誠一の老後メモ

知らないと損をすることを、ひとつずつ。

点検商法とクーリング・オフ——「瓦がずれていますよ」「無料で点検します」から始まる契約。訪問販売なら書面を受け取って8日以内、はがきかメールで解約できます

「近所で工事をしている者です。お宅の瓦がずれているのが見えましたよ」「無料で点検してあげます」——。こうして始まり、気づけば高額な工事の契約をしていた、という相談が増えています。国民生活センターや消費者庁は、こうした手口を「点検商法」と呼んで注意を呼びかけています。

この記事は、点検商法の典型的な流れと、契約してしまったときのクーリング・オフ(無条件の解約)のやり方をまとめたものです。

数字で見る点検商法

  • 相談は2021年の2.7倍:消費者白書(令和8年版)によると、点検商法の相談は2025年に2万58件で、2021年(7,395件)の2.7倍に増えました。
  • 65歳以上では手口の6位:国民生活センターのまとめでは、2025年度に寄せられた、契約した人(契約当事者)が65歳以上の相談のうち、点検商法は14,167件で、販売方法・手口の6位でした。
  • 年齢が上がるほど「訪問販売」の相談が増える:65歳以上の相談に占める訪問販売の割合は11.2%ですが、85歳以上では21.5%で、通信販売を抜いて最も高くなります。国民生活センターは、年齢とともに家にいる時間が長くなり、訪問による勧誘を受けやすいことが一因と考えられる、としています。

点検の対象は、屋根から分電盤・給湯器・太陽光まで

点検の対象国民生活センターが紹介している特徴
屋根2022年度の相談は過去5年で最も多く、2018年度の約3倍。契約した人の8割超が60歳以上。平均の契約金額は約132万円
分電盤(ブレーカー)「電力会社のものですが分電盤の点検に伺います」などの電話から始まる。2025年度は6,545件で前年度の約5倍。契約した人は70歳以上が8割超
給湯器点検の電話や訪問のあと、高額な交換やメンテナンスの契約を勧められる。契約した人の7割以上が70歳以上
太陽光発電「点検が義務化された」などと言って訪問し、点検や契約を勧める

分電盤について、国民生活センターは「法定点検では、点検後に調査員が分電盤の交換工事の契約を持ち掛けることはありません」としています。「電力会社の者」「市役所から頼まれた」と言われても、その場で契約しないでください。

典型的な流れ(屋根の場合)

国民生活センターは、屋根工事の点検商法の典型的な勧誘トークとして、次のような言葉を紹介しています。知っておくと、突然来られても落ち着いて対応できます。

  1. 「近くで工事をしている者です」と、あいさつを装って訪ねてくる
  2. 「お宅の瓦がずれているのが見えましたよ」と、不安になることを言う
  3. 「無料で点検してあげます」と、屋根に上がる(傷んだ屋根の写真を見せられる例もあります)
  4. 「このままだと瓦が飛んで、近所に迷惑がかかる」と、急がせる
  5. 「この場で契約するなら特別に安くしますよ」「保険申請の手続きもしてあげます」と、その場での契約をせかす

実際の相談では、「近所でビルの工事をしている」と言った業者の話が、調べてみると事実ではなかった例もあります。

来られたときの3つの対応

  • 無料と言われても、点検させない:国民生活センターは、点検をさせると勧誘トークに乗せられ断れなくなるため、たとえ無料と言われても安易に点検を依頼しないよう呼びかけています。電話で断れずに来られたときは、インターホン越しに断る方法も紹介されています。
  • その場で契約しない:本当に修理が必要か不安なときは、家を建てた工務店などに相談し、複数の会社から見積もりを取って比べます。
  • 「保険で無料で直せる」に気をつける:保険金が実際に支払われるかは分かりません。保険金の請求は加入者自身で行うのが基本で、契約している保険会社か代理店に直接たずねます。経年劣化による傷みを、台風などの災害による損傷と偽って請求すると、保険金の返還を求められたり、詐欺罪に問われたりするおそれがあります。

契約してしまったら——クーリング・オフ

訪問販売や電話勧誘販売の契約は、法律で決められた書面(申込書面か契約書面のうち、早く受け取ったほう)を受け取った日から数えて8日以内なら、理由を問わず、クーリング・オフ(申し込みの撤回・契約の解除)ができます。

  • 工事が終わっていても、代金を払う必要はありません。すでに払った頭金なども返してもらえます
  • 家や塀などが工事で変わっていても、無償で元に戻してもらえます
  • 損害賠償や違約金を払う必要もありません

ただし、現金で払った総額が3,000円未満の場合は対象外です。また、健康食品や化粧品など政令で決められた消耗品は、「使うとクーリング・オフできない」旨が書面に書かれていて、自分で使ってしまった場合は対象外になります(業者に使わされた場合や、書面にその記載がない場合は除きます)。通信販売(テレビ・ネット・カタログ)には、クーリング・オフの制度がありません。返品の特約(店の決まり)があれば、その条件に従います。特約がなければ、商品を受け取った日を含めて8日以内なら、送料を自分で負担して返品できます。

クーリング・オフのやり方(はがきの場合)
  1. 書面を受け取った日を確かめるその日から数えて8日以内申込書面と契約書面のうち、早く受け取ったほうの日から数えます。
  2. はがきに書く契約した日、契約者の名前、商品名や工事の内容、契約金額、販売会社の名前、契約を解除すること、通知を出した日。
  3. はがきの両面をコピーする出したことの証拠になります。
  4. 記録が残る方法で出す特定記録郵便・簡易書留など販売会社の代表者あてに。8日以内に「出せば」効力があります。
  5. クレジット契約があれば、クレジット会社にも同時に出すコピーと送付の記録は、少なくとも5年間保管します。

国民生活センター「クーリング・オフ」、消費者庁「特定商取引法ガイド」をもとに作成。書き方の記載例は国民生活センターのページにあります。

2022年6月からは、メールなど(電磁的記録)でもクーリング・オフができるようになりました。契約書面に通知先や方法が書かれていれば、それに従います。送ったメールや、専用フォームの画面のスクリーンショットを保存しておきます。

8日を過ぎていても、解約できる場合

  • 書面を受け取っていない・書面に不備がある:決められた書面が渡されていなかったり、必要なことが書かれていなかったりした場合は、8日を過ぎていてもクーリング・オフできる場合があります。
  • 「クーリング・オフできない」と言われた・脅された:事業者がうそを言ったり、脅したりしてクーリング・オフをさせなかった場合は、期間を過ぎてもできます。
  • うそを言われて契約した:契約の大切な部分について事実と違うことを言われて、誤解して契約した場合は、誤解に気づいたときから1年以内、かつ契約から5年以内(どちらか早いほうの期限まで)なら、取り消しができます。
  • 量が多すぎる契約:ふだん必要な量を著しく超える契約は、契約から1年間は解除できます。

「自分で業者を呼んだから、クーリング・オフはできない」と思い込む必要もありません。消費者庁は、チラシを見て安い修理を頼んだのに、来た業者に高額な契約を勧められたような場合は、最初から契約する意思をはっきり示して呼んだとはいえず、対象外にならないと考えられる、としています。自分で判断せずに相談してください。

困ったら188へ

消費者ホットライン「188(いやや)」に電話すると、郵便番号などを入れることで、近くの市区町村や都道府県の消費生活センターなどの窓口につながります。クーリング・オフの通知は自分でできますが、対象になるか分からないとき、書き方が分からないときは、すぐに相談してください。本人だけでなく、家族やヘルパー、地域包括支援センターの職員などが気づいて相談することもできます。

ひとり暮らしの親がいる場合は、家に知らない業者が来ていないか、見慣れない工事の書類がないか、ときどき気にかけることも助けになります(ひとり暮らしの見守り)。

チェックリスト

  • 「無料で点検します」と言われても、点検させない(インターホン越しに断る)
  • 修理が必要か不安なときは、家を建てた工務店などに相談し、複数の見積もりを取る
  • 「保険で無料で直せる」と言われたら、自分の保険会社か代理店に直接たずねる
  • 契約してしまったら、書面を受け取った日から8日以内に、はがきかメールでクーリング・オフ
  • はがきは両面をコピーし、特定記録郵便か簡易書留で出す。記録は5年保管
  • 8日を過ぎていても、あきらめずに188へ相談する

家とお金を守る備えを、ほかにも

電話やATMをねらう詐欺は特殊詐欺への備え、空き巣や押し込み強盗は住まいの防犯、ひとり暮らしの親の見守りはひとり暮らしの見守りへ。本当に必要な手すりや段差の工事なら、介護保険の住宅改修(20万円まで)が使える場合があります。

「こんな業者が来た」という話は、質問・リクエスト箱から教えてください。

出典

この記事は、消費者庁・国民生活センターの公表資料にもとづく一般的な情報です(2026年10月5日時点)。クーリング・オフができるかどうかは、契約の形や書面の内容によって変わります。迷ったときは、消費者ホットライン188(お近くの消費生活センター等)にご相談ください。身の危険を感じたときや、脅されたときは、ためらわず警察(110番)に連絡してください。