老人ホーム見学チェックリスト——見るより「聞く」が9割。お金8項目・体制4項目・医療と看取り5項目・契約4項目・暮らし6項目、あわせて27の質問を、行く前・見学中・帰ってからの順に並べました
老人ホームの見学に行くと、きれいなロビーと、感じのいい案内の方に迎えられます。それで安心して帰ってくると、あとで「聞いていない」ことが次々出てきます。夜に看護師がいるか、要介護度が上がったら月額はいくらになるか、途中で出るとき前払金はいくら戻るか。
見学は「見る」より「聞く」が9割です。この記事は、厚生労働省と国土交通省がまとめた消費者向けガイドブックの4つのチェックポイントを土台に、行く前・見学中・帰ってからの順で、聞くことを全部並べました。印刷して持っていける形にしています。
行く前に決めておく3つのこと
- 本人の要介護度と、世帯が住民税非課税かどうか——特養が候補に入るか、食費・居住費の軽減が使えるかが決まります(特養と有料老人ホームの違い)
- 払い続けられる月額——年金+無理なく取り崩せる貯蓄から逆算します。施設のお金 目安計算で「何年もつか」まで出しておくと、見学で数字を聞いたときに判断できます
- 譲れない順番——医療の対応・最期までいられること・家族が通いやすい場所・食事・費用。全部は揃わないので、上から3つに印をつけておきます
そして、見学の予約をするときに「重要事項説明書を事前に送ってください」と頼んでください。有料老人ホームには作成と交付が求められている書類で、費用・職員体制・退去の条件・協力医療機関など、ホームの運営の主な事項が書かれています。読んでから行くと、質問の半分は済んでいます(ただし、日中に実際にいる人数や医療処置ごとの受け入れ可否までは書かれていないことが多く、そこは見学で聞きます)。
見学中に聞く27の質問——保存用チェックリスト
A. お金(8項目)
| 質問 | 聞く理由・根拠 |
|---|---|
| 1. 家賃は月払いか前払金か。前払金なら「想定居住期間」は何年で、途中で退去したらいくら戻るか | 前払金は「想定居住期間の家賃」+「それを超えた期間に備えた家賃」で構成され、期間内の退去では一部が返還されます。計算方法は施設ごとに違います |
| 2. 管理費の中身は何か(人件費か、共益費か) | 「管理費」の名前で人件費や共益費をまとめている施設があります。何の対価かを確かめます |
| 3. 食費は1日いくら×日数か、月額固定か。食べなかった日・入院中はどうなるか | 入院が長引いたときの食費・家賃の扱いは、総額に効きます |
| 4. 介護保険の自己負担は月いくらか(本人の負担割合で) | 介護付き(特定施設)は要介護度ごとの定額、住宅型は使った分。老人ホームの費用の表と照らします |
| 5. 介護保険の「加算」と、保険外の「上乗せ介護費」「選択サービス費」を分けて教えてほしい | 加算は1〜3割負担、保険外は全額自己負担。混ぜて説明されると総額が読めません |
| 6. 水道光熱費は月額に含まれるか、実費か | 居室分を個別に払う方式の施設もあります |
| 7. おむつ代・理美容・医療費・薬代・レク費は別か | 「月額◯万円」の外側にある費用です |
| 8. 要介護度が2段階上がったら、月の合計はいくらになるか | いま要介護1なら「要介護3になったら」。上がり幅で施設の性格が分かります |
B. 職員と体制(4項目)
| 質問 | 聞く理由・根拠 |
|---|---|
| 9. 介護・看護職員は入居者何人に1人か。それは「総人数」か「日中に実際にいる人数」か | 一般型の介護付き有料老人ホームは、原則として要介護者3人に対し看護・介護職員1人以上を常勤換算で配置します(見守り機器の活用など一定の要件を満たす施設には「3人に0.9人以上」の特例があります)。この数字は、その時間帯に実際にいる人数ではありません。日中に実際に何人いるかを聞きます |
| 10. 看護師は何時から何時までいるか。夜間はいるか | 看護師の勤務時間で、夜の急変への対応が変わります |
| 11. 夜間の体制は「夜勤」か「宿直」か「呼び出し」か。夜勤は何人か | 夜勤=起きて勤務、宿直=泊まっているだけ、呼び出し=夜は無人で緊急時に駆けつける。3つはまったく違います |
| 12. 介護福祉士・理学療法士など資格を持つ職員は何人いるか。職員の平均勤続年数は | 資格の配置は必要なケアの内容次第。勤続年数は入れ替わりの激しさの目安です |
C. 医療と看取り(5項目)
| 質問 | 聞く理由・根拠 |
|---|---|
| 13. 協力医療機関はどこで、往診は月に何回か。夜間・休日は誰が対応するか | 「協力医療機関あり」の一言では中身が分かりません |
| 14. たんの吸引・経管栄養・インスリン・在宅酸素は受け入れられるか | 医療的なケアの可否は施設ごと。将来必要になりそうなものを具体名で聞きます |
| 15. 看取りをしているか。昨年、施設で最期を迎えた人は何人か | 「看取り対応可」と「実績あり」は別です。人数で聞くと実態が出ます |
| 16. 認知症が進んで夜に歩き回るようになっても、住み続けられるか | 行動の変化を理由に退去を求める施設があります |
| 17. 昨年退去した人の理由は何が多かったか | ガイドブックも「退去者の退去理由を聞くのもよい」としています。入院・死亡・他施設へ・費用……の内訳で、施設の限界が見えます |
D. 契約と退去(4項目)
| 質問 | 聞く理由・根拠 |
|---|---|
| 18. 施設側から契約を終了できる条件は何か(書面のどこに書いてあるか) | 「常時の医療行為が必要になったとき」「他の入居者に危害のおそれ」などが典型です。契約前に必ず確認する項目です |
| 19. 入居から3か月以内にやめた場合、前払金はどう戻るか | 入居から3か月以内に契約が終了した場合、入居期間中の居住費用を除いた全額が返還されることが法律で定められています。これを知らない説明があれば要注意です |
| 20. 前払金の保全措置はどうなっているか(銀行の保証か、保険か) | 施設が倒産しても一定額が戻る仕組みです |
| 21. 退去時の原状回復は、どこまで入居者負担か | 通常の経年劣化は事業者負担が一般的。入居時に立ち会いで室内を確認しておきます |
E. 暮らし(6項目)
| 質問 | 聞く理由・根拠 |
|---|---|
| 22. 食事は施設内調理か、外部搬入か。治療食(減塩・きざみ・とろみ)は対応できるか。試食できるか | 毎日3回のことです。可能なら昼食時に見学して試食します |
| 23. 入浴は週何回か。個浴か機械浴か | 介護付きホームでは、自力で入浴できない利用者に週2回以上の入浴または清拭を行う基準があります。実際の入浴回数と、追加の入浴に料金がかかるかを確かめます |
| 24. 外出・外泊・面会の決まりは。家族が泊まれるか | 自由度は施設で大きく違います |
| 25. 居室にトイレ・洗面・ナースコールはあるか。持ち込める家具は | 使い慣れた家具が持ち込めると、環境の変化がやわらぎます |
| 26. 1日の過ごし方(日課)と、レクリエーションの頻度 | 「何もない午後」が長い施設もあります |
| 27. 体験入居はできるか(何日・いくらか) | ガイドブックも見学や体験入居の活用を勧めています。1泊でも、夜の様子が分かります |
見学中は「五感」も使う
質問の合間に、次の5つを黙って観察してください。
- におい——玄関と廊下の奥で、排泄臭や消毒臭が強くないか
- 職員の様子——すれ違うときに挨拶があるか、入居者に話しかける口調はどうか
- 入居者の様子——共用スペースに人がいるか、表情はどうか、身なりは整っているか
- 掲示物——献立表・行事予定・職員の当番表が最新か(止まっている施設は運営も止まりがちです)
- 案内の答え方——数字を聞いたときに、その場で答えるか、「後で書面で」と言えるか。曖昧な答えが続く施設は、書面もあいまいです
帰ってからやること——2施設を1枚の表で比べる
見学は必ず2か所以上。1か所だけでは比べる物差しがありません。帰ったら、27の質問の答えを施設ごとに横に並べます。とくに次の4つは、印象ではなく数字で並べてください。
- 今の月額の合計(質問1〜7の合計)
- 要介護度が2段階上がったときの月額(質問8)
- 夜間の看護師の有無と、夜勤の人数(質問10・11)
- 施設側からの契約終了の条件(質問18)
1と2の数字を施設のお金 目安計算に入れると、年金でまかなえる割合と貯蓄が何年もつかが出ます。そのうえで、答えが口頭だけだった項目は「書面でください」と頼んでください。重要事項説明書と契約書に書いていないことは、あとで守られる保証がありません。
今日できること
- この記事を印刷するか、27の質問をメモに写す
- 候補の施設に電話して、重要事項説明書を送ってもらう(「見学の前に読みたい」で通ります)
- 見学の日は昼食の時間にかけて予約し、試食を頼む
見学で緊張するのは当たり前です。だからこそ、聞くことを紙にしておく。紙があれば、案内の上手さに流されずに済みます。
見学の前後に
種類で迷っているなら老人ホーム8種類の比較と施設選びタイプ診断、お金の中身は老人ホームの費用はいくらか、要介護度が上がったあとの住み替えは介護度が進んだら、住み替え?をどうぞ。夫婦で入るときの見学の聞き方は夫婦ふたりで施設に入るにあります。
「こう聞いたら、こう言われた」という体験は、質問・リクエスト箱から教えてください。次の見学者の役に立ちます。
出典
- 厚生労働省・国土交通省「高齢者向け住まいを選ぶ前に(消費者向けガイドブック)」(サービス提供体制の4つのチェックポイント:職員の配置状況〈介護付有料老人ホームは要介護者3人に1人以上の介護・看護職員〉・職員の資格・夜間の勤務体制〈夜勤・宿直・呼び出し〉・医療介護のニーズへの対応と退去理由の確認、管理費の中身、前払金の構成と想定居住期間、契約終了事由、原状回復、入居から3か月以内の契約終了は居住費用を除き全額返還) (2026年9月19日確認)
- 厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」(重要事項説明書の作成・交付、前払金の償却と返還・保全措置、契約解除の要件、体験入居) (2026年9月19日確認)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(特定施設入居者生活介護:介護職員(+看護職員)の配置基準は利用者3に対し1、見守り機器等の活用など安全対策の要件を満たす場合に3に対し0.9とする特例的な基準を新設) (2026年9月19日確認)
- 厚生労働省令「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(特定施設入居者生活介護:自ら入浴が困難な利用者について1週間に2回以上の入浴または清拭) (2026年9月19日確認)
- WAM NET(福祉医療機構)「有料老人ホーム」(介護付・住宅型・健康型、前払金の保全措置、90日以内の契約解除時の返還) (2026年9月19日確認)
- 介護サービス情報公表システム「特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホーム等)」(要介護度別の1日あたりの利用者負担) (2026年9月19日確認)
- 介護サービス情報公表システム「高齢者向け住まい(サ高住・有料老人ホーム)」(特定施設の指定の有無で介護の受け方と費用の決まり方が異なる) (2026年9月19日確認)