身元保証人がいないとき——入院・施設入所で「保証人を」と言われたら。いないことだけを理由に断るのは不適切とする国の通知、頼れる先、民間の「終身サポート」を契約する前の確認点
入院の手続きで「身元保証人の欄にご記入を」と言われた。子どもがいない、きょうだいも高齢で頼めない——。ひとり暮らしの高齢者が増えるなかで、こうした場面に戸惑う人は少なくありません。
この記事は、身元保証人がいないときにどうすればいいかを、厚生労働省の通知と、国が2024年6月に出した「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」などにそってまとめたものです。
「保証人がいない」ことだけで、断られることはないはず
厚生労働省の研究事業の調査(2017年度)では、介護施設への入所(入院・入居)のときに本人以外の署名を求めている施設は95.9%でした。入所のときに家族などの署名を求めるのは、ごく一般的な運用です(署名を求めることと、お金の支払いの保証人になってもらうことは、同じではありません)。
それでも国は、保証人がいないことだけを理由に断るのは適切でない、という立場をとっています。
- 介護施設:厚生労働省は2018年8月の通知で、入院・入所を希望する人に「身元保証人等がいないことは、サービス提供を拒否する正当な理由には該当しない」とし、保証人がいないことだけを理由に入所を拒んだり退所を求めたりしないよう、都道府県などに適切な指導を求めました。2025年7月30日の通知でも、同じ内容を改めて周知しています。
- 病院:2018年4月の通知は、身元保証人等がいないことのみを理由に、医師が患者の入院を拒否することは、医師法第19条第1項(診療を求められたときの義務)に抵触する、としています。
消費者庁の資料も、「基本的に身元保証人がいなくても入院や介護施設等への入居は可能です」としています。保証人を求められて困ったら、まず病院や施設の相談員(医療ソーシャルワーカーなど)に「保証人を頼める人がいない」と伝えて、相談してください。
病院や施設が、保証人に期待していること
保証人を求める理由は、「何かあったときに困る」からです。厚生労働省の研究班がまとめた、身寄りのない人の入院についてのガイドライン(2019年)は、病院が身元保証人などに期待する役割を、次の6つに整理しています。
- 緊急の連絡先
- 入院計画書(の説明を受けること)
- 入院中に必要な物品の準備
- 入院費などの支払い
- 退院の支援
- (亡くなったときの)遺体・遺品の引き取りや葬儀など
逆に言えば、この一つひとつに、保証人以外の手当てがあれば、受け入れてもらいやすくなります。なお、手術などの医療行為への同意は、本人が決めるもので、同じガイドラインは、身元保証人などの第三者に同意の権限はないと考えられる、としています。
- 病院・施設の相談員に、保証人がいないことを伝える医療ソーシャルワーカー・生活相談員など何を心配しているのか(連絡先・支払い・退院後・亡くなったあと)を具体的に聞きます。
- 地域の窓口に相談する地域包括支援センター・社会福祉協議会お金の管理の手伝い(日常生活自立支援事業)や、自治体の終活支援を案内してもらえることがあります。
- 判断が難しくなってきたら、成年後見制度を考える本人に代わって契約やお金の管理をする人を、家庭裁判所が選びます。保証人や、医療行為への同意の代わりにはなりません。
- 民間のサービスを使うなら、契約の前に確かめる国のガイドラインのチェックリスト費用の内訳、預けるお金の管理方法、解約したときの返金を、書面で確認します。
厚生労働省の通知・ガイドライン、消費者庁の資料をもとに作成。地域によって使える制度は違います。
頼れる先
| 相談先・制度 | どんなことができるか |
|---|---|
| 地域包括支援センター | 高齢者の総合相談の窓口。消費者庁の資料も、まず地域包括支援センターなどに相談するよう勧めています |
| 日常生活自立支援事業(社会福祉協議会) | 判断能力が不十分でも、契約の内容は理解できる人が対象。福祉サービスの利用手続きや、日常的なお金の出し入れを手伝います。利用料は訪問1回あたり平均1,200円(実施主体が設定。相談は無料、生活保護の世帯は無料)。窓口は市区町村の社会福祉協議会です |
| 成年後見制度 | 判断能力が不十分になった人に代わって、契約やお金の管理をする人を家庭裁判所が選びます。元気なうちに任意後見の契約をしておく方法もあります。ただし、成年後見人などが本人の入院費などの保証人になることは一般的に適切でないとされ、手術などの医療行為に同意する権限もありません。2026年6月に、制度を見直す法律が成立しました(親が認知症になったら、口座はどうなるか) |
| 自治体や社会福祉協議会の終活支援 | 地域によっては、葬儀や納骨の生前契約を手伝う事業などがあります(下の例) |
地域の例:
- 神奈川県横須賀市「エンディングプラン・サポート事業」:原則として、ひとり暮らしで頼れる身寄りがなく、月収18万円以下・預貯金等が250万円以下程度などの人が対象。市が協力葬儀社との葬儀・納骨の生前契約を支援します。費用は原則として生活保護の基準に納骨費用を加えた額(参考:令和5年度26万円)を、本人が協力葬儀社に前払いします。市から給付を受けられる事業ではありません。
- 福岡市社会福祉協議会「ずーっとあんしん安らか事業」:70歳以上で、子どもや頼れる親族がいない人などが対象。入会金15,000円、年会費10,000円、預託金50万円〜で、見守りや亡くなったあとの葬儀・納骨などを支援します。
こうした事業があるかどうか、条件や費用は地域によって違います。お住まいの市区町村や社会福祉協議会に問い合わせてください。
民間の「高齢者等終身サポート事業」
家族に代わって支援する民間のサービスもあります。国のガイドラインは、主に次の3つに分けています。
- 身元保証等サービス:入院・入所のときの保証人の代わり、緊急時の対応など
- 死後事務サービス:亡くなったあとの葬儀・納骨・遺品の整理・各種の手続きなど
- 日常生活支援サービス:買い物や通院の付き添い、お金の管理の手伝いなど
国の調査で分かった課題
総務省行政評価局が2023年8月にまとめた調査(協力した204事業者が対象)では、次のような実態が分かりました。
- 契約の大事な点をまとめた重要事項説明書を作っていたのは2割程度
- 157事業者(77.0%)が、亡くなったあとの費用などを預託金として先に預かっていた。なかには、預託金を事務所の金庫に現金で置いていた例や、代表者個人の口座で管理していた例もあった
- 例として示された事業者では、契約時に入会金・身元保証料などで少なくとも100万円以上がかかっていた
国民生活センターにも、「約190万円で契約し、ほかにお金はいらないと言われたのに、サービスを使うたびに代金を請求された。解約したいと言うと、半分しか返せないと言われた」(80代)といった相談が寄せられています。
契約の前に確かめること(国のガイドラインから)
こうした状況を受けて、国は2024年6月に「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」をまとめ、利用者が確かめるためのチェックリストも公表しました。主な点です。
- 費用の内訳:入会金や預託金などを、まとめてではなく区分して示しているか。サービスごとの費用が分かるか
- 重要事項説明書:契約の大事な点を、書面で渡して説明しているか
- 預託金の管理:事業者の運営資金と明確に分けて管理しているか。ガイドラインは、信託銀行などとの信託契約による管理が望ましい、としています
- 寄附や遺贈を条件にしていないか:契約の条件として、亡くなったあとの財産の寄附(死因贈与)や遺贈を求めることは避けるべきだとされています。財産を寄附する内容を含む契約が、裁判で公序良俗に反して無効とされた例もあります
- 解約と返金:解約の方法と、返金のルールが契約書に書かれているか
- 事業をやめるとき:倒産や廃業のときに、サービスを誰が引き継ぐか、預けたお金をどう返すかが決まっているか。ガイドラインは、事業を清算することになった場合の対応方針をあらかじめ定めておくことが望ましい、としています
- 判断能力が下がったとき:成年後見制度などにどうつなぐか、決めてあるか
- 勧誘のしかた:「契約しないと生活できなくなる」などと不安をあおっていないか
国のガイドラインは、優良な事業者を認定する仕組みについても「検討する」としていますが、2026年10月時点で、国による認定の仕組みはまだありません。契約内容がよく分からないときは、その場で決めず、家族や地域包括支援センター、消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談してください。
これから——国も支援の仕組みづくりを進めています
2026年6月に成立した改正社会福祉法では、頼れる身寄りがいない高齢者などに、日常生活の支援・入院などの手続きの支援・亡くなったあとの事務の支援を、一定の割合以上の利用者に無料または低い料金で行う事業を、第二種社会福祉事業に位置付けることになりました。法律の概要では、施行は原則として2027年4月1日ですが、この項目を含む一部は「公布後2年以内に政令で定める日」とされています。いつから始まるかは、今後の政令などで確かめてください。国は、社会福祉協議会による試行的な事業も始めています。
チェックリスト
- 保証人を求められたら、病院・施設の相談員に「頼める人がいない」と伝えて相談する
- お住まいの地域包括支援センターと、社会福祉協議会の連絡先を調べた
- 緊急の連絡先・支払い・退院後・亡くなったあとのことを、誰に頼むか考えた
- 地域に終活支援の事業があるか、市区町村に問い合わせた
- 民間のサービスは、国のチェックリストで費用・預託金の管理・解約と返金を確かめてから契約する
- 寄附や遺贈を条件にする契約、不安をあおる勧誘には応じない。迷ったら188へ
ひとりの老後の備えを、順番に
お金の管理の備えは親が認知症になったら、口座はどうなるか、遺言は遺言書の書き方と保管、施設の見学は老人ホーム見学チェックリスト、見守りはひとり暮らしの見守りへ。
「こう相談したら、こうなった」という話は、質問・リクエスト箱から教えてください。
このテーマをまとめて読む:老人ホームのまとめ
出典
- 厚生労働省「市町村や地域包括支援センターにおける身元保証等高齢者サポート事業に関する相談への対応について」(平成30年8月30日 老高発0830第1号・老振発0830第2号。本人以外の署名を求める施設は95.9%〈平成29年度老人保健健康増進等事業〉、身元保証人等がいないことはサービス提供を拒否する正当な理由には該当しない、いないことのみを理由に入所を拒むことや退所を求めることがないよう適切に指導・監督) (2026年10月7日確認)
- 厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1409(令和7年7月30日 老高発0730第1号・老認発0730第1号。高齢者等終身サポート事業に関する相談及び「身寄りのない高齢者」を介護施設等で受け入れる際の対応について) (2026年10月7日確認)
- 厚生労働省「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて」(平成30年4月27日 医政医発0427第2号。医師法第19条第1項に抵触する) (2026年10月7日確認)
- 厚生労働省 研究班「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」(2019年。身元保証人等に期待される6つの役割、医療行為の同意について第三者に同意の権限はないと考えられる、成年後見人等が本人の債務の保証人等になることは一般的に適切でない、成年後見人等の役割に医療同意権までは含まれない) (2026年10月7日確認)
- 消費者庁「『身元保証』や『お亡くなりになられた後』を支援するサービスの契約をお考えのみなさまへ」(2018年。基本的に身元保証人がいなくても入院や介護施設等への入居は可能、まず地域包括支援センター等に相談) (2026年10月7日確認)
- 内閣府ほか「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(令和6年6月。身元保証等・死後事務・日常生活支援サービス、費用は区分して示す、死因贈与や寄附を契約の条件とすることは避ける〈名古屋高裁令和4年3月22日判決〉、預託金の分別管理・信託が望ましい、解約・返金、事業を清算することになった場合の対応方針をあらかじめ定めておくことが望ましい、判断能力低下時は成年後見制度、優良な事業者を認定する仕組みの創設等について検討) (2026年10月7日確認)
- 消費者庁「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」別紙チェックリスト(費用・死後事務・死因贈与や寄附を条件としていない・預託金の管理・不当な勧誘を行っていない等) (2026年10月7日確認)
- 総務省行政評価局「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査」結果報告書(令和5年8月。204事業者、重要事項説明書の作成を確認できたものは2割程度、預託金あり157事業者〈77.0%〉、金庫での現金保管・代表者個人口座の例、契約時に少なくとも100万円以上の例) (2026年10月7日確認)
- 国民生活センター 見守り新鮮情報 第511号(2025年5月29日。約190万円で契約、サービスの都度請求、解約時に半分しか返せないと言われた〈80歳代〉、国のガイドラインのチェックリストを参考に) (2026年10月7日確認)
- 厚生労働省「日常生活自立支援事業」(判断能力が不十分だが契約の内容について判断し得る能力を有する人、実施主体は都道府県・指定都市社会福祉協議会、窓口は市区町村社協、訪問1回あたり利用料 平均1,200円) (2026年10月7日確認)
- 法務省「民法等の一部を改正する法律(成年後見制度の見直し)」(令和8年6月成立) (2026年10月7日確認)
- 横須賀市「エンディングプラン・サポート事業」(月収18万円以下・預貯金等250万円以下程度・固定資産評価額500万円以下程度、生活保護基準に納骨費用を加えた額〈令和5年度26万円〉を協力葬儀社に前払い、市から給付を受けられる事業ではない)※自治体の例 (2026年10月7日確認)
- 福岡市社会福祉協議会「ずーっとあんしん安らか事業」(70歳以上、入会金15,000円・年会費10,000円・預託金500,000円〜)※社会福祉協議会の例 (2026年10月7日確認)
- 厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律案の概要」(頼れる身寄りがいない高齢者等への日常生活支援・入院等の手続支援・死後事務の支援を一定割合以上に無料又は低額で提供する事業を第二種社会福祉事業に、施行は令和9年4月1日〈ただし1.③及び⑤の一部は公布後2年以内に政令で定める日〉) (2026年10月7日確認)
- 衆議院「社会福祉法等の一部を改正する法律案」審議経過(令和8年6月成立) (2026年10月7日確認)