度の2月と同じ額 | 今年度の年額 − 4・6・8月に引いた合計 を3回に分けた額 |
| 住民税(年金の所得にかかる分) | 前年度の年税額の2分の1を3回に分けた額(前年度の6分の1ずつ) | 今年度の年税額 − 4・6・8月に引いた合計 を3回に分けた額 |
「前年度の2月と同じ」は原則で、年度の前半で差が大きくなりすぎないよう、6月や8月の額を変える場合があると市区町村は説明しています(文京区・世田谷区など)。
例1——住民税(練馬区の説明にある例)
年金の所得にかかる住民税が、前年度は年6万円、今年度は年5万7千円に決まった人の場合です。
- 4・6・8月:前年度6万円の2分の1=3万円を3回に分けて、各1万円
- 10・12・2月:5万7千円−3万円=2万7千円を3回に分けて、各9千円
この人は、住民税の分だけで見ると、10月の振込が8月より1千円増えます。
例2——介護保険料(仕組みを示すための例)
前年度の2月に1万4千円引かれていて、今年度の介護保険料が年9万3千円に決まった人の場合です。
- 4・6・8月:前年度の2月と同じ各1万4千円(合計4万2千円)
- 10・12・2月:9万3千円−4万2千円=5万1千円を3回に分けて、各1万7千円
この人は、介護保険料の分だけで見ると、10月の振込が8月より3千円減ります。実際の振込額は、住民税・健康保険料・所得税の変化と合わさって決まります。
なぜ4月から今年度の額で引けないのか
住民税も保険料も、前年(1〜12月)の所得で決まります。その計算が終わるのが年度の途中だからです。
- 住民税は、通常6月に今年度の税額が決まります。天引きは4月から始まるので、4・6・8月は前年度の額をもとにします(練馬区)。
- 介護保険料は、住民税が6月に決まったあと、7月に今年度の所得段階が決まります。文京区は、6月以降に確定する前年の所得などから年間の保険料を出し、4・6・8月分を除いた金額を10・12・2月に振り分けると説明しています。決定通知は7月ごろ届きます(世田谷区は7月上旬、文京区の国民健康保険料は7月中旬)。
日本年金機構も、市区町村が決めたその年の介護保険料は10月の支払分からの天引き額に反映する仕組みだと説明しています。
令和8年度(2026年4月〜)は、医療保険料に子ども・子育て支援金が加わりました(令和8年4月分から)。保険料の年額が前年度と変わる理由は人それぞれですが、こうした制度の変更も、その一つになります。
通知はいつ届くか、どこに聞くか
- 年金振込通知書(日本年金機構):毎年6月に、6月から翌年4月までの振込額を知らせるものです。8月以降の欄は、6月の額を予定額として書いてあり、決定額は市区町村からの通知で確かめるよう書かれています。
- 10月から額が変わる人には、日本年金機構が改めて年金振込通知書を送ります(令和7年も「10月から介護保険料等の特別徴収額が変更となり、年金の振込額が変更となる方」に送付)。振込額が変わらなければ、その後の月には送られません。
- 介護保険料・国民健康保険料・後期高齢者医療保険料の決定通知、住民税の決定通知(市区町村):年額と、10・12・2月の天引き額が書いてあります。7月前後に届いた封筒を見直すのが近道です。
天引きの金額を決めているのは市区町村です。日本年金機構も、特別徴収の金額は市区町村が決めていると案内し、変更の中身は市区町村に問い合わせるよう書いています。「なぜこの額か」を聞くなら、年金事務所よりお住まいの市区町村の担当課(介護保険・国民健康保険・後期高齢者医療・住民税)です。
天引きが始まる年・75歳になる年は、形が違う
ここまでは「前の年度から続けて天引きされている人」の話です。次のような年は、形が変わります。
- 住民税の天引きが初めて始まる年:6月と8月は自分で納め(それぞれ年税額の4分の1)、10・12・2月に年金から引かれます。天引きが止まった翌年度も同じ形になります(練馬区)。
- 国民健康保険料の天引きが新しく始まる年:文京区の例では、年間保険料の半分を7・8・9月に納付書で納め、残りの半分を10・12・2月に年金から引きます。始まり方は市区町村で違います。
- 年度の途中で75歳になった年:後期高齢者医療保険料は、しばらく納付書や口座振替で納め、年金からの天引きは翌年の4月か10月から始まります(東京都の広域連合・港区・豊島区)。
このため、「10月から急に天引きが始まった」「今年は8月まで自分で払っていた」ということも起こります。どの形になるかは、市区町村の決定通知に書いてあります。
令和8年は、12月の振込も変わることがある(所得税)
所得税は市区町村ではなく、日本年金機構が年金から源泉徴収しています。令和8年度の税制改正で、65歳以上で源泉徴収の対象にならない年金額が、205万円未満から214万円未満に引き上げられました(65歳未満は155万円未満→164万円未満)。
日本年金機構は、令和8年11月の支払いまでは改正前の控除額で源泉徴収し、12月の支払いのときに1年分を計算し直して精算し、多く引いていた分は原則として還付するとしています。所得税が引かれている方は、10月だけでなく12月の振込額も変わることがあります。
来年(令和9年分)の所得税にかかわる「扶養親族等申告書」は、送られる人が増え、10月から順に届きます。詳しくは年金の「扶養親族等申告書」令和9年分に書きました。
10月の振込額が違ったときの確かめ方
- 年金額が変わったのか、天引きが変わったのかを分けます。年金振込通知書の「年金支払額」が同じなら、天引きの側です。
- 7月前後に市区町村から届いた介護保険料・健康保険料・住民税の決定通知で、10月の天引き額を確かめます。
- 10月から額が変わる人には、日本年金機構から改めて年金振込通知書が届いています。
- それでも分からなければ、市区町村の担当課に、決定通知を手元に置いて問い合わせます。
年間でいくら引かれるかの目安は、年金の手取り計算で確かめられます(ひとり暮らし・東京都文京区のモデル)。
年金の手取りを、順番に
何が引かれているのかは年金15万円の手取りはいくらか、年間の目安は年金の手取り計算、介護保険料の段階は介護保険料 目安計算、住民税がかかるかどうかは住民税非課税ライン 判定へ。年末の所得税にかかわる書類は扶養親族等申告書をどうぞ。
「うちは10月にこう変わった」という話は、質問・リクエスト箱から教えてください。
このテーマをまとめて読む:年金のまとめ
出典
- 日本年金機構「年金から介護保険料や住民税などが特別徴収されています」(介護保険料・国民健康保険料〈税〉・後期高齢者医療保険料・住民税〈森林環境税を含む〉を市区町村からの依頼に基づき特別徴収) (2026年10月1日確認)
- 日本年金機構 よくある質問「特別徴収の対象となるのはどのような人ですか」(年額18万円以上、国保・後期は介護保険料との合計が支払額の2分の1を超えないこと、介護保険料の特別徴収が前提) (2026年10月1日確認)
- 日本年金機構 よくある質問(市区町村が決定したその年の介護保険料額は10月の年金支払分からの特別徴収額に反映、10月以降の年金支払額等は改めて年金振込通知書を送付) (2026年10月1日確認)
- 日本年金機構 よくある質問(特別徴収額の金額は市区町村で決定) (2026年10月1日確認)
- 日本年金機構 よくある質問(振込額や振込口座に変更がなければ、その後の支払月には年金振込通知書は送付されない) (2026年10月1日確認)
- 日本年金機構「年金振込通知書」(毎年6月に6月から翌年4月までの支払額を通知、8月以降は予定額として6月の額を記載) (2026年10月1日確認)
- 日本年金機構「令和7年10月の年金支払いにかかる年金振込通知書を送付しています」(10月から介護保険料等の特別徴収額が変更となり振込額が変わる方へ送付、変更は市区町村へ問い合わせ) (2026年10月1日確認)
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額をお知らせする『年金額改定通知書』『年金振込通知書』の発送」 (2026年10月1日確認)
- 日本年金機構「令和8年度税制改正に伴う公的年金等の源泉徴収事務の変更」(源泉徴収の対象外が65歳以上205万円未満→214万円未満、11月支払いまでは改正前、12月支払い時に精算・還付。令和9年分扶養親族等申告書は10月から順次送付) (2026年10月1日確認)
- 文京区「介護保険料の納め方」(4・6・8月は原則前年度2月と同額、6月以降に確定する前年の所得などから年間保険料を算出し残りを10・12・2月に振り分け、7月に所得段階を決定)※自治体の例 (2026年10月1日確認)
- 文京区「国民健康保険料の年金からの天引き(特別徴収)」(加入者全員が65歳以上75歳未満・世帯主が国保に加入・世帯主の年金から介護保険料が天引きなどすべての要件、継続は4・6・8月に前年度2月と同額を仮徴収し10・12・2月で調整、新たに天引きになる世帯は年間の2分の1を7・8・9月に普通徴収、7月中旬に決定通知)※自治体の例 (2026年10月1日確認)
- 世田谷区「介護保険料の納め方」(仮徴収は原則前年度2月と同額・8月の金額は変更される場合あり、7月に決定した年間保険料から仮徴収分を引いた残額を3回に分けて本徴収、7月上旬に決定通知)※自治体の例 (2026年10月1日確認)
- 練馬区「公的年金からの住民税の特別徴収」(「公的年金等に係る所得」に住民税が課税される65歳以上の方が対象、4・6・8月は前年度の年税額の2分の1を3回に分けて仮徴収、10・12・2月に残りを本徴収、計算例:前年度6万円・今年度5万7千円→各1万円・各9千円、初年度は6・8月に4分の1ずつ普通徴収)※自治体の例 (2026年10月1日確認)
- 岡山市「公的年金からの特別徴収制度の一部改正(平成28年10月)」(仮徴収は前年度分の年税額の6分の1)※自治体の例 (2026年10月1日確認)
- 東京都後期高齢者医療広域連合「保険料の納め方」(年度の途中で対象となった場合、しばらくの間は特別徴収にならない) (2026年10月1日確認)
- 港区「後期高齢者医療保険料」(年度途中で75歳を迎えた方などは翌年の4月または10月から年金天引き)※自治体の例 (2026年10月1日確認)
- こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」(令和8年4月分から医療保険料とあわせて拠出、国保・後期は保険者により徴収開始時期が異なり6〜7月に通知) (2026年10月1日確認)