電話とATMと「警察官」——2025年の特殊詐欺は被害1,423億円、被害額の約7割が「ニセ警察」。手口の型と、今日できる備え4つ
「自分はだまされない」と思っている方ほど、この記事を読んでほしいと思います。詐欺の手口は毎年変わりますが、変わらないのは「電話で不安にさせて、お金を動かさせる」という骨組みです。骨組みを知っていれば、名前を知らない新しい手口が来ても、途中で気づけます。
警察庁の確定値によると、2025年(令和7年)の特殊詐欺は認知件数2万7,832件、被害額約1,423億円で、件数は5年連続、被害額は4年連続の増加。被害額は前年のほぼ2倍で過去最悪でした。そのうち、警察官などを名乗って「あなたの口座が犯罪に使われている」と迫るニセ警察詐欺が1万1,014件・約1,005億円で、件数の39.6%、被害額の70.6%を占めています。2025年当時は別枠で集計されていたSNS型投資詐欺(9,523件・約1,288億円)とSNS型ロマンス詐欺(5,645件・約546億円)を足すと、1年で3,000億円を超えるお金が、電話とスマホの向こうに消えたことになります。なお、警察庁は2026年から分類を変更し、SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺も特殊詐欺の一手口として集計しています。
手口の型——名前は違っても2段は同じ
警察庁の分類にそって、いま多い手口を並べます。どれも①不安や期待をつくる→②お金・カード・ATM操作に誘導するの2段です。
| 手口 | ①どう不安にさせるか | ②何をさせるか |
|---|---|---|
| ニセ警察詐欺 | 警察官・検察官を名乗り「あなたの口座が犯罪に使われている」「逮捕状が出ている」。ビデオ通話で警察手帳や逮捕状のようなものを見せる | 「資金の調査のため」と言って指定口座へ送金させる、現金を預からせる、暗号資産を送らせる |
| オレオレ詐欺 | 子や孫、弁護士などを装い「事故を起こした」「会社のお金を使い込んだ」 | 示談金・弁済金の名目で現金を受け取りに来る、振り込ませる |
| 預貯金詐欺・キャッシュカード詐欺盗 | 警察官・銀行職員を名乗り「カードが不正に使われている」「交換手続きが必要」 | 自宅に来てカードや通帳を受け取る、封筒にカードを入れさせ、目を離したすきにすり替える |
| 還付金詐欺 | 自治体・税務署・年金事務所の職員を名乗り「医療費・保険料の還付がある」「期限は今日まで」 | 携帯電話を持ってATMへ向かわせ、指示どおり操作させる。実際は犯人の口座に振り込んでいる |
| 架空料金請求詐欺 | 「未払いの料金がある」「パソコンがウイルスに感染した」(サポート詐欺)と表示・連絡 | 電子マネーの番号を伝えさせる、振り込ませる |
| SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺 | SNSやマッチングアプリで知り合い、「必ず儲かる」「会いたいが費用が要る」 | 投資名目・渡航費名目で振り込ませる、暗号資産を送らせる |
ニセ警察詐欺は、いまの主役です。警察庁の注意喚起によれば、警察は、電話で「捜査対象になっている」と伝えたり、メッセージアプリで連絡したり、警察手帳や逮捕状の画像を送ったり、個人のスマートフォンに突然ビデオ通話をかけたりしません。メールや電話で金銭を要求することも一切ありません。画面越しに身分証や逮捕状のようなものを見せられても、本物である証拠になりません。電話だけでカードや現金の提出を求められた場合も、応じずにいったん切って、#9110へ相談してください。
還付金詐欺も、覚え方は一つです。ATMでお金が返ってくることは、絶対にありません。還付の手続きをATMで行わせることはありません。電話を切って、自治体や年金事務所の公式の番号に自分から確認してください。「期限は今日まで」と焦らせるのは、考える時間を奪うためです。
電話が入口——だから電話を変える
手口は違っても、多くは電話から始まります。警察庁によると、2025年(令和7年)に特殊詐欺に利用された電話番号のうち約75.5%が国際電話番号(「+1」「+44」など「+」と国番号で始まる番号)でした。認知件数ではなく、報告された電話番号の数に占める割合です。海外との通話が不要な方には、国際電話の発着信を休止することが有効な対策の一つです。
備え①:固定電話の国際電話を無料で止める
固定電話・ひかり電話は、「国際電話不取扱受付センター」に申し込むと、国際電話の発信・着信を無償で休止できます。申込みは電話(0120-210-364、オペレーター対応は平日9〜17時、自動音声は24時間)、ウェブ、郵送のほか、最寄りの警察署・交番でも相談できます。回線によって条件があるので、申込み時に確認してください。なお、休止しても国内の電話には影響しません。海外に家族がいる方は、その連絡手段を確保してから申し込んでください。
携帯電話は、知らない番号を着信拒否にする設定や、迷惑電話を警告するアプリ(警察庁が推奨するものがあります)で対応します。家族のスマホに入れてあげるのが、離れて暮らす子にできる具体的な手伝いです。
備え②:在宅でも留守番電話にする
いつも留守番電話にしておき、相手と用件を聞いてから折り返す。知らない番号・非通知には出ない。これだけで、犯人と直接話す機会が大きく減ります。「録音します」と自動で告げる防犯機能つき電話機や、後付けの自動通話録音機もあり、自治体によっては購入費の補助があります。
備え③:「お金」「カード」「ATM」の言葉が出たら切る
電話の相手が誰を名乗っていても、お金を動かす話、カードや通帳を渡す話、ATMに行く話が出た時点で切ると決めておきます。本物の警察・役所・銀行なら、電話を切られて困ることはありません。切ったあと、自分で調べた番号(警察署の代表番号、役所の代表番号、カード裏の番号)にかけ直して確かめます。相手が言った番号にはかけ直さない。ここが肝心です。
備え④:家族と「合言葉」と「話す相手」を決めておく
「電話でお金の話が出たら、必ず〇〇(子・きょうだい・友人)に相談してから決める」と、本人と家族で決めておきます。政府広報は、親子でこまめに連絡を取り、電話でお金の話は詐欺だと家族から伝えることを勧めています。合言葉(家族しか知らない質問)を決めておくと、声を似せた電話にも対応できます。詐欺グループは「誰にも言わないで」「家族に相談すると逮捕される」と孤立させようとします。「誰にも言うな」は、それ自体が詐欺のサインです。
ATMと銀行の窓口でできること
- ATMの1日の利用限度額を下げておく。だまされて操作しても、動かせる金額が小さくなります。変更方法は銀行によって異なります(警察庁も対策として挙げています)。
- ATMで携帯電話で話しながら操作している人がいたら、声をかける。還付金詐欺の典型的な場面です。自分がその立場になりそうなときは、電話を切って窓口へ。
- 銀行の窓口で高額の出金や振込を止められたら、怒らない。窓口の声かけは、被害を防ぐためのものです。「家族の入院費」「知人への貸付」など、犯人に教えられた理由を言わされていることが多いので、正直に事情を話してください。
迷ったら、この2つの番号
- #9110(警察相談専用電話):緊急ではないが警察に相談したいとき。かけた地域の警察本部などの相談窓口につながります(通常の通話料)。「詐欺かもしれない電話が来た」段階で使ってかまいません。
- 188(消費者ホットライン):業者との契約や請求、サポート詐欺など、消費生活のトラブル。最寄りの消費生活センターにつながります。
被害に気づいたら110番か最寄りの警察署へ。振り込んでしまった場合は、すぐに振込先の銀行にも連絡してください。犯人の口座が凍結されれば、残っていたお金の一部が戻る手続き(振り込め詐欺救済法)につながることがあります。
家族へ——「注意して」より「番号を一緒に変える」
「気をつけてね」と言うだけでは、手口が変わったときに効きません。効くのは、一緒に手を動かすことです。帰省したときに、固定電話の国際電話休止を申し込み、留守番電話の設定を確かめ、スマホに迷惑電話対策のアプリを入れ、冷蔵庫に「お金の電話は〇〇に相談」「#9110」「188」と書いた紙を貼る。1時間で終わります。それが、この記事でいちばん伝えたいことです。
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親の口座や判断力の備えは親が認知症になったら、口座はどうなるか、ひとり暮らしの見守りはひとり暮らしの見守り——自治体の緊急通報から民間サービスまでをどうぞ。窓口で金融商品を勧められたときの断り方は銀行の窓口で勧められたらに。
「こんな電話が来た」「これは詐欺?」という声は、質問・リクエスト箱から教えてください。手口の型として記事にしていきます。
出典
- 警察庁・SOS47「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(認知件数27,832件・被害額約1,423.1億円、ニセ警察詐欺11,014件・1,005.0億円〈39.6%/70.6%〉、SNS型投資詐欺9,523件・1,288.0億円、SNS型ロマンス詐欺5,645件・546.4億円) (2026年9月14日確認)
- 警察庁・SOS47「特殊詐欺の手口の分類を変更しました」(令和8年からニセ警察詐欺を独立した手口とし、SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺を特殊詐欺の一手口に位置付け) (2026年9月14日確認)
- 警察庁・SOS47「手口一覧と今日からできる対策」(各手口の定義、番号表示・非通知拒否、国際電話番号からの着信対策、サポート詐欺は無視、防犯機能付き電話) (2026年9月14日確認)
- 警察庁・SOS47「還付金詐欺」(ATMでお金が返ってくることは絶対にない、期限で焦らせる手口、ATMの利用限度額を低く、#9110・188) (2026年9月14日確認)
- 警察庁・SOS47「ビデオ通話を悪用した“偽警察官・検察官”の詐欺に注意!!」(警察官・検察官が突然スマホにビデオ通話をすることはない) (2026年9月14日確認)
- 警察庁・SOS47「国際電話番号を使った特殊詐欺」(令和7年中、特殊詐欺に利用された電話番号のうち約75.5%が国際電話番号。固定電話の利用休止と携帯電話の着信拒否設定) (2026年9月14日確認)
- 警察庁・SOS47「ニセ警察詐欺に注意!」(警察は電話で捜査対象と伝えない・メッセージアプリで連絡しない・手帳や逮捕状の画像を送らない・突然ビデオ電話をしない・金銭を要求しない) (2026年9月14日確認)
- 京都府警察「犯人からの電話を直接受けないための対策について」(国際電話不取扱受付センター 0120-210-364、無償で発信・着信を休止、電話・ウェブ・郵送・警察署で申込み、回線の条件) (2026年9月14日確認)
- 国際電話不取扱受付センター(公式サイト) (2026年9月14日確認)
- 政府広報オンライン「電話でお金の話は詐欺!親子のコミュニケーションで注意喚起を!」(2025年10月2日更新。留守番電話、家族とこまめに連絡、若い世代から家族へ手口を伝える) (2026年9月14日確認)
- 警視庁「警察相談ダイヤル#9110」(緊急でない相談の専用電話、かけた地域の警察本部等につながる) (2026年9月14日確認)
- 預金保険機構「振り込め詐欺にあったら」(振り込め詐欺救済法。振込先の金融機関へ連絡し、口座の残高に応じて被害回復分配金の支払を申請できる) (2026年9月14日確認)