特養と有料老人ホームの違い——入居の条件・待機・お金・最期までいられるか。特養は要介護3以上で申込者20.6万人(2025年4月)、費用は所得で決まる。有料は民間で条件も費用も施設が決める。「特養に申し込みながら、別の場所で待つ」が現実的な組み合わせです
「特養と有料老人ホーム、何が違うんですか」。施設選びの相談で、いちばん最初に出る質問です。名前は似ていますが、特養は介護保険の施設、有料老人ホームは民間の住まいで、入れる条件も、お金の決まり方も、最期までいられるかも違います。
この記事では、まず1枚の表で9項目を比べ、それぞれの中身をほどき、最後に「どちらが向くか」ではなく「どう組み合わせるか」を書きます。費用の数字は老人ホームの費用はいくらかで出したものを使います。
まず1枚の表で
| 特別養護老人ホーム(特養) | 有料老人ホーム | |
|---|---|---|
| 何の制度か | 介護保険の施設(介護老人福祉施設)。運営は社会福祉法人や自治体 | 老人福祉法の届出制の住まい。運営は主に民間企業 |
| 入居の条件 | 原則、要介護3以上。要介護1・2は「やむを得ない事情」がある場合の特例入所 | 施設が決める。自立から要介護まで幅があり、「入居時自立」「要支援・要介護のみ」など施設ごと |
| 待機 | ある。要介護3以上の申込者は全国20.6万人(2025年4月1日時点。うち在宅8.6万人) | 空きがあれば入れる。人気の施設は待つこともある |
| 入居時の費用 | なし | 0円〜数千万円の前払金まで幅。月払い方式も選べる施設が多い |
| 月額の決まり方 | 国の基準。介護費(1〜3割)+居住費+食費+日常生活費。食費・居住費は所得の段階で軽減(負担限度額認定) | 介護費は国の基準(介護付きは要介護度別の定額)、家賃・管理費・食費は施設が決める。食費・居住費に特養のような負担限度額認定はない(介護費には所得区分別の上限「高額介護サービス費」が特養と同じく適用される) |
| 月額の目安 | 国のモデル試算(要介護5・1割・高額介護サービス費の適用前)で月4.5万〜14.7万円(所得段階と部屋の種類による。第4段階の食費・居住費は施設との契約額で、14.7万円は基準費用額を置いた試算) | 厚労省2024年調査の平均(介護・医療の自己負担を除く):特定施設261,510円・住宅型118,020円。分布は10万円未満〜30万円以上 |
| 介護の受け方 | 施設の職員が24時間 | 介護付き(特定施設)は施設の職員。住宅型は外部の訪問・通所を個別に契約 |
| 医療と看取り | 配置医(多くは非常勤)と看護職員。看取りに対応する施設が多いが、夜間の看護体制は施設による | 施設による差が大きい。医療機関との連携内容・夜間の看護師の有無・看取りの実績を重要事項説明書で確かめる |
| 退去 | 要介護度が上がっても原則そのまま。長期入院などで退去になることはある | 施設が定める条件(医療行為が必要になった、他の入居者への危険など)で退去を求められることがある |
| 申し込み先 | 施設に直接。複数の施設に同時に申し込める | 施設に直接。紹介会社を通す場合もある |
特養——要介護3以上、入居時の費用なし、月額は所得で決まる
特養は介護保険法上の「介護老人福祉施設」で、原則として要介護3〜5の人が対象です。要介護1・2の人は、認知症で日常生活に支障が出ている、知的障害や精神障害がある、家族による虐待が疑われる、ひとり暮らしで家族の支援が期待できず地域のサービスも足りない、といった「やむを得ない事情」がある場合に特例入所として申し込めます。
入居時の費用はありません。月額は、介護サービス費の自己負担(1〜3割。要介護3で多床室1日732円・ユニット型個室815円)に、居住費・食費・日常生活費を足したものです。居住費と食費には国の基準費用額があり、世帯全員(別世帯の配偶者を含む)が住民税非課税で預貯金等が基準以下なら、申請すると「負担限度額」まで下がります。国の計算例(要介護5・1割・30日)にあてはめると、所得の段階と部屋の種類で月約4.5万円〜約14.7万円です(高額介護サービス費を当てる前の額。第4段階の食費・居住費は施設との契約額なので、14.7万円は基準費用額を置いた場合の試算です)。段階ごとの額は老人ホームの費用はいくらかの表をどうぞ。
いちばんの難点は待機です。厚生労働省の集計では、2025年4月1日時点で要介護3以上の申込者が全国で20.6万人(うち在宅の方8.6万人)。前回の2022年(25.3万人)より4.7万人減りましたが、なくなってはいません。申込者には「すぐ入所するつもりはないが名簿に載せている」人も含まれるので、地域と施設によって実際の待ち時間はまったく違います。申し込みは施設ごと・同時に複数できるので、候補を絞らずに複数申し込んでおくのがふつうです。
有料老人ホーム——3つの類型、条件も費用も施設が決める
有料老人ホームは、老人福祉法にもとづいて都道府県などに届け出た民間の住まいで、大きく3つの類型があります。
- 介護付き——介護保険の「特定施設」の指定を受け、施設の職員から介護を受ける。介護費は要介護度ごとの定額で、1割負担なら要介護3で月約20,400円・要介護5で約24,400円
- 住宅型——住まいと食事は施設、介護は外部の訪問介護・通所介護を個別に契約して「使った分」を払う。要介護度が上がると使う量が増え、区分支給限度額を超えた分は全額自己負担
- 健康型——介護が必要ない人向け。数は少なく、要介護になると退去が前提
介護費以外の家賃・管理費・食費・上乗せ介護費・水道光熱費は施設が決めます。全国一律の価格はなく、食費・居住費には特養のような所得段階別の軽減(負担限度額認定)もありません(介護サービス費の自己負担には、特養と同じく所得区分別の月の上限「高額介護サービス費」が適用されます)。厚生労働省の2024年調査では、介護・医療の自己負担を除く月額の平均が、特定施設(介護付きのほか、指定を受けたサ高住などを含む)で261,510円、住宅型で118,020円。ただし分布は10万円未満から30万円以上まで広がっていて、地域・部屋の広さ・前払金の有無で大きく変わります。
前払金(入居一時金)がある施設では、前払金の保全措置(施設が倒産しても一定額が戻る仕組み)と、入居から90日以内に契約を解除したときの返還が法律で定められています。前払金の額・償却期間・途中退去時の返還額は、契約前に必ず重要事項説明書で確かめてください。
違いが出る5つの場面
① 入れるまでの時間
特養は待つ。有料は空きがあればすぐ。この差は、在宅介護が限界に近いときほど重くなります。
② 月々の支払いと、所得による軽減
年金が国民年金中心で世帯非課税の方は、特養なら負担限度額認定で食費・居住費が下がり、月額が大きく下がります(第2段階なら多床室で月約6万円。高額介護サービス費を当てる前の額で、条件により介護費の分がさらに下がります)。有料老人ホームの家賃・食費にはこの軽減がありません(介護費の月の上限=高額介護サービス費はどちらにも効きます)。逆に、課税世帯で特養の第4段階(多床室で月約11万円・ユニット型個室で約14.7万円)になる方は、住宅型有料の平均(11.8万円+使った分の介護費)と桁が近づきます。
③ 要介護度が上がったとき
特養は要介護度が上がっても原則そのまま住めます。有料老人ホームは、介護付きなら介護費が定額で上がるだけですが、住宅型は使う介護が増えるほど月額が上がります。また、施設が定めた退去の条件(常時の医療行為が必要になった、など)に当たると、住み替えを求められることがあります。この「出なくてはいけない」を避ける見学の聞き方は介護度が進んだら、住み替え?にまとめました。
④ 医療と看取り
特養には配置医(多くは非常勤)と看護職員がいますが、夜間に看護師がいるかは施設によります。たんの吸引や経管栄養など医療的なケアが続く方は、受け入れの可否を最初に聞いてください。有料老人ホームは施設ごとの差がさらに大きく、「協力医療機関」の名前だけでなく、夜間の看護師の有無・往診の頻度・看取りの実績(人数)を重要事項説明書と面談で確かめます。最期の迎え方の考え方は終の住処と看取りをどうぞ。
⑤ 部屋と暮らし方
特養は多床室(相部屋)かユニット型個室で、生活は施設の日課に沿います。有料老人ホームは個室が基本で、食事や外出の自由度は施設によって広い。「安さと確実さ」と「暮らしの自由度」のどちらを優先するかで、答えが変わります。
どちらか、ではなく「組み合わせ」
実際によくあるのは、特養に申し込んでおきながら、順番が来るまで別の場所で過ごすという形です。待つ場所は、在宅(訪問介護・デイサービス・ショートステイの組み合わせ)、老健(在宅復帰が目的なので長期の住まいではない)、住宅型有料やサ高住などです。特養の順番が来たときに移るかどうかは、そのときの本人の状態と家計で決めればよく、申し込みを取り下げるのも自由です。
次の3つが分かれ目になります。
- 要介護3以上で、年金が国民年金中心——特養を複数申し込み、待つ間の場所を地域包括支援センターかケアマネジャーと決める
- 要介護1・2、または費用を払い続けられる——有料老人ホーム・サ高住が候補。要介護度が上がったときの月額と退去条件を、契約前に書面で確かめる
- 医療的なケアが続く——特養・有料のどちらでも受け入れは施設ごと。介護医療院や医療対応をうたう施設を含めて、受け入れの可否から絞る
8種類の施設を1枚の表で見比べたいときは老人ホーム8種類の比較、月額から貯蓄の減り方を出すには施設のお金 目安計算、向いている型を知るには施設選びタイプ診断をどうぞ。
今日できること
- 本人の要介護度と、世帯が住民税非課税かどうかを確かめる(住民税非課税ライン判定)。この2つで、特養が候補に入るか、軽減が使えるかが決まります
- 要介護3以上なら、地域包括支援センターかケアマネジャーに「近くの特養の申し込み状況」を聞き、複数に申し込む
- 有料老人ホームを見るなら、重要事項説明書をもらって、前払金の返還条件・要介護度が上がったときの月額・退去条件・夜間の看護体制の4つに印をつける
特養と有料は、優劣ではなく役割の違いです。「入れるか」「払い続けられるか」「最期までいられるか」——この3つの問いに、それぞれの施設がどう答えるかを書面で確かめれば、迷いはかなり減ります。
自分の条件で絞る
月額の中身は老人ホームの費用はいくらか、8種類の全体像は老人ホームが選べない——8種類を1枚の表で、要介護度が上がったあとの住み替えは介護度が進んだら、住み替え?をどうぞ。数字は施設のお金 目安計算で。
「うちの親の場合はどっち?」という声は、質問・リクエスト箱から教えてください。
出典
- 厚生労働省 報道発表「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和7年度)」(2025年4月1日時点:要介護3以上20.6万人〈うち在宅8.6万人〉、前回2022年25.3万人。要介護1・2の特例入所対象1.8万人。申込者には長期間名簿に載っている人も含まれる旨の注記) (2026年9月18日確認)
- 介護サービス情報公表システム「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」(利用できる人は要介護3〜5、新たに入所する要介護1・2はやむを得ない理由がある場合のみ。1日あたりの利用者負担〈1割〉:要介護3 多床室732円・ユニット型個室815円など) (2026年9月18日確認)
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(特養の1か月の自己負担の計算例:要介護5・1割・30日、基準費用額と負担限度額、高額介護サービス費) (2026年9月18日確認)
- 厚生労働省「介護保険施設等の食費・居住費の負担限度額」(負担限度額認定の対象は介護保険施設〈特養・老健・介護医療院〉とショートステイ。世帯全員が非課税・別世帯の配偶者も非課税・預貯金等の基準) (2026年9月18日確認)
- 厚生労働省「有料老人ホームの現状と課題・論点について」(有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会 第1回資料。2024年調査:介護・医療の自己負担を除く月額費用の平均 特定施設261,510円・住宅型118,020円、分布は10万円未満〜30万円以上) (2026年9月18日確認)
- 介護サービス情報公表システム「特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホーム等)」(1日あたりの利用者負担:要介護3 679円・要介護5 813円など) (2026年9月18日確認)
- WAM NET(福祉医療機構)「有料老人ホーム」(介護付・住宅型・健康型の3類型、都道府県への届出制、前払金の保全措置と90日以内の契約解除時の返還) (2026年9月18日確認)
- 厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」(重要事項説明書、前払金の償却と返還、契約解除の要件) (2026年9月18日確認)
- 介護サービス情報公表システム「高齢者向け住まい(サ高住・有料老人ホーム)」(特定施設の指定の有無で介護の受け方と費用の決まり方が異なる) (2026年9月18日確認)
- 厚生労働省「高額介護サービス費の負担限度額」(介護サービス費の自己負担の月の上限は所得区分別。施設の種類を問わず適用。食費・居住費・日常生活費は対象外) (2026年9月18日確認)