施設の「月額◯万円」の中身——何が含まれ、何が別か。国が示す特養の例と、見学でもらう「1枚の表」
施設のパンフレットには「月額15万円〜」のように書いてあります。ところが、実際に毎月払う額は、その数字と同じとは限りません。「月額」という箱に、何が入っていて、何が入っていないかが施設ごとに違うからです。
この記事は、その箱の中身を分解します。相場の金額は書きません(出典つきで示せる全国の相場がないためです)。そのかわり、国が公表している特養の計算例と、民間の施設で月額に入りがちなもの・別になりがちなものを整理し、最後に見学でもらいたい「1枚の表」を用意しました。施設の種類そのものがあいまいな方は、先に8種類の見取り図をどうぞ。
月額の箱に入りうる8つの項目
| 項目 | 何のお金か | よくある扱い |
|---|---|---|
| ① 居住費(家賃・室料) | 部屋代。国の指針では、有料老人ホームの家賃は建物の整備費・修繕費・管理事務費・地代などを基礎に算定し、近くの同じような住宅の家賃を大幅に上回らないこととされています | 月額に含まれることが多い。特養など介護保険施設では国が「基準費用額」を示している |
| ② 管理費・共益費 | 共用部分の光熱費、事務費、生活相談など | 月額に含まれることが多いが、何が入っているかは施設ごと |
| ③ 食費 | 食材料費+調理費。国が示す基準費用額は、令和8年8月から1日1,545円(月約46,350円) | 月額に含まれる施設と、食べた分だけ別に請求する施設がある |
| ④ 介護保険サービスの自己負担(1〜3割) | 介護付き(特定施設・一般型)は要介護度ごとの定額(1割なら基本部分で1日542円〜813円の目安)。住宅型有料老人ホームと、特定施設の指定を受けていない一般的なサ高住では、外部の介護サービスを使った分だけ(特定施設の指定を受けたサ高住は、住宅側から定額の介護を受けます) | パンフレットの月額に入っていないことが多い。要介護度が上がると増える |
| ⑤ 上乗せの介護費・サービス費 | 手厚い職員配置や、個別のサービスに対する介護保険外の費用。サ高住の安否確認・生活相談の「サービス費」もここ | 施設により大きく違う。月額に入っている場合と別の場合がある |
| ⑥ 医療費・薬代 | 受診・訪問診療・薬。介護保険ではなく医療保険 | ほぼ必ず別。保険診療の自己負担分は高額療養費の対象。入院中の食事代・差額ベッド代・保険外診療などは原則として対象外 |
| ⑦ 日常生活費 | 理美容、日用品、レクリエーションの材料費など。国の特養の計算例では「約10,000円(施設により設定)」。おむつ代は、有料老人ホーム・グループホーム・在宅などでは別途必要になる場合がありますが、特養・老健・介護医療院などでは施設サービス費に含まれ、原則として別途請求されません | 別のことが多い。実費か定額かを確認 |
| ⑧ 入居金(前払金)の月割り | 入居時にまとめて払う家賃などの前払い。月額の代わりに払っている部分 | 月額には出てこないが、実質の月の負担。途中退去・死亡時にいくら戻るか(償却)を確認 |
ポイントは、「月額」に入っているのは①〜③(と⑤の一部)までで、④⑥⑦は別、ということが多い点です。要介護度が進むと④が増え、⑥⑦も増えやすい。つまり「入ったときの月額」は、いちばん軽いときの数字であることが多いのです。
国が示している「特養の1か月の自己負担の目安」
介護保険施設については、国(介護サービス情報公表システム)が計算例を公表しています。要介護5の方が、自己負担1割で特別養護老人ホームを利用した場合です。国の計算例は改定前の食費(1日1,445円)で掲載されているため、下の表では令和8年8月からの基準費用額(1日1,545円)に置き換えて計算しています。
| 項目 | 多床室 | ユニット型個室 |
|---|---|---|
| 施設サービス費の1割 | 約26,130円 | 約28,650円 |
| 居住費 | 約27,450円(915円/日) | 約61,980円(2,066円/日) |
| 食費 | 約46,350円(1,545円/日) | 約46,350円(1,545円/日) |
| 日常生活費 | 約10,000円(施設により設定) | 約10,000円(施設により設定) |
| 合計 | 約109,930円 | 約146,980円 |
掲載額は1単位10円で計算した基本報酬の目安です。実際には地域区分による単価の差や、施設が算定する各種の加算が加わるため、自己負担は高くなることがあります。また、食費1,545円・居住費915円/2,066円は国が示す標準的な費用額(基準費用額)で、負担限度額認定を受けない課税世帯の実際の食費・居住費は施設との契約で決まります。
この例で分かることが3つあります。
- 介護サービスの自己負担は、合計の4分の1程度。残りは居住費・食費・日常生活費です。「介護保険が9割払ってくれる」のは①②③には効きません
- 部屋の種類で月3万円以上違う。多床室とユニット型個室の差は、ほぼ居住費の差です
- この合計に、医療費と薬代は入っていません
居住費・食費には、非課税世帯向けの軽減がある
特養・老健・介護医療院(とショートステイ)では、負担限度額認定(補足給付)を受けると、居住費と食費が国の基準費用額より低い額に下がります。条件は「世帯全員(世帯を分けた配偶者を含む)が住民税非課税」に加えて、本人と配偶者の預貯金などの資産要件と、年金収入などによる段階の判定です。認定を受けた場合の1日あたりの額は、たとえば次のとおりです(令和8年8月からの額。施設に入所する場合で、ショートステイの食費は第2段階600円・第3段階①1,030円・第3段階②1,360円と異なります)。
| 基準費用額(国が示す標準的な費用額) | 第2段階 | 第3段階① | 第3段階② | |
|---|---|---|---|---|
| 食費 | 1,545円 | 390円 | 680円 | 1,420円 |
| 居住費(多床室・特養) | 915円 | 430円 | 430円 | 530円 |
| 居住費(ユニット型個室) | 2,066円 | 880円 | 1,370円 | 1,470円 |
段階は年金収入などで分かれ、第1段階(生活保護を受けている方など)もあります。非課税かどうかだけでは使えるかどうか判断できませんが、最初の分かれ目が住民税非課税かどうかであることは変わりません。目安は住民税非課税ライン 判定で確かめられます。なお、介護サービスの自己負担(上の表の「施設サービス費の1割」の部分)には別に月ごとの上限(高額介護サービス費)があります。仕組みは介護にいくらかかるかにまとめました。
民間の施設(有料老人ホーム・サ高住)で確かめること
民間の施設には、特養のような国の計算例はありません。そのぶん、書面で確かめる項目が増えます。
- 介護費の決まり方——介護付き(特定施設)の一般型は要介護度ごとの定額で、1割なら基本部分で1日542円(要介護1)〜813円(要介護5)の目安(地域区分と加算で変わります)。一部の外部サービス利用型では、外部のサービスの利用量に応じて費用が決まります。住宅型有料老人ホームと、特定施設の指定を受けていない一般的なサ高住では、訪問介護やデイサービスなど外部の介護サービスを使った分だけ自己負担がかかり、要介護度が上がるほど増えます(特定施設の指定を受けたサ高住では、住宅側から特定施設入居者生活介護を受けます)。どちらの型かで、月額の「伸び方」が変わります
- 上乗せ費用の有無——介護付きで手厚い職員体制や個別サービスの費用を介護保険外に受け取る場合は、国の通知に沿って説明することになっています。何に対していくらか、書面で確認します
- 入居金(前払金)——国の指針では、前払金の償却年数は入居者が終身にわたって住む平均的な期間などを基礎に設定し、保全措置と返還のルールを守ることとされています。「途中で退去したら」「亡くなったら」いくら戻るかを、契約前に数字で確認します。敷金を取る場合は6か月分を超えず、退去時に原状回復費用を除いて全額返還が原則です
- サ高住の「サービス費」——家賃・共益費のほかに、安否確認と生活相談のサービス費がかかります。それ以外の食事や介護は別契約になることが多く、月額の見え方が施設ごとに大きく違います
これらは重要事項説明書・入居契約書・管理規程(サ高住は「登録事項等についての説明」)に書かれています。口頭の説明と書面が食い違っていないかを見るのが、いちばん確かな確認です。
見学でもらう「1枚の表」
見学のとき、次の形で「わが家の月額」を書面にしてもらってください。パンフレットの数字を、そのまま比べてはいけません。
| 項目 | 月額 | 月額に含む/別 | 増える条件 |
|---|---|---|---|
| ① 居住費(家賃・室料) | 部屋の種類 | ||
| ② 管理費・共益費 | |||
| ③ 食費 | 3食か、食べた分か | ||
| ④ 介護保険の自己負担 | 要介護度・負担割合(1〜3割) | ||
| ⑤ 上乗せ介護費・サービス費 | 利用したサービス | ||
| ⑥ 医療費・薬代(目安) | 受診回数・訪問診療 | ||
| ⑦ 日常生活費(理美容・日用品など。おむつ代は施設の種類による) | 実費か定額か | ||
| ⑧ 入居金の月割り(返還ルール) | 在所年数 | ||
| 合計(いまの状態)/(要介護度が2段階上がったら) |
最後の行が、この表の要です。「いまの状態」と「要介護度が上がったあと」の2つの合計を出してもらってください。ふたつの数字の差が、その施設の「月額の伸び方」です。
払える月額から逆算する
施設選びは「入居金がいくらか」より、「毎月の年金+無理なく取り崩せる貯蓄」で払い続けられる月額はいくらかから逆算するほうが確かです。上の表の合計(要介護度が上がったあとの数字)が、その月額の中に収まるか——収まらないなら、部屋の種類を変える、負担限度額認定が使える施設(特養など)を軸にする、という順番で候補が絞れます。年金がひとり分になったあとまで考えるなら、夫婦ふたりで施設に入るもあわせてどうぞ。
迷ったら、地域包括支援センター(無料)や担当のケアマネジャーに、この表を見せて相談してください。「うちの場合、④はいくらくらいになりますか」と聞けるだけで、話がずいぶん具体的になります。
あわせて読む・確かめる
施設の種類を整理するなら8種類の見取り図、介護保険の自己負担の上限は介護にいくらかかるかへ。費用の分かれ目になる住民税非課税ライン 判定もあります。
「うちの場合はどうなる?」という疑問があれば、質問・リクエスト箱から教えてください。記事の形でお答えしていきます。
出典
- 介護サービス情報公表システム(厚生労働省)「サービスにかかる利用料」(特養の1か月の自己負担の目安・基準費用額と負担限度額・高額介護サービス費) (2026年9月8日確認)
- 同「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」(施設サービス費・居住費・食費・日常生活費の構成) (2026年9月8日確認)
- 同「特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホーム等)」(要介護度ごとの1日あたりの利用者負担) (2026年9月8日確認)
- 厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」(家賃・敷金・サービス費用・前払金の償却と返還・重要事項説明書) (2026年9月8日確認)
- 厚生労働省「介護保険施設等の食費・居住費の負担限度額」(負担限度額認定の条件) (2026年9月8日確認)
- 厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1506(令和8年5月29日)「令和8年8月からの特定入所者介護(予防)サービス費の見直し等」(食費の基準費用額1,545円・第3段階の食費・居住費の新しい負担限度額) (2026年9月8日確認)
- 介護サービス情報公表システム「高齢者向け住まい(サ高住・有料老人ホーム)」(特定施設の指定の有無で介護の受け方が異なる) (2026年9月8日確認)
- 厚生労働省通知「通所介護等における日常生活に要する費用の取扱いについて」(施設サービスではおむつ代は保険給付に含まれ別途徴収できない) (2026年9月8日確認)
- 国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅」(登録基準・前払家賃の返還ルールと保全措置) (2026年9月8日確認)
- 厚生労働省「高齢期の住まい」(住まい・施設の種類の全体像) (2026年9月8日確認)